小道

雪景色に沈む山頂を胸に抱いて菜の花畑を見下ろしながら、君の息遣いを背に感じながら歩こう
微かに残雪が縁取る小川にはキラキラと陽が反射し、魚影も見えるに違いない
あの寒さは今は遠くに行ってしまった、と麦藁帽子を少し上げた野良の人が大きな声で言う
大きなミミズが掘り出され、慌てて隠れ家を探して地を這うが、小鳥がサッとついばみ去って行く
霞む地平線は明るく、遠くの海は乱反射する光に満ち、時折は船の警笛が聞えてくるが、ことのほか静かで
全てが静かで、君の息遣いを遮られることなく聞くことが出来る
そんな小道を二人、飽かずに何処までも
2008-02-22 22:37 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 1 :

昨日、書いた改行記号

それ以外は、その前も後もどうでも良いのだというように、君は改行記号だけを見つめている。実際、私の手はペンを持ったまま宙を漂うだけで後といえば別の原稿用紙でも持ってこようかというばかり。それまでに書いたものも全て忘れてしまった。
「改行は罪そのものなのよね憎悪、それとも罰なのかしら?」と君はこの上なく美しく意地の悪い微笑を浮かべながら改行をなぞり、私は唯、その横顔を見つめるだけで窓外の庇からここ数週間の寒さが運んだ雪が融けて落ち、夫婦のメジロが梢を急ぎ渡って行く。
「君のいうことはいつもサッパリ分かりやしない」と呟くと「私も」と同じトーンで呟き、私の掌に掌を合わせて消え、そして私は溜息をつく。私達の関係は、そういうものだった。
近所の公園に行くと私は砂場に近いベンチに座り、残された遊具の汚れ具合を確かめ安堵し、全てに安心した気持ちになり、そして家を想い浮かべては不安に駆られ、また歩き出す。
朝焼けの中、風に吹かれた新聞紙が舞う中を新聞配達の少年とすれ違いながら佇み、酔っ払いの吐瀉の匂いの中に改行記号を残して少しだけ歩く。やがては学生や勤め人で溢れる駅前の商店街を、ゆっくりと歩く。
時折、シャッターの音がカラカラと響き渡り、そして又、全てが朝焼けの中に溶けながら今日を想い出すけれど、私は昨日のことや明日のことばかり考えているから歩くしかない。そうこうしているうちに、きっと私はあの公園に再び戻るしかなく、やはりボンヤリと砂場に近いベンチに座り、残された遊具の汚れ具合を確かめる。
空に向けて七十度の角度で刺さったプラスチック製のおもちゃのシャベル、その柄のひんやりした感触を手に受け、さらに砂場に押し込みながらカサカサと舞う枯葉を身にまとい、きっと何かが間違っているに違いないと想うのだけれど、それが私自身だと気付いてからはその柄に触れることもなく「改行は罪そのものなのよね憎悪、それとも罰なのかしら?」と泣きながら私は呟き続ける。
2008-02-15 22:57 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

懐疑、乖離・・・とは無関係に、その先に

名前だけは知っていたデュシャンのことをTVで少し見かた。
なんでも「泉」を巡って云々で、芸術というもに対して懐疑的だった、とか、既成文脈にない在り方の提示とか・・・今では普通と言えば普通の在り方の一つになってしまっている感があるのが又、なんとも奇妙というか。少し調べたらデュシャンは一時期、芸術活動から離れてチェスに没頭していたとか。チェスといえば、先日亡くなった、かのフィッシャーも1970年初頭位から表舞台から姿を消したまま天才として逝ってしまった。人間、血迷うとチェスに向かうのだろうか(違)?

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2008-02-15 22:04 : 消去一葉 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :

僕達の立つ場所と解題

差異について少考していると、ふと・・・



#見渡せば見渡す限りの砂丘と、見渡せば見渡す限りの空との間に僕達は立つ



などというフレーズが浮かんできた。
そして、ここで「砂丘」というのは「各論(差異)」の、「空」は「総論(統合)」の象徴だな、と想いつく。
そこで、この一節にて続くもの全てを放棄することとなった。
「放棄」という形でしか、今の私は対峙出来なかった。
つまり私は、世界を放棄したのである。
2008-02-06 23:36 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

屑篭

電信柱から伸びる電線は、いつも三本で、いつも途中から空に混じって消える。柱の頭向こうには青空とグラデのかかった白っぽい雲とが見え、私は君の溜息を想い出す。
それが私の記憶の全てかもしれないと、窓口に腰掛け、枠に背を凭れかけながら再度、開いた両手を見つめながら。

眩しくもなく明るい太陽の下にいると、そうして私の一日は過ぎ、全ての影や音や匂いや、それら全てもやはり過ぎてゆき、過ぎるばかりの全ての中で私は居場所を与えられ、居場所を見失う。喪失したはずの手紙を捨てるように、君から聞いた話を一語一語、一音一音、丁寧に捨てる必要がありそうだ。君の息遣いも込めて、捨てる必要がありそうだ。
きっと、それはとても、とても大事だからで、大事だから涙ぐみながら私は捨てなければならないはずなのだけれど、いつも涙ぐみながら捨て続ける自分の姿を想い浮かべ眺めるだけで、やがて私は我に返り、もう一度、夕暮れた電信柱を見つめるが、その頃には電線など見えるわけもなく、電信柱はただの黒い棒でしかないのに、まるで全てを知り尽くした背のヒョロ高い不気味な男のように見えてくる。
その頃には温かい君の胸の中で私は一人泣き、そして君は遣り切れなさそうに「大丈夫」とだけ間をおきながら呟き続け、二人の別々の夜が始まる。きっと、それが一日の終わりというものなのだ。スクリーンの中で夕餉をとる君と私とは、つまり全ての人は、そういう距離に慣れることが必要で、実際、確かめる必要すらないほどに巧みだから私は悔しい。

遠い昔の笑顔だけが今の私を笑顔にし、遠い未来の涙だけが私を示し、君と交差する直立した時間軸にしがみつく数え切れない全てのものを愛しむ神と決別し、捨て去らねばならぬ。
永遠というには短か過ぎる哀しみは、そうして消え、誰かの愛に変わるだろう。
2008-02-06 20:32 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

バックパッカほすぃ

マーティンのバックパッカー(以下「BP」w)が、ずっと気になっている・・・というか、ほすぃ。
ああ、これでBPを入手してしまうと「アリとキリギリス」のギリギリッすになってしまわんか?と想うと買って良いのか、二人の子を持つ親としての道義的な在り方がっデム!!!
もっとも、そもそもにミニギターとしてのBPが良いのかというと「・・・」というとこもないではない(らしい)が。

私の現マイ・ギターはモリスンの分からんver.で、久し振りに引っ張り出して弾きながら指が動かない!!と騒いでいる横で「これ、どうしたの(入手方法)?」とチビに聞かれ、ちと時間がかかった気がしないでもないが、高校入学の記念に買ってもらったことを想い出した。
女房の常語に従えば「買うなら捨てろ」なのだが、サスガに親思いの私は捨てることが出来ん・・・。
想えばシッカと確かめたハズなのにスグに音程外れのとこがあって、交換してもらおうと想ったが、やはり無理な相談で、というのが一番の想い出らしい想い出のギター。w
私はストロークに走りがちなものだから、一時期、さすがに煩いのでアコギ派の私もツイ、エレキでも買おうか?と真剣に考えた頃が懐かしい。

それはともかく、やはり「ちょっと弾きたい」という時に、ミニギターは助かる(BPならスリムだし)。
それでは「バックパッカー」としての存在意義に関わるのでは?という命題は横においておいてだな・・・。BPの楽器としての最難題は、どうも音量にあるようだけれど、私の場合、逆にソレがいいわけでもあり。
しかし、これ以上、金にならない余技にばかり走る自分も怖いし(汗)。
でも、定期的に、どうしてもコノ手のが欲しくなるクセに腕ばかりが衰えていくのも悲しいし、
BUT、真昼間から弾いてるわけにもいかないよーな気もしなくもないし、
んが、どうせ今でも金にならないことにばかり夢中になっているわけだし今更だという開き直りもあるし、
しかし、人間としてソレはどうなんだ?というソモソモの問題から目を逸らすのか?などという一人問答を繰り返しているうちにBPの在庫が消えていく。
といっても、ニューver.が出るだけの話だったりするわけで、そこそこの安定した人気もあるみたいだから大丈夫と見込んでだな・・・どうしよう?www

こんな風に悩むことがあることさえ知らなかった頃を小さなBPに詰め込んで、夜空の下でポロンと奏でるのもいいかもしんない・・・

って、ダメっすか?俺、人間としてダメっすか??

スマン、女房よ。
おいら、やっぱ買っちゃいそうな気がするゎ(^^;
2008-02-05 02:03 : 消去一葉 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :

一辺のみが太い三角の歌

温かく君の歌声に揺られて眠るのが好きなので、どうか歌い続けて下さい
冷酷で無限に笑う、あの恐ろしい優しさというヤツを打ちのめす歌を
曇天の、少し太陽が覗いて照らされた公園を抱えた四辻を左手に曲がる君と会った日のように

四辻に来ると、君は必ず左手に曲がる
まるでそれは僕が決めた通りであって、僕が望んだ通りであって、君は左手に曲がる

風が吹くときは、かならずやラジオ・カセットが壊れて知らない歌を歌い出すから恐ろしくてかないやしない
そんな日は、酒を片手にぶら下げたまま呆けて立ち尽くす、亡くなった人達が僕を包んで守ってくれる
ただただ黙って、いつまでも守ってくれる、その人達に何かを渡さなくてはいけないのに、いつも忘れてしまうから哀しみは絶えない
かならずや壊れてしまうというのに、そして、きっと守ってもらえるというのに忘れるというのは罪ではないのか

凍った波を黙って砕きながら、川上に向かって静かに滑り落ちていく壁掛け時計は、永遠の時を刻みながら世界の終わりを置いていく
風に吹かれ、鮮やかな緑のままに凍てついた草原を静かに歩く、あの麦藁帽子の男の影が何処までも伸びていくように私達の周りの空気も広がりの中に消えそうに消えない
いつでも君が歌声を響かせていることは知っているのに置き忘れてしまう乳児を、そんなに大事にするから限りない稀薄さは、更に稀薄さを求めて、ついには私達を押し潰してしまう

坂道は上っても下ってもいないし、私達は決して上ることも下ることも出来ないのよ、と笑いながら教えてくれた君の笑顔が消えていった赤や黒や緑やに涎まみれの大口が僕の足の下で眠り、いつでも正しく正三角形をしている眠りは頂点から頂点へと移るだけの運動の中に閉じ込められて笑い転げている
ついでに空から吊り下げられた太陽と星々と、そして、やはり月が風に吹かれるままに揺れ、釣られて揺らぐエアーに直立するタワーだけが煌々とした光を身にまとい、やるせなさを増す
いつでも融けるままに凍り続ける炎のように、やるせない想いが僕の足指の間を数えながら両の足を行ったり来たり

どうしてもというからなのに、僕は歌うけれど
ゆっくりと歌うけれど
あまりに速く届いてしまう歌は僕の手の中で輪唱を奏でる
きっと不協和音が生じているに違いないと手をこじ開けて耳を澄ますから、輪唱は美しさを増して君は聞く

僕には分かっている
山彦に問えば海彦が答えるが、海彦に問うたことはない
海彦は山彦にしか答えないから、その答えも、どうせ深みにしまい込んで、二人でニヤついて楽しむだけだから、結局は同じことなのだ、と
隆起する山の創生だけが彼らの唯一の本来の楽しみであって、他は、本当はどうせも良いのだ
だから涙は海にも落ち、山にも落ち、川も流れ、そしてもう一度だけ僕の瞳を濡らして消えていく
永遠に涙し続ける僕の頬を伝う涙の跡だけが、氷雪に削られて崩れ落ちる氷河のように嘘をつく
2008-02-05 01:21 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

少し、良い

融け始めた雪に足を取られながら解けない君の歌を口ずさむことさえ出来なくなった僕は広がる雪原、それもまた融け始めた雪であるというのに、弱い陽に青みの強い空の下でジュボッとした足の感触を味合わされてからしか吸えない息が、呼吸がほんのりと暖かいエアー、そう、エアーが胸に入り、出て行ってからポケットに手を突っ込んだ。
既に分かるように紙煙草は湿気やら紛れ込んで融けた雪やらで元の形を辛うじて保っているだけだが、マッチが使えないことに気付いて情けない気分でライターの火を起こし、見つめ、紙煙草の先を今や炎と化したそれに突っ込み一息吸い込んだが、あまりの渋い不味さに涙が出て、涙が出て、それでも震える指に挟んだ紙煙草が愛しく、微かな風にさえ消えていく煙を吸い込んで溜め、口を細めて吐き出した。吐き出した煙は丁度、雲と一重になり「ああ、美しいなあ」などと思わず呟いても聞く人などいないのに、別にそれが当たり前なのに苦笑いしたつもりで目を瞑る。
今、僕の周囲には融け始めた雪原しか広がっていないのだという考えが僕を支えているようだが、それが唯、僕の考えだけで留まっているわけではなく、実際、僕の周囲には融け始めた雪原だけが広がっている。そんなところまで歩いてきたのだ。そんなところまで歩いてきた理由があるのだろうと思うのだが想い出せない。どうでもいいことであるはずがないのに、それだけは覚えているのに想い出せない。闇の中、ランプの小さな明かりを挟んで見つめた君の顔はこんなにもハッキリと覚えているのだが、無限に広がる、この融け始めた雪原の中に立っている理由が分からない。
そういえば若い頃に酔いに酔い、雑踏の中を歩いているうちに雑踏がどこまでもどこまでも続いているような錯覚に任せて歩き続けたことがあった。なるほど、その時に似ている気がする。あの時は無言の君の背中を追い掛けてたはずだが、その後、僕らは一体どうなったか。ああ、そう。あの時は僕が悪かったに違いない。だけど君には一言だけで済むはずの、その一言がいえないままに無限の雑踏を僕は歩き続けることになったのだ。そんな風に考えるのが一番いけない。確か、そんなことを呟き続けた。
「そんな風に、そんな風に。」
君は爪先から頭のてっぺんまで何度も何度も往復して、それだけで足りなくて僕の周りをグルグルと回りながら言い続けていた。なんて情けない気分になることだろう。
ただ、今、僕は二本目の煙草を吸い始めた。それが情けない気分を消してくれる訳ではないが、消えるわけはないのだからだが、最善のことなのだ。それだけは知っている。
「そんな風に。」
頭の中に響く君の声を、今度は僕自身が呟いて、きっと、まだまだ歩ける。勿論だ、歩ける。太陽が見当たらない明るい無限雪原は、三本目の煙草を吸っては歩けない。ただ、こんな風に二本吸えば歩ける。僕は、やはり今でも君に感謝している。
2008-02-04 02:41 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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