遠い陽光の中に消し忘れられた落書

無題

光を失った太陽が真白な空を渡り
月だけが煌々と輝き、夜を待つ

君が渡った橋は朽ち
足跡は絶えたままで
私達を繋ぐものを何処に求めよう

ざわめきを覚えた森の奥深く
道筋すら知らぬままに立ち入り
微かな君の温もりだけが手に残る

踏む毎に涸れる小川は泉へと誘うが
君の面影をも失うだけで
私の足は踏み留まってしまう

やがて木々の間から覗いた月は
ただ独りで空を駆け
青い光跡を一筋、残していった
  1. 2012/05/19(土) 10:19:12|
  2. ナニも知らない
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絶対不変領域の日常は過ぎ

凍結した朝を降る雨が
行く先を失って中空に漂い
立ち止まったままの太陽は沈黙し
どこにも行けない陽光が頬を打つ

記憶を持たない風景は車窓を流れ
誰も聞かない汽笛が鳴り続けたが
雲影に覆われた線路の鈍い光だけが
地と雲との間に響くだけだった

優しさの通り過ぎた跡には
哀しみの雫が淡く光り続け
路踏む人達は俯いたままに歩き
あらがえない定めに遇った

座ったままに夕雲を見つめる犬が
たった一匹の遠吠えを少し試みたが
誰も答えることはなく
更ける事のない夜は忘れ去られた
  1. 2012/05/19(土) 00:00:00|
  2. 想葉
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ただ降る雪の一雪景

留め得ぬ希望の哀しみに
どこまでも降る雪は白く儚く
仄かな温もりに融け続け
やがて海の一滴へと変わる

無限に裏切られる真実達は
夜を忘れた渇きに晒され
カラカラカラと干乾びて
嘲笑の中に偽りと化す

あちらこちらで流れる涙は
夜風吹かれて凍り付き
冷たい星の光を拾い
更に融けない闇へと変わる

だからきっと泣くでしょう
笑うかのように泣くでしょう
虚しさだけが真実だから
だからきっと泣くでしょう

怯えて開けた宝箱
「何も無い」という宝物
忘れ去られた優しさだけが
箱の中を見るのでしょう
  1. 2012/05/18(金) 00:00:00|
  2. 想葉
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遠くでヒビの入った空の下

窓を青く切り裂いた月光が
水面に散り、星を生む夜
恋人達は異なる真実を胸に愛を語る

地球の裏は陽に照らされて明るく
陽気な歌が流れ人々は踊るが
成層圏を抜けた空の奥は暗いままで
私達は地上時間をアテにして

ほんの少しのすれ違いに沈黙を守り
いくらノックしても開かないドアは
哀しみの冷たさに沈んで行くが
叩く手に滲んだ血だけが痕を残す

静かに回る換気扇からは
いつもと変わらぬ匂いが流れ出し
何もが昨日と同じで
何もかもが今までと変わり

夜が終われば陽は昇るが
二人の間には永遠の夜が訪れ
明けることのない夜だけが更けていく
  1. 2012/05/17(木) 00:00:00|
  2. 想葉
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瞳を失った街角

気付いている哀しみの影すら忘れる程に
二人の時間の優しい暖かさに包み込まれ
そして私は君を、あの陽光の中に置いてきてしまった

遥か遠い記憶の全てが哀しみに変わり
私の全てを満たしていくけれど
哀しみの中に浮かぶ君は
やはり、あの頃の微笑みを湛えたままで

唯、ひたすらに真っ直ぐだった君の瞳の先に
私がいた事を何故かと詮無く問い続ける

君の住む街へと向かう線路が
今も電車を運び続けているように
この想いも届きはしないだろうか

偽りに満ちた街角だけが残されて
君の欠片すら見出すことは出来ないはずだのに
私は幾度も街角を曲がってしまう

どれだけ傷付こうとも怯まない
君の瞳を求めてしまうから
いつも見ていたはずの、あの強くて優しい君の瞳が
今、こんなにも恋しい
  1. 2012/05/16(水) 00:00:00|
  2. 想葉
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無題

降り止んだ雨の匂いが残る中を
君の優しさだけが通り過ぎ
ほんの微かに希望という道標を示す

あの日の世界は凍り付いたままに
雨に打たれ続けて
どこもかしこもが泥沼だらけだ

言葉の虚構が溢れる中で人は出遭い
真実を知ることもなく別れ
冷たい光に縋って足を縺れさせて
生まれ落ちた時を忘れたままでいる

陽の光に晒されて寒さに凍えるように
枯れた一葉は音もなく地に触れ
樹の根が吸い上げる水音の中に消えてゆく

静謐さの中に佇む君の後姿は
その遠さによって私を包み込むので
私は唯、ここに立ち尽くそう

大きな波音が固体化した空気を弾き
その全てが私の全てを壊し尽くすまで
結局、岬に風が吹くことはないだろうから
  1. 2012/05/15(火) 14:51:32|
  2. ナニも知らない
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開かれた扉からは出られない

昨日の真実は今日の偽りへと
今日の偽りは明日の真実へと
至極、簡単に入れ替わる世界に
虚しい南風は常に優しく吹き渡る

検証しようのない仮説だけが
世界の骨格を辛うじて保ち
その儚い骨格に縋る人々が身を成し
世界は今にも壊れそうなままに
形を規定しない輪郭に収まっている

放たれた言葉達が常に世界を解体し続け
自らの足場を失っては浮遊し
涙の中でシャボンになっては消えるが
自らの命を如何とも出来ず
ただ消えることだけを宿命として
粛々と放たれては消えてゆく

滂沱の涙も流ることなく乾き
ただ透明な哀しみだけが
何も無い空を漂い続けていた
  1. 2012/05/15(火) 00:00:00|
  2. 想葉
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気付かぬうちに夜を迎え

空き地に捨てられたブリキ板は
赤く染まった夕空を鈍く映し
通り過ぎる風を涙色に染めていた

地平線を突き抜けていた白雲は
押し寄せた黒雲に急かされて
わずかな夕陽を瞳に見ただけだった

やがて近くまで来るだろう雷鳴は遠いが
時折、周囲が照らされる中
静かに昼と夜は入れ替わろうとしている

一陣の風を合図に雨は降り
アスファルトの臭いの鼻を衝く時
遠い空の雲が裂けた隙間から
いくつかの星が顔を出し
いつもと変わらぬ優しさで
眼下に天空の歌を囁き始めた
  1. 2012/05/14(月) 00:00:00|
  2. 想葉
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この地球の自転が止まれば

背を向けていた地平線を振り返ると
やはり近付けば近付くほど遠ざかるそこに
淡い優しさで光る星には手が届かない

ようやく立っているだけの足を進めれば
地平線も星も近付くだけ遠ざかり
やがて追い切れないだろう水平線が見え
希望の絶えた砂浜に、足跡は海へと続く

全ての記憶を海へと放れるならば
この哀しみも絶えてくれるのだろうか
それとも記憶は哀しみだけを

偽りだけが世界の全てであったなら
どれだけ強くなれただろうか

信じたい気持は涙に変わり続け
世界の一つに混じっていくのだろうが
この哀しみも偽りであったなら
明日は風が吹くのだろうか

ふと水平線を遠望すれば
あの星の面影だけが微かに残り
静かな波音が全てを満たし
ぼやけた真実は永遠の揺らぎに身を任す

今朝のことすらもう
あまりに遥か、遠過ぎて
もはや想い出すことすら出来はしない
  1. 2012/05/13(日) 19:39:10|
  2. 想葉
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風が吹くなら星は一つだけで良い

別れの風は常に両方から吹いて来て
私達の立つ場所で合わさり心の中で啼く

向こう岸のない橋を歩き
君の待つ岸辺を目指すが
川は言葉の成す水平線に流れては
無限鉛直下に降り続けている

遠く、線路の響きが止まない街空は
薄雲に覆われたままに黙り込み
寂しさに追われる人々を足止めする

鳴る事のなくなった電話にも
無意味なはずの受話器が残されているように
私達は互いに言葉を交わし合う

いつの日か、どこかしらで聞いたはずの
あの優しい響きは、とっくに消えたが
北の夜空には一つだけ
いつもの星が瞬いていた
  1. 2012/05/13(日) 00:00:00|
  2. 想葉
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想一葉、兼訪問帳

終わりが始まることはない。
いつもただ、始まるだけだ。
そう、ただ祈りが始まるだけだ。
全ては終わってしまったのだから。

by 「無意味という意味」 ちょ:まっく

拝啓

拙語に託さざらむ恥想ひ、在りて候…

Author:まっく
想:遠い陽光の中に消し忘れられた落書





by 綾見さま
(注:写真は故・萩原朔太郎氏)

旧:想(移転作業終了)
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