始まらない夜の終わり

冷たく降り注ぐ星明りが
地に触れる前に砕け、夜を呼び始め
大したことのない詩の一節が
ただ想い出せないばかりに心から離れず
涸れ尽きた涙は語り出す

始まる前に終わってしまう物語の哀しみを
小川のせせらぎも繰り返し
風の中に消えた始まりが、どこかで終わる

寄る辺なく詮無い愛を
乾いた優しさが、そっと突き放し
始まらない夜を歌う星達が
ただ淡く消え光りながら空を駆け
月は昇るべき道を見失う

激しさに包まれたまま置き去りにされ
その偽りだけを信じたままに
燃え尽きることが出来たなら
貴方のことを忘れることも出来ように

会う時に二つに切り裂かれた夜は
それぞれの時間を超えてゆき
ただ燻ぶるだけの全てで満たされたまま
冷え切った朝陽に切り裂かれて終わるのだ
2012-09-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

炎舞い

贖罪の降り止まぬ雪原、遥かに
静かに涙は凍て付いてゆき
ただ独りになり果てる人達の足跡が
点々と刻まれては消え行きつつ刻まれ
止む時の鐘が響くことはなく
世界の終点で黙ったままに
その時を待っている

一つの夏の終わりが幾度も訪れ
そして過ぎ往き戻ることのないままに
ゆっくりと秋を跨がず冬へと向かい
夏空から粉雪が舞うのを知らぬまま
ゆっくりと炎は雪に舞う

燃える哀しみが火種を求め
世界中の誰をも逃すことなく
捕らえては離さずに
私達は無意味な哀しみに消え
やがて風となることが出来るのだろうか

冷たさが優しさに変わる雪原、遥かに
私達の止まぬ涙は凍て付き続け
どれだけの厚さに至ろうとも
ただただ雪原には粉雪が
降り止むことを捨てて炎と共に舞う
2012-09-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

本当の優しさを、下さい

前に進むでなく
後ろに下るでもないままに
ただ几帳面な正確さで靴音が響き
徘徊する夜を支配してゆく

頬伝う涙を星明りに変えながら
夜は世界を覆い、そして世界から剥ぎ取られ
行く宛をわがものにすることはない

それでも夜は訪れるのだ
望みもしないままに私達を切り裂いて
僅かな隙間さえ見逃すことなく
夜は私達に訪れるのだ

だから優しく囁かないでと
願わずにはいられない
その切り裂かれた時を過ごす術を
私は終に知ることが出来ないのだから

それでも響く偽りの優しい声が
私から一瞬の夢さえ奪い去り
訪れるはずの夜さえも奪う

私が夢見てしまうもの
その夢の欠片の一片も残すことなく
冷徹な残酷さで奪って欲しい

二度と夢見ることのない夜を迎え
独り切りの眠りに落ちる迄に
夢見てしまった全てを剥ぎ取ってはくれまいか

その偽りを全て残酷さに変えて
もう二度と夢のない眠りの中に
私の全てを投じてはくれまいか

ほんの一欠片だけが残る限りは
靴音の響きが止むことはなく
私は忘れ得ないことの中に留まり
永遠に眠れない夢を見続けてしまうから
2012-09-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

二度だけの出遭い

忘れられた出遭いだけが波音となり
過去の哀しみが波となって
私達は交わらない時を駆け抜ける

壊れることに留まった携帯電話を買うと
通話ボタンも押せないままで
誰からとも分からぬ着信音だけが鳴り続け
波音を掻き消してしまう

貴方のいないはずの街だから
その影を追い求め続けては
忘れてしまった面影も通り過ぎ
私は独り、海岸線へと向かう

乾いた砂が海面に変わるまで
海岸線は海に向かって伸び続け
その果てに過去を置いて、時は去り
波は海岸線を追い越すことが出来ない

静かな夕暮れを待ち侘びたが
厚い雲が光に燃えながら雷鳴を轟かせ
激しい驟雨に打たれながら
遠くで暮れる夕暮れは忘却を連れ去った

そして、もう一度だけ訪れた出遭いには
前にはなかった哀しみを寄り添わせ
私の愛した波音と波に変え
もう一度だけ、改めて捨てるのだ
2012-09-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

そして君は、黙り込む

君の優しさが無言に変わり
二人の間に満ちる時
僕は意味のないお喋りをしてしまう

君の想い遣りが無言に変わり
二人の間に満ちる時
僕は自分の情けなさを笑い誤魔化してしまう

本当のことって何だろうね
僕は君に問い、君も僕に問う
そして二人は答えのない問いを前に
ただ肩を並べるしかなく
はにかんで困った微笑みだけで
時の隙間を埋めてゆく

僕が言葉の虚しさに染まりそうになると
君は少しだけ話してくれる
訥々と選びに選んだ言葉達は優しく美しく
哀しみと隣り合わせの僕の虚しさを運び去る

それでも僕の哀しみは止まらないことがある
君のいない時間を、どう過ごそう
君といる時間を、どう過ごそう
哀しみと楽しさと嬉しさ達が交錯しながら
僕の目の前を通り過ぎ
やはり君の笑顔を見たいと、そう想う
2012-09-26 21:23 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

別れは出遭いの前に訪れる

視界を占有したままに
何処にも繋がらない道が伸び
その先に貴方は立つ

影を持てぬ悲嘆が遠くで響くと
疲れ切った脚下には
足跡の一つもないことに始めて気付き
ただ拡散する光の中に哀しみを見た

涙に残された微かな記憶だけが
唯ひたすらに伸びる道を横切り
私達の持ち得なかった残影を重ね
出遭う前の別れを告げる

追い縋ろうとする欲求だけが
私達を支配して離さず
何処にも行けず、誰とも出遭えぬ
ただの道を歩かしめるが
その疲れた一歩に安らぎは宿った

世界は錯視の中でこそ正しく
私達は出遭うことのない別れの中で
偽りのない愛を誓うのだった
2012-09-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

胸に掻き抱かれた心音に目覚め
言葉を探す内に遠ざかる温もりは
流すことさえ虚しい涙だけを残し去る

優しい朝は、いつも残酷で
言葉を促しながらも言葉探しからすら全てを奪い去り
言葉にすらならない想いだけを残し
ただ独りきりであることに気付かせるのだ

それでも虚構に縋るように言葉を重ね
時に変えながら過ごすしかない私達には
互いの面影すら、あまりにも遠過ぎ
遠ざかることを知りながらも言葉を重ねてゆく

ただ一言だけがあれば良いはずの
そして本当なら、一言すら要らないはずの
その遠過ぎる距離の間を埋め尽くしたならば
もう一度だけでも眠りに戻ることが出来るだろうか

虚しかろうとも重ねた言葉達が道を風と吹き
新しい季節の匂いを運び続けている中に立ち
残されているかもしれない貴方を、ただボンヤリと探しながら
朝霧に涙を任せ、朝に来る夜を待った
2012-09-25 08:42 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

歩き続ける果てで

街の喧騒と熱が月明かりに凍り
独り歩きながら私は問う
アナタヲ アイシテ イルノダロウカ

波音に消えてゆくだけだのに
川は流れを止めることなく
大海の一滴一滴を満たし続けるが
海岸線は変わらず月を見ている

これという獲物もいない闇空を
一匹のコウモリがヒラヒラと舞い
変える場所を失ったままに疲れゆく

三日月の夜の冷たさは残酷で
切り離された全てを凍らせては砕き
私の足音も響くことがない

それでも私は歩くのだろうか
面影すら見えない背中を探し求め
出遭う誰とていない街中を

川に戻る前の葉上の滴は問う
ダレヲ アイ
その続きを呟けずに雫が消え
三日月は上下を反転させる

海岸線に沿って哀しみは歌となり
私も少しは唱和するのかもしれない
歩き続けるしかない選択の中で
月明かりの一欠片となるまでは
2012-09-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風の悲嘆が止んで凍る

遠ざかる虫の音を草叢に聞き
月路を歩いて影を追い
夜のない闇を彷徨いながら
風の悲嘆に吹かれ続けた

想い出される切っ掛けが
その筆跡だけに託されても
何も書かれていない手紙が封じられ
白紙のままの封筒が投函され
ただ風のままに郵便ポストが満ちてゆく

声を運ばぬ風しか吹かぬ街で
涙を運ばぬ雨しか降らぬ街で
風景だけは風景として非情に変わり続け
時の通過を告げている

時から解放された哀しみ達は
風景に並ぶ、ただの一コマとなり
哀しみに倣う全ても又
風景化して沈黙に眺望される

だから風の悲嘆は闇に隠され
風景を避けて吹き続けてはいたが
月路の風雨に晒された犬達が
その匂いを追っては街を駆け廻り見つけ
終には一緒に風景とした

手紙には何も書かず、白紙の封筒に封じ
ただ風に任せたままだというのに
月路の沈黙は、あまりに深く
全てを抉って夜に招き入れるのだ
風の悲嘆が吹く闇すらも、その夜に
2012-09-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

愛を語らない夕暮れ、その後

熱という熱を奪われ尽くした炎が揺れ
二人で過ごした時間が冷めてゆく夜
遠い海鳴りに貴方との出遭いを求めた

過ぎ去った一瞬を語り尽くすために
同じ時を再び、三度と過ごしたが
その、どこにも二人は見出せず
ただ肩を並べて歩くだけの影が重なり
傾き続ける陽に向かって坂を下るだけだった

遠くの雲が一際、光を増し
直ぐに沈鬱な暗さに沈んで夕暮れを告げ
夕陽のない夕暮れだけが過ぎてゆく

帰る部屋はいくつもあるというのに
私達は同じ部屋に戻っては
あらゆる熱に拒絶された炎に照らさせては
ベッドの上で絡み合うのだった

悦楽にすら置き換えられないままに
二人の関係は行方を失い
照らす炎だけが熱を求めて揺れていた
2012-09-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

テレビショッピングを見る午後

いつも沈黙で尽きる貴方との時間
週刊誌が、いつも週遅れで届いて手に取ると
知っていることを知らぬこととするように告げられ
知らぬことを知っていることのように語り始めた

ショッピング情報しか流れていないテレビを点け
黙って見続ける貴方の背中を汗が伝い
語り合うことへの恐怖が支配する部屋を
壊れたエアコンの音が駆け抜ける

いくら問い掛けても答えの出ない
二人が同じソファを使っていることの理由が
知っていることのように語ることで
貴方の涙ぐんでいる理由が
知らぬこととすることだった

時の支配する魔術の中で浮かぶ未来と
センチメンタリズムに満ちた過去と
エアコンの音に満ち、支配されが今と

私達は、どこに二人の居場所を求め
どうやって過ごせばいいのだろうかと想う間にも
テレビでは次のショッピング情報が流れ
使うはずもないダイエット器具の話を
貴方は独り言のように語り始めたのだった
2012-09-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

名もない眠り

眠れば忘れる
眠れば想い出せない

夢が現と見えたとしても夢現
現が夢の夢現

名もないままに遠く見る
遠ければこその夢現

だから僕は眠りに就く
名もない眠りに独り就く
2012-09-21 15:53 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

陽炎の中で雷鳴は響く

逃げる陽炎の中に貴方を置いて
その影を追いながら歩いた

繋いだ手と手を離さぬように
強く指を組んだ二人が過ぎると
陽炎はかすれ、私を遠ざける

貴方の温もりを忘れ掛けた手が
宛を失って宙を彷徨いながら
独りきりの歩みを、それでも導いている

強い日差しの中、遠くで響く雷鳴は
二人に降ったにわか雨を忘れさせ
記憶されるはずだった声を消し去った

読み掛けの詩と書き掛けの詩は
不信だけが支配する二人の間で出遭い
逃げる陽炎の中に、逃げては消えた

紡がれた哀しさに支配されずに
紡がれなかった愛を忘れ
ただ、独りきりで本当に歩いたら
読み掛けの詩を読み終えてから
書き掛けの詩を書き終えよう

それでも降り始めた雨に道が煙ると
貴方を置いた陽炎が消え
傘のない私は近くの軒に身を寄せて
雨音の中に何かを求めてしまうのだった
2012-09-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雨は二度、降るだろうか

夏の始まりを曲り角に置いたように
恋の終わりをベッドの上に置き
そのまま私達は全てを後にする

記憶されるべきことは起きず
のこされるべきものも見当たらず
ただ何もない時間が過ぎて私達は気付く

転寝のままに寝込んでしまい
暑苦しくて起きてしまった夕暮れには
乾いたアスファルトから雨の匂いが立ち上り
常緑樹の葉には微かな光となって
雨の雫が残っていると言えば残っている

次の雲が遠い山から流れて来て
濁った川水の中を幾尾もの鯉が蠢き
もう一度、確かに雨を降らそうとする

夕暮れは雨を待たずに去り
私達は厚雲の向こうに夕陽を見詰めながら
並べる肩のないことに気付き
ようやく過去と知ることが出来るだけだった
2012-09-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

手は漂いながら

目を閉じなければ見えない君を
耳を澄まして、ジッと見つめる

クリック音がカツカツと響き
カシャカシャと鳴りながら
キー・ボードは打たれているのだろうか

息遣いすら聞こえてくるようで
君の体温すら伝わってくるようで
それでも君はいないんだと気付き
僕は窓から射す月光すら疑ってしまう

何もない君を前に、空を漂う手を持て余し
何一つ見えないままの君を追い
ただ吹く風となれたなら
目を閉じず、耳を澄ませずにいられるだろうか

目の前で褪せ続ける今を越え
夜は静かに訪れて
遠い朝に向かって流れ始める
2012-09-19 18:17 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

囲まれることのない食卓で

雲一つない蒼天から雨雫が零れると
疲れた太陽が傾いて夕暮れと三日月を呼び
くすみ始めた空に、それでも残光が煌き
私達を吹かない風が吹き抜ける

雲のないままに雨が降るように
雨のないままに風が吹き
風のないままに時が過ぎ
時のないままに私達は別れてゆく

別れ続けるだけの私達の間には
決して吹くことのない風が吹き抜け続け
時の待つことがない恋が通り過ぎては
何もない草原に立ち尽くすのだ

膝が濡れたと錯覚する強さで雨が降り
振り払うことが出来ない雫が足に纏い付くが
そんな風に気付かないままに痛みとなって
私達の恋は始まり、そして終わったのだった

見上げた空からは雲のない雨が降り
遠くでは雲のない雷鳴が轟き
貴方のいないままの夜の始まりを告げて
私は独りの食卓に並べるべきものを考えては
想い付く事もなく街に出た
2012-09-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

哀しみの氷穴

百億光年、閉ざされてきた氷穴では
星にも忘れられたまま凍り
ただ独り光り続けてきた哀しみに出遭う

波打つページだけの本は読めず
書き手の息遣いも絶えたまま
落ち着ける書棚だけを探し求めている

粉雪に紛れて散り降り続ける紙片は
いるはずのない書き手を求め
雪地に降っては雪に紛れ
手に降っては仄かな温かさにすら溶け
降り続ける永遠から逃れられない

書き記す言葉がないのか
書き記す哀しみがないのか
それとも書き記す愛がないのか
紙片は黙って降り、溶け続ける

時折、空往く彗星は遠くの哀しみを光るが
その光を見た者はいたのだろうか

閉ざされたままの氷穴で
別の哀しみが独り、光を放っている
2012-09-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

淡透

淡くなれ
いっそ透き通れ

どうせ出口の見つからない迷宮ならば
もう何も探したくもない
もう何者でもありたくもない

だから、淡くなれ
いっそ透き通れ

想う君は影すらなく
想う僕も影すらない

だのに閉じ込められるなら
淡くなれ
いっそ透き通れ

何もなくて良いから
何にもならなくても良いから
ただただ透き通った何もない
何でもない僕ならば

迷宮に閉じ込められたまま
きっと、それでいなくなれる
何もなかったままになれる

だから、淡くなれ
いっそ、透き通れ
2012-09-17 13:19 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雪の僕となり

終わりしかない始まりの中で
結んでしまった、この指を
僕は解くことが出来るのだろうか

痛みにさえ変わってゆく君の体温が
微かに微かに、確実に
僕の全てを満たしてゆく

何処にも行くことが出来ないままに
肩を並べているだけで良かった
あの頃が懐かしい

粉雪が舞うよりも、ゆっくりと
月の光が僕の痛みに降り注ぎ
流せない涙すらが、ただ虚しく流れている

哀しみすら凍て付く冬を待ち
僕は解けない雪となろう
ただ静かに降るだけの、雪となろう
2012-09-17 11:15 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風の絶えた街を歩けば

開け放たれた窓からは風が入って来ない

そんな日には人影の薄い街を歩き
稀には擦れ違う車が、ゆっくりと過ぎ
寂しさに萎れた花に出遭い水遣りをする

もう一度、風の入って来ない窓を閉め
そうして、ようやく風の吹き始める部屋の中に
それでも哀しみは満ちるか

下り坂を転がらないまま
幾年も放置されたボールは球体なのか
子供が戯れに軽く蹴るだけで
人気のない草叢に消えてしまった

部屋という部屋から漏れるだるさ
風の絶えた街は、哀しむには疲れ過ぎていて
誰もが蹴躓くことすらない速さ以下で過ぎ
だのに互いの顔を見ることもない

温かな優しさの対極は冷たさではなく
街に満ちた、このだるさで
私達は哀しむことなく疲れ切った夜を待つ
2012-09-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

吹くことさえ忘れられた程の
弱い風にさえ舞い散る紙片には
書き掛けられたままの詩が残り
擦れた文字達が黙ったままに
私達の肌を切り裂いていた

偽りのままに、真実のままに
語られ綴られた言葉達
その足跡を辿る者がいるのだろうか
待つことなく言葉達が舞う

心は言葉達に包まれて
行く先ないままに静かに眠るのだろうか
静かに揺れる華が月光に一輪
言葉達の行く末を見守り続けている

その傍らを、そっと裾を引き摺って
私達は夢の中を歩き続け
ただ、その一歩だけに全てを見ようと
互いの仄かな体温を頼りにし
空が開くのを心待ちに夢に就いた
2012-09-16 21:13 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

立ち止まられない十字路に

いつもバスが通り過ぎる停留所には
誰も通らない街路樹の哀しみが停まり
乗る人もいないドアを開け
降りる人もいないドアを閉めて走り去ってゆく

消えてゆく涙の嗚咽は風が運び
十字路の旋風となって深い闇を招き
立ち止まれば心を満たすだろうが
誰もが知らぬままに十字路では立ち止まらない

たった五つであろう、選択肢
戻る以上に立ち止まることを人は避け
十字路には人知れぬ闇だけが留まり
ただ光のない世界を求めて住まう

驟雨は暮れる前の空から降り注ぎ
夜が来る前には降り止むが
夕陽に照らされて路面は輝き
十字路の闇は一層に深く光から遠ざかる

夜になれば車のランプも眩く
四方八方からの光も降り注ぐが
車が通り過ぎるたびに闇は深くなりゆき
街路樹の哀しみが静かに走り始める
2012-09-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風吹かず、星煌き

厚い雲に陽が沈み雲の端だけの光となり
去りゆく場所に困った青空は
まだ転寝から覚めぬ星々を抱いて薄く
いっそ風に吹かれた雲に空を任せたくとも
薄い手紙が舞う程の風も吹きはしない

覚えているのは、いつも変わらぬ空で
変わりゆく空は記憶から消え
ただ吹かれた風の強さが空の記憶となった

風の涙を覚えているだろうか
全ての哀しみを託されながらも
ただ吹くことしか出来ない風の涙を

自らの涙を持つことはなく
ただ託された哀しみが変わる涙を吹き
姿のないままに、どこにでも現れ
姿のないままに、いつでも消え

あらゆる自由を手中に収め
あらゆる自由を不自由に変えられ
ただ他者の哀しみを託されるがままに
誰にも知られずに吹き続ける涙を

厚い雲が水平線に掛かったまま
夕暮れに風は吹くことがなく
託すところを失った、いくつかの哀しみに
星は一つづつ煌き始める
2012-09-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

見えない哀しさに

その抱き寄せたい肩にすら
触れることも出来ぬままの手を握り締め
声にならない言葉に喉を引き裂かれ
君を想うままに足場を失ってゆく

持って行く先のない想いだけが満ち
心が虚ろな叫びを上げ続け
ただ進むことのない歩みが空回りしている

それでも月は変わらずに天を駆け
哀しい優しさで、そっと照らしてくれていた
見えないままの僕と君とを
2012-09-14 12:04 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月夜に雲は散りゆくか

眩くなりゆく朧暈
月は愈々、小さく光り
星の唄にも紛れんか

夜の白雲、月明かり
魅かれ寄るだに千に散り
やはり星にも紛れんか

月夜の風が高空に吹き
それでも哀しい祈りを運ぶなら
祈り叶う果てに運ぶなら

いかで哀しみに耐えざらん
祈りが星と光るなら
いかで哀しみに耐えざらん

風の絶えた月夜の雲は
ただただ散るを待つばかり
降る雨あれば泣きようもあろうに
ただただ散るを待つばかり

眩くなりゆく朧暈
月は愈々、小さく光り
風なき空に雲は散らん
2012-09-14 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

足跡の消える前に去れば

強い影に消える足跡が波音に晒されている

西に向けて並ぶ白壁は夕陽に映え染まり
これから水平線を目指す船の離岸が
薄くなってゆく水色の空と一つになり
靄がかった山並からは、やはり紅い月が出て
終わらない祈りを追い昇り始める

背中に抜けてゆくだけの風が吹く視線先で
行き交うだけの人々は歩き出し
時間を忘れたままに夕暮れに沈むホームに向かう

いつも、その駅を過ぎるだけの特急電車
その窓からは好奇の目だけが駅に降り掛かり
見送られることのない溜息も
もう少し、この駅に留まることになる

もう少し早く出るべきだった駅には溜息しか残らず
無邪気な喧騒すら陰鬱に想い出され始めてしまう

波音の合間に少しだけれど
憂鬱を置いて来れたのが、せめてもの救いだが
私は又、街の憂鬱を拾ってしまうのだろう

それでも風景が徐々に走り始めるにつれて
消えてゆく足跡が想い出され
少しだけ優しい眠りに誘ってくれたのだった
2012-09-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

遠いままの月の下で

気持ちを確かめ合うなんてことは
もう、とっくに終わっている

それでも続く語り合いに
互いに保とうとしていたはずの
気持ちと気持ちの距離が保てなくなっていく

何も語らない月が静かに夜空を照らし
その下で僕達は、互いに近過ぎて怖いと言いながら
それでも少しづつ近付いてしまい
近付けない月を一緒に見上げる

微風に揺れるススキを見ながら
激しい矛盾にすら少しも揺れない君の心を横に感じ
偽りさえ恋しい程だのに
僕は遠いままに美しいだけの月に背を向けた
2012-09-12 10:52 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

道でなくなったものを辿れ

道で在るためだけに辿られ続けていたが
辿られることで道ではなくなってゆき
ただ辿られるままに導く先なく開かれ伸びている
それを歩く時に始めて、歩く意味が開かれる

濡れる人のない雨を浴びながら
哀しみ故には決して流れない涙に濡れそぼり
進むことを拒絶した歩みで
忘れられることを拒みながら
果ての果てに追いやられる時間を歩いた

コンクリートの壁に反響し続ける靴音が
遠ざかる程に記憶達と置き換わり
私の過去は靴音の響きだけに変わってゆく

路面と空気の隙間に生れた靴音は
零の間隙を縫って響き抜け
私の記憶を求めて響き続けるのだ
持主のいない、靴音が

道を歩かない者の靴音は響かない
忘れられた道を歩いた時にだけ私達の靴音は
そこが道で在ったことを伝えたくなって反響し続け
忘れ続けるために記憶と置き換わり続け
歩く意味だけが歩き始めるのだ
2012-09-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

永遠の希薄化の中で

足裏だけが濡れる深さで
ただ煩く流れる川を歩きながら
闇に消える夜に探し求めた

希薄さだけが支配する世界で
手に取ってしまった重過ぎる全てと
そららを奪い去ってくれる全て

消えゆくはずの儚さすらが鮮明となり
あらゆる波浪、あらゆる暴風
それらに耐える頑強さだけが条件となった

消えゆくことが出来ないままに
存在しない愛が希薄さで語られ続け
疲れた朝は眠りに就き
光りの絶えた空が開かれて
誰も仰ぐことがない

消えないでいることしか出来ず
ただ希薄になり続けていく全てに
吹くことのない風にすら舞う哀しみが満ち
流されることのない涙が満ち

やはり世界と共に希薄になり続け
全ての存在が希薄になり続け
終わらない寂しさだけは手放さないように
薄れゆく時間と永遠とを見送りながら
私の希薄を鏡に映し見ていた
2012-09-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

九月の風の中で

熱と冷たさが一緒に乗る風を受けながら
触れる形どころか影すらない君の
優しさだけを抱き締めて、僕は哀しまない

始まらない終わりの中で戸惑い
終わらない始まりの中で、もう一度出遭い
始まりと終わりを失ったままの今を
それでも僕達は愛しもう

求める香りは仄かにすら運んでくれぬ
そっけない風が、ただ吹き抜ける
それでも僕は、知らない君の影を想い出し
その微笑みを想い出し、決して哀しまない

九月の風は哀しみを運び続け、僕を吹き
同じ風が君を吹かないように祈り
それでも僕は、哀しまない
2012-09-10 10:50 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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