日曜の銃弾

日曜に放たれた銃弾は月曜の雨に打たれる
火曜には風に吹かれて少しは雨を振り払う
水曜には陽に乾いて干乾びもする
木曜には潮風に吹かれて赤く変色し
金曜には来た道も行く道も忘れてしまう
仕方ないので土曜には銀色の粘土を練って
また銃弾を作り直す

せめて一周で良いから地球を巡り、この心臓に届いたのなら
きっと、それは素晴らしい
その時の銃弾は、きっと正面から心臓を打ち抜くだろう
振り返りもしないままの心臓の正面から打ち抜くのだ

ジャングルを掻い潜って荒野を抜け
砂漠の砂嵐を打ち破って七つの海を渡り歩き
空に触れる山の頂で凍て付きながら
星の美しさについて語り尽くし
月の罪について語り尽くし
それから私の、この心臓を打ち抜いて
きっとどこまでも全てを打ち抜いてゆく
2013-04-08 12:14 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

衣擦れの音

障子に貼られた紙と紙の間に
老夫婦の会話は仕舞い込まれる

雨の音がしますね、と
明日は畑は休もうか、と

明日の雨音が響く中
艶やかさは変わらぬままの衣擦れの音
昔日と変わらぬ静けさと

愛しさだけが満ちる宙に
豆電球は点滅を止めて光り続け
そっと何ともなく見守っている

ただ、それだけの未来を夢見て
恋人たちの日は暮れる

黙ったままの二人の灯が
静かに灯り始めるまで
2013-04-05 14:10 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雨の預言に打たれよ

コンクリートの気泡の中に
石化した林檎を置いた

不服そうに猫が鳴くので
その眼をくり抜いて隣に並べると
足を失って倒れる椅子に掛けた女が初めて微笑んだので
林檎の向こうに据えた

どこかで土の音がする、緑に湿った土の音
探せば近く、頭蓋の右後ろ
ブラインドに閉ざされた夕陽を見るところ
遠くに置き忘れた土手を想い出すところ

空薬莢に模られた雨が降り始め
コンクリートを砕きながら溶けてゆく

石化した林檎は柔らかな土に着地し
猫の眼は硝子になって元の位置に戻った
女は石膏の中に収まっていた
2013-04-05 14:09 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

バイオ・ハザード

ゾンビが襲い掛かる時、怖れるのは何ものか

剥き出しの歯牙に切り裂かれる痛みだろうか?
無下に死にゆくことだろうか?
自分でないものになることだろうか?
ゾンビとして人を襲う未来だろうか?

昨日は棍棒が人類はじめての道具だった
今日は貨幣が人類はじめての道具になり
何ものも恐れない顔をして生きている私達

最後に手にする道具は何か
幻想であって構わないから愛であって欲しいと願う
愚かな想い込みと笑われても構わないから
愛であって欲しいのだと祈ってしまう

神と大地との間に挟まれたまま
被害者という加害者が積み重なって
加害者という被害者が積み重なって、どこまでも高く
バイオ・ハザードは果てしなく荒れ狂い続けている

眠れよ、子供達よ 今だけは未来もなく
眠れよ、子供達よ 今だけは愛もなく

起きろよ、子供達よ 明日の道具を握り締め
起きろよ、子供達よ 今日の私達を打ち殺せ
2013-04-01 13:57 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

融けない涙

雪花と降り積む哀しみを
はらり、はらりと肩背に受けば
頬染む涙も融けようか

貴方を見ない哀しみを
彼方に運ぶ放物線では
月物語も語られよう

とうに忘れた愛歌が
しじまを縫って響き寄り
刃先も鋭く心を抉る

冷えた布団を温めては
独り夜、過ぎる侘しさも
余りに可笑しく滑稽で
夢の私は独りで笑おう
2012-09-05 19:42 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

遠ざかる背中合わせ

瞬く一瞬すらない光を求めて
君は瞬き続ける星と星の間を揺らめきながら歩き去り

揺らめく一瞬すらない波間に隠れる君を求めて
僕は暗闇に残っているだろう足跡を辿った

薄れゆく君の背中を黙って見詰めるばかりでも
その背に伸ばした僕の手こそは
数え切れない星達に照らされて光り続けているのだけれど
振り返ることのない君の瞳には映ることがなくて
ただ掌の中でも光り続ける星がサラサラと落ち続けるだけだ

僕達を両端に釣り下げた三日月はバランスが取れなくて
北に南にと揺れながらも星の川を渡り続けているというのに
肝心の僕達は襟首を吊り下げられたままの背中合わせで
お互いが、そんなに近くにいるなんて知ることも出来やしない

それでも三日月は、僕達を寂しい夜に放ることなど決してせずに
星の囁きに合わせた優しい歌を口ずさんでは
背中合わせのままの厄介な僕達を吊り下げていることなんて
別に大したことじゃあないさ、とウィンクしながら
静かに北でも南でもない空を目指して歩き続けた

僕が伸ばした手が、始めから君の方に向かっていれば
君は瞬かない光を求めることなんてなかったのかな

君を抱き締めた記憶に満ちている、この手だけが哀しくて
それでも僕は、遠ざかる君の背中に手を伸ばす
2012-07-19 16:23 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

手の記憶、そして透ける手を通り抜ける

眩しい程の星の光に満ち溢れた宇宙(そら)に両の手を差し入れ、そっと光の粒を掌に
光の粒に溢れた掌の先に輝く指先は青白く、そして赤く、黄色く
粒と粒は激しくぶつかり合い、音も無く無限小に還り、少しづつ掌を暗くしていく

幾度も幾度も、そうして両の手を差し入れる度に宇宙は暗く夕暮れを追い、忘れ
零れる涙が壊れるように心と言われるものが割れ、散り、そして何事も無く元に還り
絶えない涙の幾筋かだけが涙を流した証として、やはり残ることなく全てを忘れ
そうして私は両の手を、また差し入れている

時折、大きく鋭利な光の粒が掌を差し、血が滲む
その時に流した涙だけが血と混じり合い、薄い桜の花弁のように宙に舞う
何処ともなく飛び去る、その花弁だけが私の記憶に残るが
その軌跡が変わらないので、私は一つのことしか覚えてはいない

正確には私も、一つのことしか覚えていない
その優しい程の厳密な正確さに従って、誰もが血を流し、涙し
そして各々の一つの軌跡だけを奇跡として割れ散る心に抱え続けている

いつでも記憶は掌にだけ残り、誰も知り得ない
だから大事そうに私は私の掌を見つめているのだ
大切なのは記憶ではないと小声で嘯きながら掌を見つめているのだ

隣に座っていた、あの人も同じだった
そうして時折、私達はおかしくなって少し顔を上げ
お互いの目と目がすり抜けるままに微笑む
あの人の顔も全ても、私の掌が覚えている

一つ、一つ、そして、また一つ
私達は激しくぶつかり合い、音も無く無限小に還り、少しづつ掌を暗くしていく
眩しい程の星の光に満ち溢れた宇宙に両の手を差し入れ、そっと光の粒を掌にした記憶とともに
2011-11-18 23:57 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

グライダア(初出:2006年07月18日)

木漏れ陽が風を受けて揺れている
手かざした先の太陽は、柔らかく微笑んでいるかのようだ
期待に胸が、ドンドン膨らんできた

早みゆく足並みに、早くも手の中のグライダアが
グライダアの翼が空気抵抗の中で踊っている
その手応えが あまりにも愉快で
愉快でたまらなくて走り着いた河原

背高い緑が広々となびいている
キラリ、キラリと光放ちながら

さあ、君の出番だ

手放ったグライダアは、それはそれは素晴らしく
素晴らしく素晴らしい滑空を続け、
やがて遥に浮かぶ雲目掛けて滑空し続け始めた

揺れる翼とグライダア・・・

今、君は飛んでいる
消え行くために飛んでいる

翼は飛ぶためにあったのか
翼は消え行くためにあったのか

分からぬままに陽は傾き、土手の風を受けながら
グライダアは翼なのか翼がグライダアなのか
翼のないグライダアは何処に向かうのだろう、と考え続けた

そして気付いた時には夕陽に向かい、
きっと、それはそれは見えぬほど小さいに違いない自分の後姿を想い浮かべながら
何か愉快な気分で空気抵抗の中を進んで行った
2011-11-15 12:41 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

指輪の中(初出:2006年07月14日)

久し振りに、その駅を過ぎた。
 何年・・・いや何十年になるのかな・・・
そんな想いで、つい視線を走らす自分に苦笑が絶えない。
数分後、よくよく考えてみたら、
「今、目の前を素通りされても分かりゃぁ~しねぇんじゃねぇか?」
と想ったら、余りに滑稽で涙腺が緩んでしまった。
悲しい・・・とかいうのとは違う。
ただただ、涙腺が緩んだだけ。

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2011-11-15 12:22 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

極点の炎(初出:2006年07月06日)

極北の天は炎(ほむら)駆け巡るという
まさにそのとき、極南の天にも炎は荒れ狂うという

遥かに浮かぶジオシティ
蒼き星の極点に炎が灯る
その星を、炎が喰らう

極中の蒼茫は恐怖に慄き
極点から目を背けるも
囂々たる炎は、いや増しに高く舞う

北天が呼ぶのか、南天が呼ぶのか

その美しさに心奪われ燃え尽きる蒼茫の民がいる
極点の空を目指し、炎の中に心投じる民がいる

あるいは北、あるいは南
極点は極点を呼び合い仲介者なく溶け合おうと炎する
仲介者あっての極点なのか、極点あっての仲介者なのか

ジオシティを眺めている足元を暗黒の炎が喰らい初める
紫の凍傷に腫上がり、感覚を奪われた足を炎が喰らう

バランスを失って見遣った天に
炎が舞い狂うのをハッキリと見て
全てが舞い狂う炎の中に包まれるのを感じ

やがて炎は喰らい飽き去り
次なる獲物の身中に巣食う
静かに、静かに炎は巣食う
2011-11-15 11:55 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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