哀しみは闇を渡る

陽の面影が最も薄くなった頃の星達は
ゆっくりと時を手渡し続けるが
干上がった川を渡れないままに
やはり吹き溜って動けない言葉達を撫でている

偽りに震える貴方の細い肩に世界が透け
遠い闇に消えた優しさを追う瞳には涙が溢れるが
涙を拭うはずのハンカチは薄汚れたままに
貴方の手に握りしめられたままだ

闇の記憶にしがみついたままの手は瘧に悴み
その細い指が伸びることはなく
貴方と指を結び付ける赤い血の流れは絶え往き
ひび割れた、その頬は暖かな風にすら泣いている

何処へも行けない哀しみだけが時を刻み
どこまでも空の闇が暗く笑うが
貴方を抱く腕の力は増すばかりで
全てとの溶け合いだけを見つめていた

雲のように濃い霧が通り過ぎ
山の斜面全てが濡れそぼる中
一つだけ乾き切ったままの岩に咲く花が
それでも静かに風を受けながら
柔らかな陽の兆しに揺れていた
2012-05-31 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

貴方に抱かれた記憶だけが響く街を歩くと
誰一人、歩くことのない舗道が続き
色付いた街路樹が、過ぎる風を包み込んでいた

夜のネオンが眠らないように
私達の時も眠らないままだったが
貴方の吐息と私の律動の交わりは夜を示し
まどろみの中に消えて往くのだった

二人の長いはずの時間さえ
結局は時計の中に収まることを知り
私達は黙って枕に沈み込んだが
貴方の寝息だけが響く部屋は優しく
愉悦の余韻を漂わせる

始まりとの時は、いつも知られることがないが
終わりの時だけは記憶されるように
二人は別の夢の中で遭い、明日の朝陽の中に起き
少し照れたままに短くなりゆく影を追うだろう
2012-05-30 10:02 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

岬を巡る孤独の中で

細長く伸びる不条理な波打ち際を
貴方にしか聞こえない波音を頼りに
遠く岬まで、一人歩こう

太陽の姿が広がった波面には
眩く光を放つ海があり
遠ざかる船は光に沈んで往く

山風が海風へと変わる時間には
高く岬を巡っていたトンビが一度だけ羽ばたき
失った寝床を想いながら、山と山の間に消える

砂を踏む音は乾き切って海に響くが
貴方の元へ届くことはなく
ただ消える足跡だけが私の歩みだった

降り立った浜に散っていたゴミ達は
誰にも何処からのものとは分からないままで
ただ往くべき時を待っているが

誰も差し延べる手を持たないことを知り
誰にも届かない言葉がそうであるように
ただ沈黙の中に集積していくだけだった
2012-05-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

昨日という哀しみに吹く風は凪いで
砂浜に残る足跡は波に耐えるが
遠い水平線は、遠いままに光っている

波打ち際を歩けば辿り着くはずの岬は空に浮き
風に煽られた木々達がざわめいているが
その声の届くことはないままに涙は去り
雲間からは明るい陽が一筋、降り来たっては海を照らす

昨日と明日の間に留まる時はなく
今日は静かに流れ続け
優しい風に向かって記憶は色付き
哀しみに染まらぬ涙が一筋、頬を伝うままに
記憶に沈んでいた懐かしい歌を歌い始めよう
2012-05-29 00:37 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風の吹き続ける街景色

貴方のいない街を経巡った風が
そのまま地の果てに吹き消えたように
私の想いだけが世界を経巡っては
二度と会うことのない景色を駆け抜ける

別れることだけが出会うことだと
貴方の言った嘘が真実だと知るのには
どれだけの時が流れるのだろうか

独りで往く街の嘆きだけが響き渡り
刻まれることのない時を歩くと
優しさの落していった哀しみだけが散る

景色を失った写真だけが真実を語るように
優しさを失った心だけが愛を語り続け
私と貴方の間を永遠に埋め続けてきたが

貴方のいなくなった時にだけ吹く風が
私の前を通り過ぎ続けている
2012-05-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

二つである事を忘れて君を失う

更新し忘れられた契約書の入った封筒が
永遠に開封されることのないように
優しさを封印した笑顔は零れることがない

遠い陽射しの中を進む日傘が揺れ
反射した光に目を閉じた後には
早足の雨が静かに通り過ぎるだけで
濡れないままの首筋を、君の唇がなぞった

向ける先のない視線が眠りに就くように
君は幻影の優しさを愛し
無邪気な哀しみを私に放つ

低い稜線を行く車窓から海の波が見え
二人は一瞬の言葉を交わし
あれから私は、君を永遠に記憶した

何度も書き直した手紙だけが二人であるように
投函されることのない手紙を手に
今日も私は、夕陽の元に立つのだろう
2012-05-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

所有権の忘れた景色

吹くことを忘れた風の音が月に響き続け
星々は凍えて震え

太陽のない空が消えて蘇った記憶は水面に散り
光は止まったままに輝きだけが留まり
時は静けさの中に沈み込む

あらゆる所有物を放棄させられたままの人々は
互いに与えるものなく奪うことすら忘れたままに
何も映さない、その瞳には過去が宿ったが
昨日の微笑みだけは戻ることがなかった

坂道を上ることのないバスが一台
下ることも止まることも許されないままに
ドライバーの操作を待ち続けていたが
運転席は空席のままにドアの開くこともなく
通り過ぎるばかりの足音だけを聴いていた

優しさを抱いた胸が全て
子供達には閉ざされているように
開いたままのドアだけが
音もなく開閉し続けているだけだった
2012-05-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

私達の物語という神話

消え続けていく定めしか持たぬ物語達を
互いに知らぬ者同士が、それと知らずに共有し
黙って紡ぐだけで去っていく街があり
そこだけに吹き続ける風の優しさがある

記憶すらされない物語達は消えるが
新たな物語達は力強く芽生え
その柔らかな双葉を目指して照る陽があり
私達が交わる一瞬がある

偽りの波は常に止むことがないが
波音は自らの消える果てで真実の光を浴び
偽りの彼方を見て微笑みを知るだろう

君の残す記憶の一つ一つは虚構でしかなく
拾い集める私は疲弊していくばかりだが
疲弊した身体からは、きっと物語が生まれるだろう

言葉一つすら残すことなく全てを覆う闇は
私達の物語に言葉なぞ必要のないことすら知らず
私達の物語は紡ぎ続けられていくのだ
2012-05-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

交わらないからこそ美しく

月のない月夜に、実は月があるように
優しさのない君には愛があり
愛のない君には優しさがあった

星のない聖夜に、実は星があるように
哀しみのない過去には涙があり
涙のない過去には哀しみがあった

陽のない世界に、実は陽があるように
君のいない世界に私はいて
私のいない世界に、実は君がいた

決して交わる事のない二つには
その間に舞う無数の手紙があり
手紙には決して描かれない言葉があった

すれ違う言葉に存在価値がないように
太陽と月は互いの存在を認めないまま
ただ勝手に、地球から眺められていた
2012-05-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

全ての人が夕暮れを待つように

見上げる人々は同じ月を見ているが
月の放つ光は全てが異なるように
人々は、同じ道を違う道として歩き
それでも風の優しさに追い付くことはない

沈黙だけが真実を語り続けている傍らで
互いに交わす言葉は止むことなく
虚無に放たれた器を満たすこともない

遠くで吹く風が回す風車は緩慢で
羽の回る数をカウントすることは容易だが
誰もその数を知ることはなく
ただ、その時だけの風が吹き抜けるだけだった

硝子越しに届く陽の光が
テーブルさえ照らして跳ね散り
部屋を満たして天井すら輝くが
誰も、その光を見ることはなく
静かな午後が過ぎていく

回らない回転を止めて
風車は何処へ行くのだろうかと
その問いだけが通り過ぎる畦道で
夏待つ何匹かの蛙の鳴き声が響き
夕陽を浴びた雨が、静かに降り始める
2012-05-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

遠くへ行けば行くほどに近付く君を追い
辿り着いた岬に吹く風は風車すら回せぬが
君の背を流れる汗はシャツを貼り付け
柔らかな背の肉を浮かびあがらせている

弾む息に肩は止まることはないが
君の微笑みもまた、止む事なく遠くを見つめていた

涙を流し終えるまで待ってと言った君は
いつ、振り返るのだろうかと想い
足元に広がるクローバーを摘んでは陽の中に放り
青い空の雲が瞳を打つままに任せている

問うことなく答える君の声が懐かしく
冷たい風を遮る透明なガラス窓の中で
明けることのない夜を過ごしたことが想い出され
窓を開けてしまったことを忘れ去ってしまう

きっと、大したことじゃない
君はそう言って、目を閉じたままに振り返り
少し拗ねた唇を私に預けるのだった
2012-05-23 04:25 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

書棚を見失い、記憶を封じた街

色を失った街が陽光を浴びると
歩く人のない舗道は埃を被り
宛先を失った言葉達は風に舞った

車の窓を流れる景色は停まり
街の偽りだけを見つめていたが
透過する視線の先に季節はなく
やはり同じ景色を巡るだけだった

貴方の想い出が散った公園には
遊ぶ子供もないままに、まばらに草が生え
錆付いた鉄棒の影だけが貼り付いている

街という街を渡る風は静かで
微かな記憶を漂わせるが
鼻腔の奥に閉じ込められた光は
ついに見ることが出来ないままで
静かな涙が流れ続けている

躓いたはずの石は蹴り飛び
もはや視野の範囲にないが
痛む足先に少し、優しさを感じ
ふと想い出したのは
読むはずだった一冊の本だったが
書棚はもう、ないのだ
2012-05-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

一緒に流したはずの涙を忘れ
君と私は反対方向へと歩き出したが
この地面が球体で出来ているのならば
私達は、やはり出遭えるのだろうか

三次元では交わる線も
四次元では交わるとは限らないように
私達は三次元では交われずとも
二次元でなら交われるだろうか

言葉は常に次元を超越し
追い縋る私達を振り落して去っていくが
涙と偽りとだけは持ち去られ
哀しみだけが取り残される

涙を伴わない真実だけで出来た哀しみは
やはり言葉となって君へと向かったが
君に届く前に舞い戻り
微かな光を残して消えてしまった

振り返る遥か遠くにすら
もう君の後姿は見えず
その足音の遠ざかる響きだけが
微かに聞こえた気がしただけだった
2012-05-22 03:47 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

頬打つ哀しみを君と知る

直ぐそこに見えていたはずだのに
大河は水涸れ、橋もなく
舗装された道路が交わり
三叉路となって目前に開いていた

川面に映る月も消え
街灯の点滅は途絶えがちで
大地に立つ感覚すら危ういままに
私達は縋り合うことすら出来ず
支え合う人々はすり抜け合って
互いの不在を知る

哀しみが強く頬打ち
優しさの名残を残していくが
幾度、頬を打たれても痛みは消え
消える度に頬を打たれ
ただ哀しみだけを知る

暗闇が光を必要とはしていないように
私達の間には、実は絆など不要で
そこには絶対の虚空だけがあれば良かった

ただ君の残した想い出がほの浮かび
哀しみではない哀しみが頬を打つと
一筋の涙に変わって静寂を迎え入れ
私は選択の時を決意するのだ
2012-05-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

君を忘れた今日の灯を

涙の涸れた季節を吹く風が
壊れたままに、進まぬ秒針の音だけ
繰り返し刻む時計に忍び込み
優しさの面影を拾い集めて吹き終える

成層圏を突き抜けられぬ哀しみは
海に降り、山に降り、乾き切った砂漠にも降るが
どこを満たすこともなく降り止まないままだ

蜃気楼には優しい想い出も浮かんだが
遠ざかる距離だけが規定され
君の輪郭すら陽炎に消えてしまうだけだった

どこにも行かないことだけが
どこへも行ける自由であるように
君を忘れることだけが
君と会う、たった一つの方法だった

止まった時の優しさが
ただ、そっと私達の横を過ぎ
明日と昨日を繋いでいる
2012-05-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

光らない星空

街灯の照らす街路樹は黙り
星の増しゆく空を眺めているが
幅が一定の人気ない街路は
役目を失ったままに明日を待つ

倒れそうなティー・ポットと
立ち上る湯気は偽りを映し
とっくに暮れたはずの夕暮れは
その記憶を何処に置くのだろう

走り抜ける車の存在だけが
街の全てという街中で
哀しみを忘れた虚構が漂い
優しさの欠片達は空に散り
その紺碧の一部と貸したままだ

星の光を待ち侘びたのに
雲がかった夜空は月光に満ち
雲上だけに天空は響く

過去の記憶にだけ存在する真実は
イミテーションの花のように鮮やかで
変わる事のないままに永遠に失われ
私達の全てが苦笑いする
2012-05-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

光を失った太陽が真白な空を渡り
月だけが煌々と輝き、夜を待つ

君が渡った橋は朽ち
足跡は絶えたままで
私達を繋ぐものを何処に求めよう

ざわめきを覚えた森の奥深く
道筋すら知らぬままに立ち入り
微かな君の温もりだけが手に残る

踏む毎に涸れる小川は泉へと誘うが
君の面影をも失うだけで
私の足は踏み留まってしまう

やがて木々の間から覗いた月は
ただ独りで空を駆け
青い光跡を一筋、残していった
2012-05-19 10:19 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

絶対不変領域の日常は過ぎ

凍結した朝を降る雨が
行く先を失って中空に漂い
立ち止まったままの太陽は沈黙し
どこにも行けない陽光が頬を打つ

記憶を持たない風景は車窓を流れ
誰も聞かない汽笛が鳴り続けたが
雲影に覆われた線路の鈍い光だけが
地と雲との間に響くだけだった

優しさの通り過ぎた跡には
哀しみの雫が淡く光り続け
路踏む人達は俯いたままに歩き
あらがえない定めに遇った

座ったままに夕雲を見つめる犬が
たった一匹の遠吠えを少し試みたが
誰も答えることはなく
更ける事のない夜は忘れ去られた
2012-05-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ただ降る雪の一雪景

留め得ぬ希望の哀しみに
どこまでも降る雪は白く儚く
仄かな温もりに融け続け
やがて海の一滴へと変わる

無限に裏切られる真実達は
夜を忘れた渇きに晒され
カラカラカラと干乾びて
嘲笑の中に偽りと化す

あちらこちらで流れる涙は
夜風吹かれて凍り付き
冷たい星の光を拾い
更に融けない闇へと変わる

だからきっと泣くでしょう
笑うかのように泣くでしょう
虚しさだけが真実だから
だからきっと泣くでしょう

怯えて開けた宝箱
「何も無い」という宝物
忘れ去られた優しさだけが
箱の中を見るのでしょう
2012-05-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

遠くでヒビの入った空の下

窓を青く切り裂いた月光が
水面に散り、星を生む夜
恋人達は異なる真実を胸に愛を語る

地球の裏は陽に照らされて明るく
陽気な歌が流れ人々は踊るが
成層圏を抜けた空の奥は暗いままで
私達は地上時間をアテにして

ほんの少しのすれ違いに沈黙を守り
いくらノックしても開かないドアは
哀しみの冷たさに沈んで行くが
叩く手に滲んだ血だけが痕を残す

静かに回る換気扇からは
いつもと変わらぬ匂いが流れ出し
何もが昨日と同じで
何もかもが今までと変わり

夜が終われば陽は昇るが
二人の間には永遠の夜が訪れ
明けることのない夜だけが更けていく
2012-05-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

瞳を失った街角

気付いている哀しみの影すら忘れる程に
二人の時間の優しい暖かさに包み込まれ
そして私は君を、あの陽光の中に置いてきてしまった

遥か遠い記憶の全てが哀しみに変わり
私の全てを満たしていくけれど
哀しみの中に浮かぶ君は
やはり、あの頃の微笑みを湛えたままで

唯、ひたすらに真っ直ぐだった君の瞳の先に
私がいた事を何故かと詮無く問い続ける

君の住む街へと向かう線路が
今も電車を運び続けているように
この想いも届きはしないだろうか

偽りに満ちた街角だけが残されて
君の欠片すら見出すことは出来ないはずだのに
私は幾度も街角を曲がってしまう

どれだけ傷付こうとも怯まない
君の瞳を求めてしまうから
いつも見ていたはずの、あの強くて優しい君の瞳が
今、こんなにも恋しい
2012-05-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

降り止んだ雨の匂いが残る中を
君の優しさだけが通り過ぎ
ほんの微かに希望という道標を示す

あの日の世界は凍り付いたままに
雨に打たれ続けて
どこもかしこもが泥沼だらけだ

言葉の虚構が溢れる中で人は出遭い
真実を知ることもなく別れ
冷たい光に縋って足を縺れさせて
生まれ落ちた時を忘れたままでいる

陽の光に晒されて寒さに凍えるように
枯れた一葉は音もなく地に触れ
樹の根が吸い上げる水音の中に消えてゆく

静謐さの中に佇む君の後姿は
その遠さによって私を包み込むので
私は唯、ここに立ち尽くそう

大きな波音が固体化した空気を弾き
その全てが私の全てを壊し尽くすまで
結局、岬に風が吹くことはないだろうから
2012-05-15 14:51 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

開かれた扉からは出られない

昨日の真実は今日の偽りへと
今日の偽りは明日の真実へと
至極、簡単に入れ替わる世界に
虚しい南風は常に優しく吹き渡る

検証しようのない仮説だけが
世界の骨格を辛うじて保ち
その儚い骨格に縋る人々が身を成し
世界は今にも壊れそうなままに
形を規定しない輪郭に収まっている

放たれた言葉達が常に世界を解体し続け
自らの足場を失っては浮遊し
涙の中でシャボンになっては消えるが
自らの命を如何とも出来ず
ただ消えることだけを宿命として
粛々と放たれては消えてゆく

滂沱の涙も流ることなく乾き
ただ透明な哀しみだけが
何も無い空を漂い続けていた
2012-05-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

気付かぬうちに夜を迎え

空き地に捨てられたブリキ板は
赤く染まった夕空を鈍く映し
通り過ぎる風を涙色に染めていた

地平線を突き抜けていた白雲は
押し寄せた黒雲に急かされて
わずかな夕陽を瞳に見ただけだった

やがて近くまで来るだろう雷鳴は遠いが
時折、周囲が照らされる中
静かに昼と夜は入れ替わろうとしている

一陣の風を合図に雨は降り
アスファルトの臭いの鼻を衝く時
遠い空の雲が裂けた隙間から
いくつかの星が顔を出し
いつもと変わらぬ優しさで
眼下に天空の歌を囁き始めた
2012-05-14 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

この地球の自転が止まれば

背を向けていた地平線を振り返ると
やはり近付けば近付くほど遠ざかるそこに
淡い優しさで光る星には手が届かない

ようやく立っているだけの足を進めれば
地平線も星も近付くだけ遠ざかり
やがて追い切れないだろう水平線が見え
希望の絶えた砂浜に、足跡は海へと続く

全ての記憶を海へと放れるならば
この哀しみも絶えてくれるのだろうか
それとも記憶は哀しみだけを

偽りだけが世界の全てであったなら
どれだけ強くなれただろうか

信じたい気持は涙に変わり続け
世界の一つに混じっていくのだろうが
この哀しみも偽りであったなら
明日は風が吹くのだろうか

ふと水平線を遠望すれば
あの星の面影だけが微かに残り
静かな波音が全てを満たし
ぼやけた真実は永遠の揺らぎに身を任す

今朝のことすらもう
あまりに遥か、遠過ぎて
もはや想い出すことすら出来はしない
2012-05-13 19:39 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風が吹くなら星は一つだけで良い

別れの風は常に両方から吹いて来て
私達の立つ場所で合わさり心の中で啼く

向こう岸のない橋を歩き
君の待つ岸辺を目指すが
川は言葉の成す水平線に流れては
無限鉛直下に降り続けている

遠く、線路の響きが止まない街空は
薄雲に覆われたままに黙り込み
寂しさに追われる人々を足止めする

鳴る事のなくなった電話にも
無意味なはずの受話器が残されているように
私達は互いに言葉を交わし合う

いつの日か、どこかしらで聞いたはずの
あの優しい響きは、とっくに消えたが
北の夜空には一つだけ
いつもの星が瞬いていた
2012-05-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

曲り角の向こうには

幾度、過ぎても風景の変わらない曲り角を
いくつも経て尚、目の前を風は過ぎ
優しさの在り処へ向けて吹き続ける

そうして追い求めてきた全てが
実は、どうでもいいことだと気付いた時
身体の輪郭は消え、心は凍り

流れることを忘れた涙が頬に張り付き
変わらないままに変わり続けていただろう
雲向こうの空を仰ぎ見て

消え続ける言葉の虚構と優しさという嘘
全ての世界の中に存在しない月明かりは
薄く、儚く消えゆこうとする真実を照らすが
直ぐに雲は月を隠し、道は消え

人気のない駅舎に降り注ぐ陽は強いが
誰のものでもない影が
薄汚れたホームに、ただ哀しみを映している
2012-05-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

光の涙を見たことがない

どうでも良い言葉を並べた哀しさに
薄汚れたコートが風を切る

たった一つの言葉だけだのに
全ては川面の小波に反射する光のようで
ただ虚しく光の面影だけを残して消える

反芻し続けたはずの貴方の声は遠く
もう、私の耳には届くことはないだろう

新たな光は絶えることがないが
永遠の中に消えた光は戻ることなく
常に忘却の彼方に飛び往きて戻らず

乾いた唇は開くことすら出来ず
声にならない言葉を秘めたまま
一滴の涙に寄り縋るのだ
2012-05-11 00:20 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

視界を抜けて、光る

真実という愛と、嘘という愛が
走り抜け、行き交う交差点は
どこまでも透明な闇の中に沈み込む

点滅する信号が置き忘れ去られ
サヨナラの言葉だけが足早に駆け
やさしさは光速で遠ざかる

不誠実な囁きは陽の光に溶け
誠実さは虚無という無限に彷徨い
虚ろな涙が頬を伝い続けたが

揺れる炎は、やがて小さく蒼く
涙に結晶して古びた机の上にポトリと落ち
伸ばそうとする手を強く拒絶する

花咲き乱れる外への扉が開かれたまま
誰一人、出ることを許さぬように
目の前に開かれた視界は
ただ遠ざかってゆくだけだった
2012-05-10 11:11 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

理解し合う記憶の過去

貴方の放った言葉だけを抱いて
凪いだ風の中を往きつ戻りつ
明日の記憶を求める歩みは哀しみに満ちている

優しさを求めた指先は透いて
星の砂光が虚しく通り過ぎてゆくが
愛した涙だけが満ちてゆく

昨日を攫った風が空に消え
一雨で大地を流し去った雲は笑う

優しい哀しみを祈る歌が天蓋に響く時
地を這う我らの瞳には何が映るのだろう

互いの心を見透かした同士が
泣きながら傷付け合う魂の声は遠く
鉄鎧をまとった真実は沈黙する

いつか、遠い雲の切れ端に
貴方の微笑みが戻るように
天と地の間に私は立ち続けよう
2012-05-10 00:11 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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