眠り

ところどころ地面をあらわにする斜面の先で永い眠りにつけると想い、歩き続けた。丘の上は素晴らしく晴れ渡り、暖かい陽の光さえ駆け巡っているというのに、遠くに漂う大きな黒雲に染められた緑はどす黒くくすみ、なま温かい風に首をグラングランと揺らされていた。
いつもは、あんなに素敵な君の真っ黒な瞳も虚ろに暗い海に飲み込まれたままで僕はいない。いない僕は、眠れない。
少し遠く、小さな人影がちらつく灯台の周りをトンビだろうか、鳥がホバリングしている。何度も何度も、ただただ周り続けている。
こちらに、その瞳が向けられたとき、どんなに間抜けな僕が見えるのだろう。彼女は見えるのだろうか、彼女と僕とは何をしているように見えるのだろうか。
気付いた君の掌では二つの小石がくるくると器用な指先に回され、それが僕だとしたら、どんなにか疲れることだろうかと想うとやけに可笑しくて泣いてしまった。可笑しくて可笑しくて、泣いてしまった。
だから今は強かった風も凪ぎ、少しだけ生暖かい空気が僕を包んでいる。カラカラカラ、と君の掌の音だけを耳にしながら僕は生暖かい空気に身を任せている。
どっと、それまでの疲れが身を襲い、どっと、それまでの疲れが気持ちを昂らせていた。そして僕は卒倒した。目を開けて空を見上げ、掌の音を耳にしたまま卒倒してしまった。
その時の僕に覆い被さってくる君、重ねられた唇、間近でそれとも分からぬ瞳。
それらが僕の本当の眠りの全てだ。僕の眠りはいつも勘違いの先にあって、どうしてこんなにも僕は鈍いのだろうと想う。
そして眠りの中で、もう一度。
僕は眠りの中で、もう一度、眠らなくてはならない。
ところどころ地面をあらわにする斜面の先で長い眠りにつけると想い、
2007-07-06 21:33 : 落陽 : コメント : 4 : トラックバック : 0 :

川と辺(ほとり)と

一人で語り継いできたつもりだった哀しみの一欠けらを曇ったガラス瓶に入れて川に放った
すぐに霧に包まれて見えなくなったガラス瓶を、川から遠ざかりながら振り返ると少しだけ、涙が光った気がした
海には続かない閉鎖した川で私は何も見えず、誰とも語ることなく浮き沈み、流れ、忘れられ
時に出会う幻光に瞳を焼かれ、あの日を遠く想い出しながら泣き笑ってしまう
ここには誰もいない
私と私を入れたガラス瓶と、そして川があるが
時折、赤い夕焼けか朝焼けを感じるのも気のせいだと想う
音なく川に揺られ続けたための幻覚なのだと想う
こうして、いまだ語り継いでいるつもりの哀しみの一欠けらを誰が見つけようか
誰が拾おうか
ガラス瓶に詰められた少しの空気が尽きる時は遠くない
無数のガラス瓶がお互いに触れることなく、お互いを知ることなく、ただ流れている
2007-07-05 12:57 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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