乾いた流木を食む

時間を捨てながら一枚、一枚 葉を落とす枯れ木の下で
本は一枚のコインになって錆び 指の隙間から光って落ち
私は、もう一度、湖の真中に佇んでいたが
風に誘われた波となり岸辺に上がり、戻り
流木に巣食う虫のように空っぽの世界を食んでいた

ただ続く物語に始まりがなく、終わりがなく
結局は物語でないように ただ私も続いて
星の暗渠を賭けた音楽の流れる中を踊りよろめき
君の放る氷飴が遠い放物線の彼方に戻るだけだった

二度だけ僕が振り返り、一度だけ君は瞳を投げ
分かれ道は、それだけの時間でしかなく
僕は君が責める理由を知ることが出来ない

光らない太陽を背に負ったまま立ち止まるとき、
私の前を横切る影は止まったまま駆け抜け
無限に深い地面に落ちてゆくだけで世界は完結し、
私は永遠の無言を手に出来るはずだが
その時も、やはり波は風に誘われて
私は流木を食みながら本を想い出していた
全てが書き尽くされている本(の表紙)を想い出していた
2006-09-30 10:35 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夜を投げながら歩く

月の知らない道で溶けゆく夢にすがって
枯れた後に咲く花を窓際に飾ると、
何枚もの過去が重なって地図を覆い
未来の地図は白紙に戻るが

どうして君は夢を見ないのだろうと考えながら
抱かれた君の眠りを歩き、君と逢おう

切り捨てられた幾辺もの君の今は繋がらず
回収されないままに浮遊し

一つの可能性を握りつぶしたとき
全ての今を失った君が遠ざかりゆきながら
凍った微笑みに閉じ込められていく春の日に
花は咲かず、ただ通り過ぎる(全て)。

枯れ果てたままの見慣れた海を前に
立てられたサーフ・ボードは揺れている
沈んだ陽を想い出しながら
もう二度と聞けない波の音に
2006-09-29 22:47 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

二人以上、一人未満のベッド

濡れたままの髪をドライヤーに押し付けて乾く前に凍らせ
霜に閉じ込めた雫が頭皮から染み込む脳裏に過ぎる窓に
ワン・セットで分離出来ないコップと歯ブラシを忘れて
蓋のない歯磨き粉を握り締め歩く絨毯に
一筋の私が落ちて乾いていく

二本の歯ブラシは昨日、捨てよう
カレンダーの一日に丸を付けて今日にするだけ
明日は新しい歯ブラシを足せばいい
それで私は、もう一度ベッドに横たわることが出来る

ネグリジェの上から触れる乳首に熱はなく
はしゃぐテレビを前にヴァギナは濡れない
唇をなぞるだけで舐めることが出来ないあなたと
私の間には 熱を閉じ込めた体が
なければ、虚しい愛の幻でもいい

抱擁の中の私は彼の人を想う
会ったことのない、彼の人を
触れたことのない、彼の人を

ギシギシと軋むベッドに私はいないから
私を穢そうというあなたも報われはしない
報われない情欲に集中するあなたに届かない声を遠くに投げて
一粒、二粒と暗いガラスが雨を留め

罪深い私の奥で あなたは涙を見つけて欲しい
せめて私の涙を見つけて欲しいのに
気付かれない涙の代わりに舐めてあげる
悲しいなんて言いたくないから舐めてあげる
2006-09-28 19:28 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

鬼平犯科帳

今日は珍しく「鬼平犯科帳」のスペシャル!!
ということで楽しんで見てました(笑)。

私は、何故か本より先にTVで見てしまったのですね。
ちょっと残念な気がしないでもない。

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2006-09-28 17:58 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

散り、散り

足音を忍ばせてトイレに向う途中
 静かに静かに周囲を暖めるランプがポツンと

裸電球を安っぽい薄紫のガラスで包み
 どこの工場で量産されたものだろう

小水を急く気持ちを忘れて周囲を見渡すと
 淡い光中にある周囲は いかほどか優雅に佇まう

光子様は宿の選り好みもせず
 誠に儚げでも気にもしないようです

ただただ光子様は あるいは真っ直ぐに
 時には少し曲がりつつも進むばかりしか頭にないようです

大変に残念なことは どうも光子様は
 集まることを余り御存知ない様子であることです

子供の遊びには気前良くお付き合い下さるというのに
 まっこと素っ気無い風で光子様は飛び去って行かれます

そうして一人残された私の手中には
 私の手中には

そっと光子様の置手紙があるような
 そんな気持ちになるのでした

ランプの周囲の輩達も
 そんな光子様の置手紙に 至極、満足げでありました



(初出:2006年02月16日)
2006-09-28 17:55 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

光、影、

愛の吐息に紛れた影の光に惹かれて人は
影の中を歩いている
過ぎた季節は細る残光に潜み
戻ることのない光の影に消えていく

平板で大きな城に縋り泣き、一枚の絵となり
<地図に記されない点は存在する>
触れることの出来ない影として
非存在の影として

ヘルメットの中を覗き込んだ明日。
勇気を失うとき
漆黒の影に宿る命と涙と怒りに震える声が
同時に響く

どうしても消せない記憶だけで君を見つめ、
霧散した記憶を追い掛けながら泣き叫ぶ矛盾と
一冊の手帳の切なさを風に乗せ

曲がる度に伸びる影に怯え、立ちすくみ
小さな怒号が胸倉を引きつけながら
引き摺る力によってのみ
引き剥がされる<ここ>は照らされることはない夢?
影を伴わない光によって滅亡した世界を
全ての影を奪い去る光を

風化し続ける未来の記憶に投げ出した自分の影が
消えることの出来ない、
 を背負い
ため息に溶ける今日を

望んだ通り
全てが望んだ通りなのに足りない
 を背負い
ため息に溶ける今日を消えていく
2006-09-28 12:54 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

忘却されて眠る

流れることのない時間を抱いた世界の壁に触れながら
踏む度に緑の中に沈む枯れ葉を追って石を拾い歩くと
いつも見ては忘れられるだけの顔を、
手放さない君の手に乗せて 僕は眠る
壁のない森の奥に隠れた骸の中で 僕は眠る

蒼い空は水溜りの中で見ることが出来た
天と地とは、濁った水溜りの中の確かな一つで
静かにかき混ぜる指先は鈍く皮を剥がれていく
いつか拾った石が、剥がされゆく皮を、肉を、骨を、僕を
微笑みながら包んで

見つめる君が石となり、鳥が飛ばなくなる日に
生まれ変わりの日に
私は死を見つめることが出来ず
遠い岩の窪みに置いてきた涙を想う
君と訪れた遠い岩を想う

無音に流れる川は僕を包み
君から優しく離れることを教えただけで
川底が陽に照らされて干からびて
石は、そこにもあるけれど、拾えなかった

鼻の奥、耳の奥、眼の奥、僕の奥
それらが石に変わり
鈍く痛い音だけが静かに響き続ける中で
世界は泣いて見える
僕だけの世界が泣いて見える

いつでも、いつまでもそうであるように君を探すのに
そのことを教える君を探すのに
伝えるには君は近過ぎるか、いないかで
私は結局、君の中に居ることが出来ないから
流すべき涙を全て置いてきたから
だから眠ろうと想う
嘲笑の枕に顔を埋め、眠ろうと、想う
2006-09-28 11:05 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

秋桜

なんとなく、今日は山口百恵さんの「秋桜(コスモス)」のメロディーと歌詞が頭に浮かんで仕方なかった。
彼女が引退してから何年になるのだろう?

少し気になって歌詞を当たってみたら、この歌詞は「母宛」のようで少し驚きました。
私は、てっきり「父宛」だと勘違いしていたのです。
他の歌詞と勘違いしてるのでしょう。
先日、作詞作曲担当(笑)の「さだまさし」さんの歌うのを聴いたばかりだというのに。

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2006-09-27 23:50 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

蛍火

スン、スンと光跡が交差する
月のない静謐な夜でした
星もない静謐な闇でした

天地も危い闇穴に
それでも立っていられるのは
なんとも不思議な気持ちがします


飛び交いもせずジッとしているのは
来年らいとせに命継がんと試みているところでしょうか
それとも、そうとは知らずに可愛いお尻をチョチョン、と

眼を細めればスペクトルも鮮やかに
それでも静かに浮き飛ぶ君よ
どうか一人にしないでおくれ

こんな素敵な夜に
一人でいるのは勿体ないから
一人で過ぎても忘れてしまうから

君の瞳に映るこの夜を
僕の瞳に映るこの夜を
いつかその時が来たら想い出せるだろう?

だから傍に居ておくれ
記憶が闇に包まれる前に
全てが闇に包まれる前に



(初出:2006年02月14日)
2006-09-27 23:48 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

はる

すこし あたたかくなってきました
ぽかぽかの おひさまは いいきぶんです

どうろも あたたかくて きもちよさそうです
ごろんとねたら ねてしまいそうです


すこしねぼうしたので もういちどねようとしました
でも いちど めがさめると なかなかねれません

しかたないので いろいろとしました
ねむいのは かわりませんでした
すこし せなかがきもちわるくなりました

あたまやからだの けのあなから
きもちわるい なにかがはいってきたみたいなかんじがしました

そのまま そらにとんでいって くもにつつまれました
そしたら だんだんときもちよくなって

きづいたら くもがなくなって
おほしさまが わらっていました



(初出:2006年02月13日)
2006-09-27 23:46 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ハリポタ第六巻(ネタバレ有)

【注】以下、ネタバレ有りです。

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2006-09-27 22:29 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

一人(哀しみ)ということ

蕾のままに花が萎れるように、光を知らないままに瞳は閉じ
私達から世界は消え、私達だけが残ったが
星の光は届くところを知らぬまま走り続け照らすことがない

いつものように届かない光が水底に沈み
追い掛ける光との広がる距離を追いかけて水底は深く、
始まらない空は始点を追い求めて果てに向かって疾駆する

世界を持たない私達は距離のない抱擁の中で果てなく遠く
くちづけの甘さを想い出せぬまま
全ての人の涙だけが混じり銀河となった

流れぬ銀河の浅瀬に佇み抱き合いながら
堕ちることすら出来ず吐息を忘れ
いつかの記憶の中でだけ咲く花を語るが
物語は、ここでも始点を追い、果てに向かい
ほころびの中に置き忘れられた私達は
居所のない安堵に包まれて星を蹴散らす

未来は私達の子供達を愛しているか?

時間を通り過ぎた私達は問いながら交わるが
きっと全てが私達から遠くなる作業でしかなく
無限に小さい一点でのみ交わるという、
許されたとは言えない赦しだけを大空に祈り、
朽ちた大地に伏せて眠る

<見た>という記憶を奪いながら膨らむ、
誰も知らない夢の中で命は無限に生まれ死するが
掌を透けて罰する陽の光に一人
私達は一人
2006-09-27 20:55 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

汚れちまった悲しみに・異聞

綾見さんのブログには、必ずと言って良いほど(というか、必ずか?)中原中也の一文が載っている。
その都度、瞳に映る中也は、やはり詩星と想わずにいられない。
ところで、私は、あり得ない読み方をしていたことに気付いた。
著名な詩、「汚れちまった悲しみに」である。


先程、パラパラと読み返したが「読み違っている」と言って良いだろう。
私は「悲しみが、汚れている」と読んでいた。
「(自分が?)汚れてしまった、その悲しみに」ではなく、である(苦笑)。

どこをどう読んだら、私のような読み方になるのか・・・と想うのだが、
依然として、私の中での「汚れちまった悲しみに」は、
悲しみが汚れまみれになって屑になっている。

悲しさだって、汚れちまうこともあるのだと、私は想うのだ。



(初出:2006年02月18日)
2006-09-26 23:22 : 消去一葉 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :

あやかし。文字(もんじ)と戯れて。

こうして再度、書き始める前。
一度、書きたい想いを、ただツラツラと書き始めた頃のことである。
数ヶ月で書くことを止めた事がある。
いや、これからすらも、いつ途絶えるかは分からぬが。

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2006-09-26 23:14 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

眩い朝陽に立ち昇る雲霞にも無関係に
 天の大方は無限の視野を広げている

その先に何があるのか
 人は気になって仕方なく
  飽くなき追求をし続けています

雲は水塵の集まりなのですね
 星は遠くにある太陽なのですね
  いずれ太陽もなくなるのですね

それでも今は、ほら
 ぽっかり奇麗に浮かんでいるではありませんか
  気をつけないと見失ってしまいます

蒼天の月は
 それは何故



(初出:2006年02月09日)
2006-09-26 23:12 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

選択のない選択

メダカやらヌマエビを飼ってる関係で、貝の処分を時折する。
厳密には貝は大きく二種類いて、サカマキガイとインドヒラマキガイである。
インドヒラマキガイは意外と高価でもあり、少々珍しかったりアルピノという色素に乏しい希少種が産まれたりで放置して飼ってるのだが、サカマキガイは扱いが異なる。

そもそも、ある種の貝というのは、よほど人間生活に馴染むらしく、ドブ川でもなんでも、その増殖度合いたるや物凄い。
一時期、原子炉の冷却水の吸込み口にクラゲが入ってきて敵わない、という記事が出たが、実際は貝の被害も酷い。

まぁ、酷さを列挙しても意味ないのだが、貝を処分しながら想った。
私が貝を処分するときには無作為抽出であって、処分、つまりや摘み出しやすいという一事だけで処分されていく。
奴らも逃げるという行動が見られるのだが、それには付き合ってはやれない。

しかし、もし、もしなのだが、
「オイ。オイラヲ何デ選ンデ処分スルンダ?」
と貝が問い掛けたら、どう応えよう?
神様よろしくスマシ顔で無視するのも一つではあるかもしれぬ。

が、どうもそういう心境にはなれそうにない気がする。

他は何も変わりはしない。
ただ、貝の問い掛けがあったら、の話である。



(初出:2006年01月27日)
2006-09-26 23:10 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

漆黒の風

今朝の風は、室内にいると、それと気付かないほど意外に強い。
唸り音をあげるほどの強さではなかったので、全くに気付かなかった。
窓外の電線の揺れが視界に入るまで。

風や空気というのは身近ながら不思議なものだ。
それらを直裁的に認めるのは難しい。
しかし「ない」とは言い難いし、あるのだろう。

彼らはいつも「そこにある」というよりも現象として自己主張するようだ。
電線や干し物を揺らし、現象を通じて、
「ホラホラ、フフフ・・・」
と不気味な意志を持って迫りくるあたりは、まるでホラア映画のようではないか?

ソレが希薄な存在であればあるほど、現象としての現れを求めるものなのかもしれない。
大抵の場合、希薄さに比例して現象に対する要求も煩いものだ。

現象がなくなれば、存在とは消えうせるものなのだろうか・・・

誰もいず、なにもない漆黒の中でも風は吹くのだろうか・・・

陽の光の中で干し物が揺らいでいる。
先程よりも微かではあるが。
干し物は、揺らいでいる。



(初出:2006年01月24日)
2006-09-26 23:09 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

久方の厚い雲は 冷を得て生き生きと蠢いている
それほどに待ち切れないほどだったのか 白粉をバラ撒くことが

 雲ノ役目ナド考エタコトモナイ

そんな矮小な奴等を振り向かせんがために
忌まわしいが助っ人を呼んだのかよ

流々いずれは千切れ失せる身も証は欲しいのか?

今、お前はいない
お前の嫌う彼の人の光臨だ

しかし

お前の白粉は お前の嫌う彼の人の恵みの中で
確かに鮮やかに生き生きとしてすら見えるのだよ

今のお前が何処かは知らぬが

確かにお前が存在(ゐ)たはずなのに

そんなことは忘れられて眩さの中に埋もれ始めつつ



(初出:2006年01月22日)
2006-09-26 23:07 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

言葉。喰らう、喰らわれる。

「太宰 vs 三島」ということすら考えたこともない私ですが、
御二人の著作は少しは読んだことがあります。
風さんの記事、そしてコメントで、少し想い起こしたことがあります。

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2006-09-26 23:06 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

入口の遠い迷宮

出口の見える迷宮の宴は
君と私と少しのワインと
冷たい陽の光が必要でした

君の瞳が赤いので 私はワインを注ぐのです
君の乳首が熱を持つので 冷たい光を入れるのです

萎れることのないシーツの上を
君の吐息が這い抜けて
小鳥たちが風に乗り
私は君を舐るのです
ワインを口に舐るのです

幾夜、幾日と繋がりあったまま
私達は出口を見つめ続けています
上りつめることを知らない繋がりの中で
君は飽いたまま瞳を閉じて
放出する何もないままの繋がりの中で
私は君の胸を揉みしだきながら

出口の見える迷宮で
宴は二人だけのもの
君と私と少しのワイン
冷たい陽に焼かれながら
見守る給仕たちの真ん中で、
宴は続いていくのです
2006-09-26 10:50 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月夜です

誰もいない、足音の響く月夜です
湖の水、一つ一つが胸いっぱいに星光を吸い込む月夜です
夜闇を細く切り裂いたのは私でした

だから誰もいない、足音の響く月夜です
その雲の上で、君は眠っている月夜です

私の夢は、全て細く切り裂かれた月に放りました
静かに、静かに、それは静かに放りました
森が賑やかなのは、そのせいです
月夜に森が賑やかなのは、そのせいです

岬に立つ一本きりの枯れ木に凭れ、風船は風に向かい
永遠に砕けぬ漣の音を拾いながら涙に変えて
深海の歴史に耳を澄ましながら歩くのは

遠い暖炉に温もりをくべ去り、
自分で作った月夜です

まだ冷め切らないアスファルトが私をさらい、一つにし
多くの人が行き来しますが
誰もいない、足音の響く月夜なのです
踏み捨てられる私が作った
誰もいない、誰もいない足音の響く月夜なのです
2006-09-26 10:29 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

キムさんの想い出

不勉強で怠惰な自分を反省するとき、必ずと言ってよいほど想い出す方がいる。
学寮時代に同室だった金(キム)さんのことだ。
当時、まだ韓国の方にとって、日本は「遠い隣国」だった。
キムさんは、なんの因果か、ジャパン・マネーに寄生した典型的なエゴイストの私と同室になった。
が、なぜか「微妙な関係」を二人で(?)上手く築き上げたのだった。

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2006-09-26 00:06 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

キッチン

(命)洗うことを拒否した白い洗剤粉を手に僕のいない地図を歩け



いつから湯に浸けているのか分からない、
とろろ昆布の煮出し汁を食ったヤカンが隣に座って笑い転げている
きっと毒に中ったに違いなかろう

いつだったか醤油漬けになった米粒が目が痛いと泣いていたが、
酢漬けにされた大豆が「お前の方がマシだ」とだみ声を張り上げて抗弁していた
奴らにしたら、俺に下された命令も鼻で笑われるような気もするが

洗剤粉が見つからないのだ
皆、優等生よろしく素早く水に溶け込んで役目を果たし、
サッサと排水口に飛び込むのだ、潔い
あまりに潔いのも度が過ぎて泣けてくる

僕はまだ、出発の準備すらママならない
毒が染みた黒ヤカンは笑い続けているし
その高笑いが耳について
ヤカンという奴は、実際、厄介なのだ
火にくべられるのが大好きな変態だし

先に僕のいない地図を歩くべきなのかな?
いや、その方が現実的な気がする
大体、ここは厄介事が多過ぎるのだ
厄介事が多過ぎて、僕はいないはずなのだ
だから・・・

でも、そういえば今朝、とろろ昆布を食べなかったか?
ということは、ヤカンは僕で、僕はヤカンなのか?
ああ、やっぱり厄介事が多過ぎるんだ、厄介事が
2006-09-25 22:44 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

いつか訪れる夢の中で

たれにも気付かれず街に降る涙が
静謐な水路を伝い集まり
僕と君は小舟に乗って黙ってゆこう

何億光年も凍ったままの哀しみの水路を
小舟に乗って黙ってゆこう
たゆたう倦怠な霧に濡れながら
形を奪われた月光を浴びながら

君の透き通った手が水に触れるたび
水は生き返り、波に戻って消えゆくだろう
君の希望の溜息を受けるなら、
風は霧を抜けるだろう

いつか砂浜に残した僕の足跡が
君の涙で固くなり
その上を歩く幾人かの人とは
きっと、あの岬の灯台で

たった一つきりの星なのに
蒼く照る、たった一つきりの星なのに
なぜに君は捨てたのだ
なぜに僕に捨てたのだ

ほんの小さな星なのに
蒼く泣く、たった一つきりの星なのに
なぜに君は拾ったのだ
なぜに僕に拾ったのだ

決意という呼吸が息苦しい
知らないという眠りが悪夢を生んで
君と僕の出会いの歴史の一つになった
幾千の君との出会いの 幾万の君との別れの
一度も会ったことのない僕達は
そうして分かれるしか、知らなかった
2006-09-25 17:29 : 落陽 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :

虚空にて

全くに顔を伏せたままの君が青い涙を流すから
確り気持ちを保たなくては、という微想が
すり抜けた先は虚空だという馬鹿げた砂時計の細い管を通って
シャリシャリと音を立てて散って往ってしまう

やはり、ここでも砂は落ちるもので留まるものでなく
一粒一粒、空いていくガラス玉の中の空間が僕であるという
きっと君の青い涙も同じであろうけれど、
もし<きまり>というものがあるとすれば君と僕とは
そういう空間を造り続け永遠に埋められることのない空間を
だから虚空と呼んだ

なぜ愛したものが先に逝くのかを僕達は知らねばいけない
僕達は今この時も、いつも変わりなく虚空を造り続けているということを
愛すれば愛するほど濃くなる虚空というものを
僕達に置き換わる本来の僕達の姿である虚空というものを

僕達のやがての姿である虚空を想い浮かべることが出来ない
今のありのままの僕達の姿である虚空を想い浮かべることが出来ない
だから顔を伏せたまま青い涙を流す君を
僕は愛することが出来ない

誰もが誰をも愛することが出来ないという罪は
全ての人が悲しみの中に埋もれることの赦しであって
悲しまずに愛することが出来ないように
悲しみながら愛することしか、僕には出来ない
2006-09-25 17:09 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

さて・・・ では?

月に向かって吠えたとて、それは悲しいことじゃあない
真暗な海に見つめられたとて、それは悲しいことじゃあない
点滅ランプ下を歩いたとて、それは悲しいことじゃあない
そうだ、悲しいことじゃあない

真白な雪に笹舟を一つ浮かべたとて、悲しいことじゃあないだろう
砂漠にあばら骨を一本晒したとて、悲しいことじゃあないだろう
万年氷の中に一泡まぎれたとて、悲しいことじゃあないだろう
そうだ、悲しいことじゃあないだろう

だから君とて泣くじゃあない
だから僕とて泣くじゃあない
悲しいことはないだろう
悲しいことは、ないだろう
2006-09-25 00:05 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

抱いて

ガラスの歌は割れやすいから胸に抱いて
ガラスの歌が哀しすぎるから胸に抱いて
ガラスの歌に涙を入れたから胸に抱いて

眠ろう、明るい陽に包まれて、眠ろう
きっと目覚めたら僕がいるから
眠ろう、こんなに哀しい朝は、眠ろう

いつか希望の灯が消えるまで
ガラスの歌は止まらないから
割れ続ける希望の灯を歌おう

凍った落葉が降る道を
君の肩に頬寄せて
静かな涙をこぼさずに
静かな涙をこぼさずに
湛えて歩こう、見えない道を

逆さの鏡に映る世界が
君の瞳を失くすとき
僕の涙が光るだろう
光る涙を流すだろう

その時きっと、ガラスの歌は割れている
ガラスの歌が割れ散って
僕の全てを満たすだろう
逆さの鏡の中に沁み
ガラスの歌が満ちるだろう

だから抱いて
胸に、抱いて
2006-09-24 21:59 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

つまりバトンは存在しない、ということ

透明ブラインドの向こうで(揺れている)キャンドルの
灯の中の二人は影絵であるが故に
音もない影絵であるが故に
喧嘩をしながら愛し合い、愛し合いながら喧嘩している
つまりは、何をしているのか分からない
という不明な影絵を見つめながら立っていた僕の
月明かりに照らされた僕は影絵であるが故に
音もない影絵であるが故に
僕であるようで非僕であって、非僕であるようで僕である
つまりは、誰なのか分からない

至極、当たり前のような気がしていたのはいつのことか。
今では僕は影の中に住むことを生業としているわけだが
だからと言って別段に不満があるということを言いたいわけではないが、
その口は僕の口ではないので、常に不満を言っているわけで、
当然ながら、聞き手になるようなヤツは僕しかいないので
というよりも僕はその不満から離れられないので聞いているわけだが
つまりは、聞いていない

聞かれない不満ほど厄介なものはないんではないか?
ということに気付いたときには遅過ぎて、
隣のお姉さんもお兄さんもおいちゃんもばあちゃんも
考え得る、そして考え得ない全ての人がその不満の囲炉裏を囲んで
みんなで不満を突付いては喜んでいるわけだが
もしかすると不満の持ち主は俺じゃなかったのか?
という疑問を持ちながら僕は一緒に、
とうとう、みんなと一緒になって囲炉裏のメンバーになって
そういえば、透明ブラインド越しに見ているヤツがいるはずで
そいつから見ると僕らは一体、何に見えるのだろうと
いや別に何にも見えないということが分かっているのに
2006-09-24 18:37 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

間違っちまった輪唱

汚れつちまつた悲しみに
 すれ違つちまつた哀しみに
今日も小雪の降りかかる
 今日は小雨も降りかかる
汚れつちまつた哀しみに
 すれ違つちまつた哀しみに
今日も風さえ吹きすぎる
 今日は鳥さえ飛びすぎる

汚れつちまつた悲しみは
 すれ違つちまつた哀しみは
たとへば狐の革裘
 たとへば毛虫の蓑袋
小雪のかかつてちぢこまる
 風の吹くまま揺れ動く

汚れつちまつた悲しみは
 すれ違つちまつた哀しみは
なにのぞむなくねがふなく
 いろのぞむけどねがひなく
汚れつちまつた悲しみは
 すれ違つちまつた哀しみは
倦怠のうちに死を夢む
 甘美のうちの死を望む

汚れつちまつた悲しみに
 すれ違つちまつた哀しみに
いたいたしくも怖気づき
 なよなよしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
 すれ違つちまつた哀しみに
なすところもなく日は暮れる
 なすところもなく日は暮れる(ああ、日は暮れる、日が暮れる)



引用「汚れつちまつた悲しみに」中原中也
2006-09-24 18:13 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

腹の空く恋文を

私の凍った涙が宙に浮いたとて
私の燃えた手が見えたとて



世界に真ん中があるとして、僕がそこにいるとして
では僕の真ん中が世界の真ん中になるとして
僕の真ん中には何もなかろう
少なくとも私は「何もなかろう」と想う
何もなかろうからどうなのかは分からないが

毎日、ポストに放り込まれる恋文が
きっと僕を少しは変えるだろうという試みが
僕を真空の中に引き込むことは疑いようがなく
だから恋文は常に確信犯からの犯行声明であって
僕はその、宣戦布告に対して立たねばならない
今こそ立たねばならない時だ、と雄叫びあげて
握り締めた手には
手には?

ははははは・・・

なんとも愉快なことで笑ってしまいます
握り締めた私の手には何もない
いや、正確には握り締めた拳しかない(拳はあるのだ)
その拳こそが私の中心点であり、すなわち世界の中心点であるわけですが、そうなると私は拳を開いてはいけないという立場を背負うことになってしまい、なので、まんまと「あの恋文」の策略に引っ掛かった、というべきであって、それは行く先を閉ざされた(いや、乗っ取られた)拳が阿呆なのではなく、私が、つい拳を握ってしまった私が阿呆だったということであり、つまるところ「手詰まり」であるわけだ。
うん、確かに僕は手詰まっているようだ(他人事ではない)

ああ、でも僕の手は燃えているんだった!
ならば、拳も燃えているに違いないという想いは浅はかで
私は拳でグイと涙を拭ってしまったものだから
プラスとマイナスが等量であるとゼロになるらしい規則に則り
手は手のままで、涙は涙のままで
結局、あの忌々しい恋文というものに対抗出来たかと言えば

そこで君と砂浜を行く僕がいる
海から切り離されたカラカラに乾いた砂浜を行く二人がいる
止まったまま歩くという、あの苦痛の中で歩く二人がいる
その苦痛の中で良好な関係など築けるはずもなく
(それは気付けないということでもあることに注意しなくてはいけないが)
ただただ歩き続けるという立場を二人で背負うことになったのだけれど、それは分担する、というようなものではなくて、つまりは二人で別々に背負うことに追い遣られただけなので、僕は君の重荷を知らないし、君も僕の重みを知るわけもなく、それを責めたとて今更なのは分かっているのに責めずにいられない自分の情けなさが正当化する攻撃的な姿勢は硬化していくばかりで、腹立ちというものは

そうだ、君
ねえ?
お腹は空いてないかい?
君、お腹は空いてないかい?
今の僕の心配は、多分、それだけなんだけど

お腹、空いてないかい?
2006-09-24 11:28 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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