波音は想い出せない

薄光に燃える夜雲の下で
君の声にだけ抱かれながら
涙の音を想い出そうと
遠い記憶を探りながら涙を流し
重ならない影は異なる光に照らされている

届きようのない波を懐かしむ岬を
吹くことのなかった風の哀しみは通り過ぎ
涙にすら変わりようのない過去は消え
交差し続ける影が過ぎるだけの街は
ぼんやりとした灯りだけを灯し
交わされることのない約束を待ち続けている

想い出されることのない二人が遠ざかり
お互いの面影すら記憶にないままに
ただ求め合う気持ちだけが擦れ違い
冷たい風に晒された熱だけが季節を運んだ

南風に髪は舞うだろうかと髪をかきあげ
貴方は何を待ち続けることが出来るのだろう
薄れた石碑の文字を指でなぞると
ただの優しさだけが伝わってくるが
想い出せないままの二人の時間すら、あまりに懐かしく
それでも波音は想い出せなかった
2012-10-31 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

もう伸ばさないし、もう拡げない

仮託された空を月が渡りながら宣言し
天の川が徐々に流れ始めると
星光の砕ける音が、せせらぎとして響き
夜が少しづつ始まる

ここに届かない光を集めたくて
聴こえない波音を集めたくて
伸ばし拡げた腕も指先も
それでも虚空を掻くばかり

もしも、目前の紙片に書き連ねる言葉達が届いたら
光にも波音にも触れることが出来るだろうかと
想い付くままに書く言葉が虚しくて
やはりクシャクシャに丸めてゴミ箱に放ってしまう

月が空を渡り終え始めている
天の川の流れも滞り始めている
星光の砕ける透明な音だけが微かに聴こえるのに
それでも夜が少しづつ終わってゆく

どこにも届くことがないままに
伸ばし拡げた腕も指先も
今夜も虚しさだけを拾い上げてきては
戻るところを失って
この胸に収めるしかなくなってしまった
2012-10-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

霧中の手紙

吹雪く北海で立ち上る、霧の哀しみとなり
星明りの下を漂いながら哀しみの霧となった

求めても得られぬ月明かりに涙を結び
その頬を伝い流れる哀しみの霧は
光の中の闇を作って独り待つ

窓の隙間から、中々、霧は入ることが出来ず
それでも冷たい硝子に冷やされて
少しづつは大きな粒となり、流れては
積る哀しみの霧は役目を終えるのか
ほんのり暖かいだけの暖炉の熱にすら蒸気となって
も一度、漂い始めるのだろうか

海の哀しみすらが追い越す速さで
霧が窓に当たる音が絶え間なく
夕暮れを忘れたままの眠りを妨げ続け
貴方の背に押し付けた胸の覚えた温もりは
記憶に変わる前に涙になった

冷たい夜に横たわって読む手紙には
溢れんばかりの文字が並んでいるというのに
想い出したいことの一つも書かれてはいないし
ただ少しづつは忍び込んだ霧が湿してゆく中で
凍るためにだけ、溶けてゆくのだった
2012-10-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

壊れる虹

夕暮れ空を亘る虹の壊れる音が
絶え間なく降り注ぐ夢の中で
白い月の薄光を浴びる泥沼に咲く蓮の葉上には
砕けた虹の音が踊っては散り
散っては集まりして空に戻って星となっていた

輪郭を哀しみに変えて歩く人達に星が涙を流し
零れた一粒一粒が空を駆けては水平線に消えるが
彼方の人には届き続けているのだ

静かとは言えない夜の空に
それでも月は昇るのだけれど
位置も定まらぬ星達に戸惑いながら
沈む先を見失うまいと陽の軌道を追っている

朝になれば消える虹は私達の欠けた間を埋めようと
繰り返し壊れては浮かびし
その儚い優しさが私達の記憶出来ない哀しみとなっていた

私達の哀しみは何処にあるや
私達の哀しみは何処より来るや

答えないままに繰り返し浮かぶ夢の虹よ
その壊れる哀しい音を降り止めさせて
もう少しだけでいいから
私達に安らかな眠りを届けてはくれまいか
2012-10-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

季節と風が凍り付き

古い季節と新しい季節が交差する点で
貴方のいないままの風が優しく吹き抜け
哀しみを運ぶ先を探し始める

凍らせた涙を敷き詰めた道は遠く
氷河だけで出来た山へと
氷山だけで出来た海へと

私達を運ぶスピードは
粉雪の舞い落ちるよりも遅く
ただ冷たいだけの時間が静かに近付き
やはり凍り付いた優しさが満ちる

冷たさに満ちた歌が流れる街中で
春の陽だまりが純粋な氷を溶かしながら
優しい時間だけを取り出しては
貴方の流す涙に変え
頬にキスする私の喉を潤した
2012-10-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

知らない季節と知られない季節と

夏に向かう秋で出来たレールと
冬に向かう春で出来たレールとで線路は伸び
拡がっては捩れる歪みの内に
疲弊した夕暮れのような列車は戸惑い
停車するためだけのホームを探している

季節を知らないと言った瞳に月は映ることがなく
何一つ変わることのないせせらぎを枕に
ただ、夢のない眠りを探しながら横たわり
上流よりも下流を見詰め続けていた

削ったばかりの鉛筆で
書くことの出来ない言葉達が枯葉に紛れ落ち
踏み締める足音も飲み込まれては静寂に変わり
哀しみは砕ける波とともに波音に変わり
そして、もう一度だけ待つことを待った

夜のしじまに黙ったままの季節が忍び込み
二人の隙間を徐々に満たしてゆくのだが
季節を知らず、気付くことが出来ず
ただ、黙ったまま見つめ合い続ける瞳だけを保ち
星が天を往く速さで近付き、遠ざかるのだった
2012-10-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題(届かない波)

完結しないままの書籍を手にすると
留まったままの夕暮れに染まり
淡い木洩れ日すらが遠ざかってゆく

木々の厚い葉の隙間からは僅かな陽が漏れ
その光を頼りに小波は揺れていたが
ついには鏡面のように鎮まり
紅いだけの空を映して燃えるのだ

湖畔にある家が一軒、窓は湖しか写さず
やはり紅く燃えたガラスが溶け
原型を失った黒い塊となって湖に落ち
その時、反対岸を目指す新しい波は起き
終わりのない書籍は湖に沈んでゆく

私達は始まりだけしか知らないままに
遠くの山々まで染める夕暮れの中
終わりのない夢と眠りとに想いを馳せていた

やがて二人で潜り込むベッドを探しに
手を取り合って戻ろうと機会を伺いながら
それでも照れ笑いだけが続くままで
まだ反対岸に届かない紅い波を見送っていた
2012-10-25 19:42 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

海が見えない岬は静かで

独りでない哀しみを拾いました
海の見えない岬で拾いました

だので、宇宙の果ての孤独を下さい
涙にも哀しみにも穢されていない
純粋な孤独だけを下さい

壊れたままのピアノを弾きながら
微笑む少女と古洋館で会いました

だので、全てを切り裂くナイフを下さい
身を切り裂き心を抉り出すために
純粋なナイフだけを下さい

心は冷たい南風に乗せて
極北の夜空に送りましょう
代わりに、純粋な孤独を身に詰めれば
きっと哀しみも癒えるでしょう

海の見えない岬に立つと
独りでない哀しみを拾います
だから歌は忘れました
海が波音を忘れるように忘れました

だから今は、星のように静かです
ただただ、星のように静かです
岬の先は、静かです
2012-10-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

アルミ缶の空

それと知られることすらなく
路傍の空缶は蹴り飛ばされ続け
何度も繰り返される記憶されない哀しみに
ただの平らなアルミ板となった

路面に張り付いてさえいれば
蹴り飛ばされることはなく痛みもないが
ただ雨に打たれ、降り積もる雪を背負い
風に舞い飛ばされて叩き付けられ
そして幾度も幾度も、形が無くなるまで
あらゆるものに踏み潰される

塗装の剥げ落ちた跡には
それでも美しい青空や流れる雲
哀切に満ちた夕暮れや星満ちる夜空が映え
名前など要らぬと想わないでもない

語り掛けられることを拒絶し
独り空の美しさを、その瞳に映しながら
誰一人振り返ることもなく踏み付けてゆく
そんな、ただの光るアルミ板であれば
きっと哀しむこともなく済むだろう
2012-10-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夕景の手紙と便箋と

山間を垂直に昇る蒼月の軌跡に
水平に伸びた虹は触れられず
クロスしない十字路が虚空を埋めている

橋を渡る時、河に沿う舟を横目に見遣り
辿り着けない向こう岸を見ずに
上流からの冷風に凍る橋の感触を確かめながら
ただ、にじり進むだけにしたのだ

届かない手紙に、時折は真実が潜むので
読まれない詩を刻んだ石碑に口づけをして
その上に載せた白紙の便箋を投函する

目頭を拭った指で閉じた封筒は届かないままで
空の便箋だけがポストに届くが、それで良い

もう月は山陰に隠れ、その軌跡も分からない
千切れた虹も彼方へと移ったことだろう
ただ紅いだけの空に紅い積乱雲が立ち上り
届きようのない空を目指して広がり始めていた
2012-10-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

葉音が落ちずに葉は落ちる

葉の落ちる音を聴かなかった夜
積る落ち葉に埋もれながら
数え続けた哀しまなかった時を
波を失った波音に流していた

単調過ぎる嵐が去り
水路には、いくつもの果て知れぬ渦が舞い
流れ込む全てを受け容れながらも
この夜を越えることはないだろう

蒼い炎を月のクレーターに置き
月を蒼く染めると星の光は消えゆき
白い粉雪だけが静かに舞い始め
冷たさを感じない冷たさで冬の風が吹き始めた

いやに大きな時計の音に耳を奪われ
貴方の声が、どこに向けて響くのか分からず
二人の哀しみを抱いたままに葉の擦れる音に包まれて
もう一度だけ、葉の落ちる音を聴く明日を待った
2012-10-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

青空の夜

「抜けるような青い空」が実はナニも持つことがなく
ただ光子の加減で青いだけの虚空であっても
雲の流れる、その空を祈ってしまう
それだけでボロボロになった孤犬は歩いていた

独り見上げる夜空からの小雨は冷たく
哀しく弱々しい月の光を頼りに架かる虹も風に揺られ
蒼い空を行き交いしていた

とうに聴こえるはずもなくなった泣声が
耳に留まったままで響き続け
涙すら流せない夜に夢を見ることは出来ないままで
ただ汚れた夜の闇に身を沈め消えることを願った

それでも足裏から伝わる冷たさは離してくれず
消えることすら許されたない哀しみに暮れ
ただ一歩一歩、その冷たさを踏みしめながら
やはりまだ消え行くことを見えない夢に見て
眠れないままの眠りにでも墜ちてゆこうと想う
2012-10-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月の時間が過ぎる夜

ただの坂でしかなかった平地は
過去を捨てられ、忘れられ
淡々と平らかにされるままに広がり
伸びた先を夕陽に遮られる道が敷かれていた

道脇で鳴く虫の音は時を経ることなく
ただの坂であった頃と変わりなく
道行く人を時折は立ち止まらせることもあるが
何とも知られぬままに夜のしじまに消えるだけだった

ボンヤリと点灯する街灯の灯りに
哀しみを預けながら人は足早に歩き抜け
戻るべき場所を探しながら
戻るべき場所に向かうのだ

通り過ぎる季節を抜け新しい季節を迎えるには
せせらぎの音が変わるのを待つしかなく
遠い山々が季節の巡りを見つめながら
夕暮れの中に、やはり茫洋と消え行きながら
懐かしい季節から去ることが出来ないでいる

消えた山々から静かに昇る月は軌跡を変えず
しかし変わらぬままの季節を見下ろしては
ただ黙って自分の時間を過ごすのだ

そして忘れられた坂の先に月が掛かると
きっと少しだけ寂しさを想い出し
それが何なのかを考えながら
山々の反対に向かって歩き始めるのだった
2012-10-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

二人の孤独

信じる気持ちだけを足跡として
哀しみだけで出来た砂を踏み、歩いていた

遠い空には虹が架かり
それでも手が届く程に近く見え
やはり伸ばした手を風が吹き抜けるだけで
それでも手を伸ばしていた

手の甲が陽の光に照らされていた
何も掴むことが出来ないままに伸びる指
その先に涙の一粒だけでも乗せたかった

とっくに過ぎたはずの季節の匂いに振り返り
これから来るはずの季節には気付かない振りをし
傷付いた足からは乾いた血が滲んでいた

遠くで鳴る鐘の音が垂直に響き
この耳には届くことがないままに神を呼んでいる

私は貴方に並んだままに独り
鐘の音の色を仰ぎながら
伸ばした手の収め所を探していた

二人でいるという孤独をどうしようかと考えながら
それでも手を伸ばしたままで苦笑いするしかなく
風の音と過ぎた季節を共にしていたのだった
2012-10-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

街の果てに無音の波が響く夜

街行く孤独の足音が響くと
細い月が唇を歪に拉げ
笑いながら薄雲に隠されて消えた

哀しみに捨てられた孤独が一つ
傍過ぎる犬に吠え付かれ
泣けない涙に暮れては逃げ惑い
往く宛のなさに苦笑いする

書く宛てもない手紙を手に
男が独り、その苦笑いに出遭い
笑う力もなく歩みを止め
じっとチビた鉛筆を見つめると
雲が退き、表情を変えた月が現れた

星々の語りに疲れた月は一層に痩せ細り
それでも決まった軌跡しか辿ることが出来ず
耳を塞ぐことも出来ずに独り切り
ただ疲れ切って沈む先を急ぐのだ

孤独と男と、月の光が映える小波に
似合う波音などないままに
無音の浜の夜は更け
早く陽よ昇れと肩を並べる三人は
水平線の彼方に歩み出す
2012-10-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

この響きを聴く人あらばと鳴る鐘の音が
単色の虹となりステンドグラスを砕き抜けて
雲を射ては空に撥ねられ地に伏し
峻険な雪山に連なる荒道を往くと
着飾った少女の帰るスキップと擦れ違う

その明るく優しい足音に忘れた涙を想い出しながら
行く先すら失ったことに気付くと
硝子の砕け散る音が、その耳中にこだまし始め
ただ冷たくなってゆくだけの自分を知る
独り凍り付いてゆくだけの夜の冷たさを

その響きに凍り付いた全てが砕け
何も聴く者を求め得ないままに虚しく
冷たいだけの闇に沈みゆく慟哭だけは騒がしく
その醜怪を振り返るものすらない闇で
鐘の音の消えゆく意識の隅に蘇るのは
穏やかに優しく鐘をなぞる少女の指先だった
2012-10-17 12:02 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

分かれる星と重なる夢と

哀しみのない涙は静かだのに
小川を渡ってはざわめいて
失った行方を求めては空を映しながら
ただ流れる先の岩に当たり、石に当たり
浅瀬に乗り上げたままに乾いてゆく

空を駆ける星と地に落ちたまま臥す星は
いつ、どこで分かれたのか
天空図をなぞる指先の先には何も無く
ただ星と星との間、無限の彼方へと消えるのか

街の音が静まり返ると貴方の足音も消え
私は遠くの音に耳を澄ませながら夢を追う
ただ陽溜りの中で過ごせたらと願う
二つの想いが重なることを込めた夢を
2012-10-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

石碑を刻む丘、遥か

揺れる葉に風が吹き、揺れない葉にも風が吹いた
流れる雲に風が吹き、流れない雲にも風が吹いた

降らない雨の雨音が遠くで響くと
陽を遮る者達の影は路面に横たわり、張り付き
実らぬままに落ちた果実が腐ることが出来ず
帰ることの出来ない大地に埋もれようとしている

石碑を刻む音が響き続ける丘には緑が敷き詰められ
風は吹かず、雨も降らず、陽も差すことがない
ただ誰かが拾った実らぬままに落ちた果実の一つが
石碑の見えぬ場所に置かれているだけだ

そして背中を押すように風が吹き始め
頬を打つ小雨が雫となって流れ落ち始め
誰もが押し黙ったままに何も無い空を見上げ
止めていた歩みを少しだけ進めては
消えてゆく緑の中に、深く沈み込んで行った
2012-10-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

時間の孤独と哀しみと

独りの時間、独りっきりの時間は
あまりの寒さで震えるままに
静かに、静かに凍り付いてゆき
誰にも受け容れられることのない闇に沈み
やがて振り子を止めてしまう

捨てられた孤独は時間を見失い
動く物のない止まった街中で
ただ微かな温もりの記憶だけをアテにして
行方のないままに彷徨い続ける

貴方のいない哀しさすら忘れたままに
独りっきりの時間を拾い上げ
その冷たさに身を竦ませながら私は問う
答えのない問いだけを、問い続ける

浜に届くことのないままに
消える波達があるように
私の問い達も答えに届くことがないままに
独りっきりの時間の中に閉じ込められ
捨てられた孤独だけが彷徨う街に
ただ一輪の花だけが静かに、静かに揺れていた
2012-10-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

ただ遠いだけの距離ならいらないというのに
それでも届く時を想い描いてしまいながら
ひたすらに紅い夕暮れを前に独り
想い描けない面影をなぞりながら過ごす黄昏は
夜に届くことだけは早過ぎて哀し過ぎる

刻む言葉達が届く先があるのだろうかと
希望のないままの手紙を綴りながら
懐かしい波音だけを想い出し
投函するポストは想い出すことが出来ない

届く先のない手紙を星が読むことがあるのだろうか
その儚い光だけはヒラヒラと零れ落ちながら
涙と混じっては足元に落ち、積り続け
眠れずに朝陽を想う夜の長さだけを積み重ねてゆく

出遭うことのないメビウスの輪の表と裏で
時折は重なる足音だけを頼りにすれば
もう少しだけなら歩き続けることも出来ようか
越えられない川向こうには美しい虹が掛かり
茫洋と連なる山さえ大跨ぎしているが
託した手紙を握り締めたままの私は
遠く仰ぐ虹を前に、ただ立ち尽くしている
2012-10-14 15:02 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

哀しみ枯れた夕暮れに

言葉を洗う川の流れに思考を落し
行く先のない揺らぎに任せ
哀しみの凍り固まった石を踏みながら
独り歩む川辺の両端には
廃墟になり切れない建物が立ち並び
川と私とを見下ろしている

いつも哀しみは独りの歩みを止めることが出来ず
誰も待つ者がないままに閉じた空の下を行き
時に降る雪にさえ温もりを求めているが
雪の儚さが哀しみを、更に孤独へと追い遣るのだ

紙片の舞う風景の中で詩が砕け
その合間を哀しみは独り、黙々と歩き続け
哀しみのない言葉だけを頼りとし
涙の流れ落ちたことのない大地を目指し
ただ、あてどなく永遠を彷徨っている

夕暮れは終に哀しみを語ることなく
ただ宵闇に追い立てられて水平線の先を目指すが
それも、やはり巡るばかりの営みに飲み込まれ
哀しみの涸れた夕暮れが今日も訪れては
遠く、水平線の彼方へと足早に去って行くのだった
2012-10-14 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

拒絶されない過去が往く

通る人のない道が拒絶のためだけに伸び
覆うアスファルトは拒絶の熱に硬化出来ないまま
立ち上る先のない蒸気を発し続けている

漂うスモークは孤独な霧となり
通らない人々の視界を遮ったままに
ゆっくりとした濃淡だけが揺れている

拒絶された拒絶達が吹かない風となる極点では
歌われることのなかった歌が遠くで響き
打ち寄せる、理由のない波に砂が舞い踊っていた

届くはずのない道を待つだけの波打ち際に沿って
忘れられるだけの記憶が点々と刻まれては
誰に見送ることもないままに消え
振り返られない過去だけが拒絶の隙間を縫い
ただの痛みとなり変わり、誰もいない道を歩いていた
2012-10-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

君のいない眠りに向かい

それが全てという君の笑いを他所に
僕は、くすぐったがる君の乳房を探っては
見つけようのないものを探し
確かめようのないものを確かめたくて
ただ君の中に入り込もうとし続ける

満ちることのない想いを独りで抱えるのは辛いよと
君は無言のままに優しく伝えてくれるというのに
まだまだ僕は、上手く君に渡すことが出来ていないのだろうか

君が掬おうとする僕は逃げようとはしていないのに
むしろ君の近くに居ようと、近付こうとするのに
それだけで君が遠ざかってゆく哀しみが押し寄せて
ただの自分勝手に勝手に傷付いては
どうして良いのか分からなくなってしまう

哀しい歌を歌ってくれない君の横で
僕は優し過ぎる君の乳房を探りながら
くすぐったがる声に安らぎを覚えてしまい
また自分勝手な眠りに就いてしまう
2012-10-12 23:08 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

変わることのない十字路で

何も変わることのないままの朝
これ以上、凍ることの出来ない十字路に
言葉に変えられた哀しみが吹き溜り
言葉にならない哀しみが雪と降り積もる

自らを傷付けるだけの血が
流れ止むことなく夥しく流れ続け
十字路には紅い雪が降り積もる

雪を踏む足は靴底から冷え切り
全ての体温を奪い付くしては
十字路に差し掛かった人々を立ち止まらせ
そのままに行方を失わせてしまう

血と血が、哀しみと哀しみが
そして血と哀しみが交錯し交わっては
共有されることのない涙となり
頬伝う微かな音だけを残して消えてゆく

何も変わらず、昨日と同じように陽が昇り
何も変わることなく、昨日と同じように人々は行き交い
何も変わることのないままの朝
十字路も変わることを知らないままだった
2012-10-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月の向かう夕雲

反対方向の夕焼けに向かう汽車を待つ
ホームの、そっちとこっち

僕と君は草臥れてベンチに横たわる
嘘に変わってしまうだろうホントと肩を並べ
遠い夕雲が紅いままに消えないことを祈りながら
横に居て欲しい人をボンヤリと想い続けている

どうして、いつも夕焼けは僕達を包むのだろう
こんなに優しく温かい紅色で
哀しみだけしか抱えられない時の僕達を

それでも想い出すのは
あの時だし、この時だし、ホントのままの今だしで
だから尚のこと、君の視線から逃げてしまう

夕暮れのままに昇る月が蒼白く
もっと鮮やかに光って欲しいのだけれど
それでも夕雲は、やはり紅いままでいて欲しい
2012-10-11 22:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ただ、遠ざかる中で

近付く程に遠ざかる哀しみに
微風すら伴わぬ小波が打ち寄せ
涙と洗っては彼方へと去り
水平線は愈々、遠ざかる

祈りを授からぬ星が堕ち
息絶え絶えの蛍と混じりゆく中で
私は独り、進まぬ歩みに留まっている

託すはずの想いを託された月は蒼く凍て付き
昇ることを忘れたままに水平線から遠く
陽は行く先を失ったままに夕暮れは

踏みしめられることのない落ち葉が溢れると
街路は静かに眠りへと向かい
遠ざかるだけの靴音に耳を澄ませながら
ただ落ち葉が風に舞うのを待ちながら
来るはずのない風音を口ずさむのだった
2012-10-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

桜の花弁と共に

一度、傍を通り過ぎただけの季節達が
幾度も周回を繰り返す中で
散り止むことのない桜の花弁を
たった一枚だけ掌に受けポケットの奥に押し込んだ

繋ぐ電線もないままに街灯が連なり
月のない淡い星空の下で
ボンヤリと寂しげな夜を照らしている

遠くの雲が、時折、稲光を受けて姿を見せては
直ぐに闇に紛れて消えて押し黙り
山鳴りを吸い込んでは息を詰まらせる

一輪の花だけを残して去った貴方は
足跡すら風任せに消えるままで
彼方の記憶は薄れゆく虹より薄く
もう二度と戻ることはない

だので私はポケットを探り
一枚だけ押し込んでいた桜の花弁を、そっと取り出しては
四方八方からの僅かな光を頼って淡い輪郭を撫で
また、そっとポケットの奥に押し込むのだった
2012-10-10 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

紅く青い月

青い三日月の光が好きと言った貴方の夜を
囲む叢雲さえ染める紅い満月が渡り
夜闇に紛れて蒼褪めた、その横顔にも紅が差す

遠くで吹く風の音だけが聴こえ
私達の間を吹き抜ける風は音もなく過ぎ
何処へともなく去り、絶え
二人の間の全てを消してくれる

哀しみだけを頼りに二人、肩を並べ
違う花火を黙ったままに見て夏を過ぎやり
別れた冬の日に舞っていた雪を
同じように想い出している

降り続ける雪と積り続ける雪と
ただ、ひたすらに白い雪を照らしていた月は去り
照らされていた私達の涙は涸れたまま
もう一度だけ、貴方は呟き、私は耳を傾け
紅い月を眺めながら、青い月を見ていた
2012-10-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雨雫

鈍磨した頬を冷たい雨が打ち
哀しみに堰き止めらた涙は行き場を失ったまま
闇の奥へと沈みこんでゆく

上ることも下ることも許されぬ坂で
横にだけ転がされるボロボロのボールがあり
ただ、坂道と坂道を往復し続ける

陽の当たらぬ坂道で
空を走る陽光を見上げ
私は光速で貴方の影を追う

永遠に追い付けない陽炎の速さで
時間は過ぎ去ってゆき
私達は想い出も記憶も持てないままに置き去りで
ただ坂を横に転がるのだ

降っているかも分からぬ程の小雨でも
頬は濡れ、雫が伝い落ち
流れぬ涙の代わりに大地に染み渡り
ほんの少しの哀しみだけは
雨雫と共に大地に、空に帰るのだった
2012-10-08 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

空は繋がっていない

それでも空は繋がっていると
残酷な偽りを信じて捨てた記憶が
ただ静かに心を切り裂き
その奥深くに根を張る

空を仰いでも貴方はいないし
同じ空を見ることもない

私が見上げる空の延長に
やはり違った空があり
貴方が見上げることもあるだろう
ただ、それだけでしかない

そのことに気付くのが遅れ過ぎ
ただ私一人だけのものとなった夕空を
ただ私だけのものとして抱き締めて
寝付きの悪いだろう夜に向かい
静かにグラスの氷を眺めていた
2012-10-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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