帆船の航路を

過ちを受け帆を広げ
午後の帆船は西へと向かい
過ちを受け帆を広げ
夕暮の帆船は東へと向かう

哀しみを積み増しながら
それぞれの水平線を
それぞれに滑り尽くし
過ちに重ねた過ちを灯火として
擦れ違う二艘は夜を越える

北を目指すに、星は見えないか
南を目指すに、星は見えないか

彼方までを満たす哀しみは
帆船の横波を受けて揺蕩い
ただ一つでしかなかった時を知り
戻れない航路を描き続けている
2013-01-31 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

サクラ サイタカ

散り続ける桜の花びらに抱かれ
冬風だけが吹く夢に眠り
貴方のいない部屋の寒さに、ただ震え
待ち続ける哀しみを知り尽くしたい

それでも春は
夏や、秋も来るのだろうか

それぞれの季節の夕暮れ空の色
それぞれの季節の雨の冷たさ温かさ
私の生きている、温もり

ただ過ぎるだけではない時を
貴方のいないままの季節を
私は、どう生きているのか
知ることが出来るだろうか

もし知ることが出来たなら
貴方宛の手紙を書こうと想う
きっと一言、二言だけど
桜の花びらが散るままの便箋に

そして桜の花びらの下に埋め
大切に、いつまでも想い続けるだろう
見上げる桜の先にある、美しい空のことを
2013-01-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

聴こえない祈り

もう、とっくに乾き切った
血がこびりついた小石を見詰め
じっと動かない男を近景に
遥か、遠い山並に陽は向かう

血と一つになった小石には
川縁の草叢に遮られ
たゆらな川音も届くことがないだろうが
高台の土手には微かに響いてくる

気付けば男は両の手を組み
暮れゆく陽を仰いでいるようだ
その背は小石より小さく
その祈りだけが光っていた

祈りを聞届けるものが
もし、いるとしたならば
それは天使だろうか、悪魔だろうか

早目に昇り中天に至った月は
静かに、その様を見守りつつも
纏わり付く星達を追い払うように
陽の後を追っている

やがては空も山も
男も小石も川の流れも闇に一つになり
全てが消えてしまったように
聴こえない祈りだけが残されていた
2013-01-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

朝の冬空

別れから卒業する門が
既に霞むほどだのに遠ざかり
それでも諦められず
よたよたと壁に凭れながら歩き

冷たい北風が今も頬を刺す
冬の陽中は、もう暑いほどだ
春の訪れは、もう遠くない

だのに、まだ冬に向かう心は
更に別れから遠ざかり続け
碧過ぎる空の下、別れることこそが
永遠の愛と変わることを想い知らされる

繋がってなどいないのだ
そう想おうとする空は
それでも、どこまでも広がり
その果てを見せることがない
2013-01-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

空の痛みはパステル色

痛みを遠く忘れた冬の空は
パステルで描かれている

冷たさは淡く、寂しさも淡く
哀しみを置き忘れた風は
吹こうにも吹きようがなく、淡く

足りない全てを描き足すのなら
何を描き足すべきなのだろう

遠くに行ってしまった哀しみか
近付いて来る哀しみか
いつか来る哀しみか
その、いずれでもない哀しみか

痛みを与え続けた空は
砕いた星から甘い光を吸いながら
夜のしじまに消えようとしていた
2013-01-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

粉々に砕けた雪原が
それぞれに月明かりや星明りを受け
別々の月を映し、別々の星を映し
その明るさが森を一層、暗くしていた

より暗いのは森に続く足跡で
雪原に点々と闇を置き
揺れるように森中に消えていた

足跡の果てには不凍の泉があり
その底に沈む前にと月が陽炎となって
独り揺れながら耐えている

月の声を沈め、抱きながら
泉は降り続く雪をも抱きかかえ
冷たい優しさの中に佇んでいるが
足跡の持ち主の影は見えない

向こう岸に続く足跡も見当たりはしないが
森が静かに温かな孤独に包まれる
さやけき歌声が耳奥に響き始めていた
2013-01-26 21:41 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

フレーズ(別れ)

一体、そのフレーズは
何処に行ってしまったのだろうか
消えたかのように想い出せない

幾度も経験している忘却は
それでも慣れることが出来ず
私こそが置き忘れられたのではないかと
私こそが消えてしまったのではないかと

掴み切れなかったのは
大した事ではなかったからなのだろうと
そう、想おうとすればする程に
私は言葉達から遠ざからされ

誰に伝えるでもない
その、たった一つのフレーズこそが
私にとっては大切だというのに
別れは、そんなものなのかもしれない
2013-01-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

床、壁1と壁2

時が移り変わる隅っこを見詰めている
床と壁1と壁2とで作られる隅っこを

三次元が二次元に、二次元が一次元に
ただの点に集約されゆく様が美し過ぎて
あるのにない、その点に

宇宙は、ただの点から始まったという
そんな理論を聞いたことがある
その点に全てが詰まっていたのだという
私も私以外の全ても、空間も時間も

そこには哀しみも寂しさも
楽しさも明るさも暗さも
嬌声に追いやられる孤独もあったのだろうか

今の私すらも、その一点に居たように
明日も、その一点にあったように
2013-01-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月のボヤキ

あるとも知れぬほど薄い雲に
それでも隠れてしまうことを怖れて月は
あるはずの光跡を探している

しかし遠かろうはずのない
ほんの少し前、昨夜だというのに
見飽きたはずのそれは
跡形もなく消えているのだ

ただ、ほんのりと微かな温度の違いが
どこまでも伸びていた光跡
その痕跡を忍ばせるかのように
周囲の空気を歪ませてはいる

月の光は、それほどに弱く
あまりに儚く

それだのに人は夜空を見上げ
あすこに月が光っているね、と
銀河を指して言うのだ

銀河になど入ってしまったら
私なぞ簡単に溺れちまう
月は黙って光跡を探しながら
聴こえないボヤキを一晩中、繰り返している
2013-01-24 23:42 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

潮風に吹かれた記憶だけが私達を救う

とうに波音も去り、波は忘れ去られ
それだのに倦むことを忘れたまま
潮風は吹き続けるのだろうか

波に砕け煌めいていた星の光は何処に
波に揺蕩っていた月の光は何処に

ただ音のない漆黒だけが全てとなり
海すら死んだというのに
波に生き続ける術があろうか

だのに波打際だった此処に立ち
私達を吹く潮風を待たずにはいられない
遠く、微かに聞こえるかも知れない潮風を
私達の頬を撫でゆく潮風を

火照った身体から熱を奪い
ただの蝋人形を並べる残酷さで吹く
あの、独りきりの潮風を
2013-01-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

早い朝陽は通り過ぎるだけ

つとに知られたことだが
夜明ける前、まだ夜空の冷たさに負け
朝陽の燭光が細かに砕かれ
そっと草葉に降った欠片達は素晴らしく甘く
少し苦みがあって非常に美味しい

口中に放ると
飛び込んできた淡雪が融けるより早く
あっというまに柔らかく消えてしまう
その舌触りの淡さも何とも言えぬ

雀達が鳴き始める頃には消えてしまうが
その欠片達を集めては瓶に詰め
今では相当の量になっているのよ
そう言って喜んでいた森の少女がいた

いつも静かな湖畔を好み
誰彼となく微笑み掛けるだけで
ただ音もなく消える波を眺め
隣に人が座れば、いつの間にか消えてしまう

彼女が何処で集めているのか
誰も知る由もなく、また話に聞くばかりで
そういう話もあるのだと納得した顔をして
それだけで満足して
明るい日中に忙しげに消えてゆくのだが
2013-01-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

定められたように別れ往く

昨日と同じもの、明日も同じもの
それらの象徴と化した軌道に倦んで
月は昇ることを捨てた

愛が、常に壊れるものの具象となり
それ以外には存在しようがない
そう定められたのに倣うかのようだった

それぞれに宇宙の中心となり
互いに遠ざかるばかりだという
その、在り様に従って地球と反対方向に

それは反対とも言い難い方向なのだが

そうとしか言いようのない方向に
まるで流星を見るかのように月は消え行き
もう、戻ることがない

そんな夜の森に残された椅子が
待つ人も知らず、星明りに朽ちつつも
寂しさを忘れ行く記憶を抱き寄せながら
そこに佇む孤独に
静かな世迷言を夜通し聞かせ続けていた
2013-01-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

湖底の月を

湖面に凍る夜の月は
やがて過ぎない時に硬化し
その重みで湖底に沈む

いくつもの月が湖底で呻き
あるいは朽ち、あるいは魚に啄まれ
自らが塵芥となりゆくままに
波とも想える水圧に抱かれている

時折は陽の光を見ぬではない
気紛れに落ちた空き瓶には
湖上を舞う陽光が、いくつかは紛れ込み
暗い湖底で大慌てしては
小さな泡にしがみ付き
ようよう、湖上に戻るからだ

月たちは湖底を憎んだか
どうも、そうではないらしい
ただ暗く冷たい湖底の仄かな温かさが
夜空の冷たさに比べれば心地良く
星どもの愚痴も聞かずに済むからだ

孤独な月たちが
それぞれの寂しさを抱き
今日も湖底で静かに去って行く
それもまた、良しとして
2013-01-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

ようよう隙間を縫った一筋の木漏れ陽が
木の葉の舞い落ちるよりも、ゆっくりと
凍った湖底に向かって降ってゆく

季節を越えて凍り続けて湖底は
溶ける時を待つこともなく
積もる寂しさだけを重ねつつ
誰も知らない哀しさを想う

忘れられた遠い別れ
誰もが分かたれることなく
ただ一つとして過ごしていた季節は終わり
私達は、私達として生まれ始め
私達のままに終焉を迎えるのだろうか

星の巡りは答えを出すことなく
ただ、それら全ての推移を見守っているが
月は少し不満そうに
木漏れ陽の降る前に中天に昇り
見えない湖底を祈っていた
2013-01-20 21:30 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

条件

日暮れを向こうに
夜の青さが地を染めてゆく

その先に昇る月を横切り
蝙蝠がヒラヒラと舞い
進む先の不確かさを嗤っている

季節を忘れた蛍は
時折、想い出したように点滅しつつ
男の肩にしがみ付いている

何度、冬を跨ぎ越えてきたのか
巡るばかりの問いを捨てつつ
それでも行く先で問い

忘れた言葉を捨てたものとし
ようやく歩いている

季節変わりは命変わりだが
命変わりは季節変わりではないのを
訪れるものを拒否する墓標の前で確かめ
少しだけ、泣いた
2013-01-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

三時事記

哀しみを壊して池に沈めた後
畔を囲う森樹の一本に寄り添い
その樹肌を撫でて、ただ泣いた

誰の足音も聴こえてはこない
その永い時間を独り
粗い樹肌を抱くように撫で
ただ泣き続けていた

その姿を嗤ってくれる誰かが欲しかった

だのに春風は優しく吹き
知らない花の芳しい香りを運び
空は美しいまま変わらず
池までもが透き通ってゆくのだ

一体、何を壊して泣いているのか
もう今となっては分からぬが
大切なナニカを失ったまま
世界の、その真ん中に立ち
樹肌を撫でながら
ただ独り、泣き続けるのだろう
2013-01-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

臨海する冬空

「そう言えば、携帯は?」
小柄な私より更に小柄なその肩を深く右脇下に抱きかかえると、彼女が履いているジーンズだろうか、右手は軽く右腰辺りの余り布を掴めた。
「カーッ!携帯ねぇ、ママがさぁ・・・」
小雨に濡れた茶色く柔らかな和毛が掛かる額に唇を寄せた時、悪戯っぽく微笑む、その顔の持ち主を想い出して、初めて夢だと気付いた。

平坦な雲が広がる空の下、地下鉄だろうと想うが、モノレールに似た高架を走る列車からの見通しは良く、車内に点滅する駅名が少しづつ変わってゆく。
「どの駅に降りるのさ?」
慌ただしく車窓の外と路線図を見交わしながら、自信なさげに、しかし力強く、
「次じゃない?次よ、次!」
と、彼女は答える。

点滅する駅名は「臨海」だった。
駅舎は露天のようで、降車すると車内では気付かなかった小雨に直ぐに打たれた。
誰と一緒に歩いているのか、そう疑問に想うこともないほど自然に彼女は隣にいて、会話を交わしていた。
当時、携帯なんか今ほど普及してなかったというのに、夢と気付いたというのに、私は・・・


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2013-01-18 14:04 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夜と月と星と

冷たさで砕けた光を拾い集め
その胸に抱きながら、白い花は咲く
淡い炎を灯しながらも薄い花びらを
地平線に囲まれた野原一杯に広げ

涙を流しながら土を食んで
草葉は白い花を見上げながら茂る
遠くも近くも過去を奪われたまま
生まれる記憶を想い出そうと必死になり

さても鐘は鳴り続け
窓に集う露は光を集め直して夜に備え
夕陽が山に吸い込まれるのを眺めつつ
静けさ全てが全てと呼応し
ただ広さだけが広がり続け

夜は訪れる先を失いながら
月や星達に、こづかれ
どこか闇夜はないものかと、おずおずしつつ
そっと森影にある泉を訪れ
その穏やかな水音に眠り惚け
夜と月と星とは安らぎを覚えるのだった
2013-01-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

静けさを

その、あまりの遠さゆえに
春のみか冬さえも連れ立ち雲は
遠く水平線の彼方に去り

しんしんと雪だけが降り積もる
その雪原を真っ青な空が覆い
ただ、ひたすらに銀白の世界は青白く

冷たさすら遠のく温もりで
キラキラとスターダストが舞い散り
雪と混じりながら降り積もる

細雪を囲う暈が眩く
雪とスターダストの合間を縫いながら
積もることのない優しさを舞い降り
立ち尽くす全てを光らしめては黙らせる

刻まれた言葉達と共に
石碑は音無く砕け
語ることの無意味さと意味を問いながら
全てから遠い雪が
それでも降り続けていた
2013-01-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

私達の欠片

まだ昇って間もない月を薄く
薄く切り裂き取ると
透き通って青い血が流れ出し
か細い小川の畔の石を染め

薄まった血を吸った花は
更に透き通って青くなり
葉脈がトクントクンと脈打ち
それだけを頼りに生きるのでした

星を追い掛けると赤い涙を流し
陽を鞭打つと黄色い汗が滲み出て
それで青、赤、黄と揃います

赤い涙は遠くの雪が吸い込みました
黄色い汗は雨が吸い込みました
他にも色々と吸い込まれたのです

それらが集う深海は深く暗く
決して光の届かない場所となり
今でも私達の欠片が安息しているのです
2013-01-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無題

ジリジリと明るい陽に焼かれ
雪は融けゆくことを潔しとしないのか

チリチリと音を立てながら抵抗し
しかし結晶を保つことは出来ず
ただの氷水か、せいぜいが氷となり
踏みゆく人や車や世事達を滑らせ
せめて一時の命を記憶させようとするのか

名に変えようもない、その儚さこそを
雪と名付けようものだのに
何故に静かに融けゆくことをしないのか

その寂しさを醜く歪ませて
あまりに早い夕暮れの下
雪とは呼び難い氷塊がグジグジと軋み
明日も又、空に還ろうとはしないのだろう
2013-01-15 12:02 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

幽閉された行先を見上げる独り

夜に幽閉された牢獄の壁の冷たさに
銀絡繰りで出来た蝶の舞う光が当たり
砕けては冷たさと一つになって肌を刺す

その、あまりの痛さに
柵外に降る静かな雪の暖かさを想い
そっと、その中に埋もれて眠りたい

だのに底冷えは止まることなく
眠れないままの床から苛み続けては
哀しみを溶かして全てを浸そうとしている

雲間から漏れる月明かりも雪と降り
連れ立つはずの星の一つも見出すことが出来ず
静かに哀しみに微笑み過ぎるしかないのだ

どこを、どう歩いて辿り着いたのか
錠どころかドアもない、この牢獄の中で
ただ突き当りの柵を嵌め込まれた小窓を見上げ
虚しい涙だけが少しだけ
ほんのりと温かさを想い出す縁であった
2013-01-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

カップに注いだ夜

慌ただしい日常を横切る寂しさに似た
その横顔を見せることもなく
紅く染まりゆく新月が沈む夕暮れに
波は音を失ったまま揺蕩っている

蜃気楼に浮かんだ記憶を失えないように
哀しみを想い出しては波音を探し
砂と砂との合間には涙の光を潜ませよう

意識出来ない意志だけが歩みを作るので
私達の孤独は強くなりゆくばかり

現と入れ替わる現実としての夢に潜れば
孤独を癒すことも出来ようかと蒲団に潜む
狸寝入りに眠りも夢も訪れはしない

ただブラインドの隙間から忍び込む夜だけが
冷たく身体から熱を奪い始めるのを
妙な冷静さが横目に見やる中で
カップから立ち上る湯気は徐々にだけれど
その役目の終わりに向かうのだった
2013-01-14 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ランプに照らされない顔を

その不成立だけが真実を語る愛のように
昼の蛍は点滅を続けていたが
街角から街角へと渡る捨て犬のように
異なる愛だというのに、求め彷徨うのか

厳冬の雪の中だけに咲く花のように
全ての季節が終わる時にだけ始まる季節があり
それだのに、信号から信号へと
止まるためだけに車を駆るというのか

流されなかった涙の数だけ
出遭いは永遠の放棄の中に記録され続け
その膨大さに世界は沈黙するばかりで
私達は裏腹に饒舌さを増してゆく

嫌気差す世界の全ての根源を
私達の予感だけが正確に指し示したまま
巡らずに過ぎてゆくだけの季節の中で
私達は何も記憶することが出来ず
その苛立たしさに、静かな酒が注がれ
ランプは荒々しく揺れながら
音もなく異なる炎を燃え続けるのだった
2013-01-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無効化する全てを抱いて

風の流れ面に陣取る無常が
全ての偽りを無効にしながら
時のない世界に消えてゆくが
手をすり抜ける哀しみが止むことはない

時折は吹くはずの風が止むと
枯葉は戸惑った舞を落ち
直ぐに恥ずかしげに側溝の陰に隠れ
次の風を待ちながら空を小さく見上げている

破られるためだけに交わされる約束だけが留まり
一瞬を突き抜けた永遠となって残るのは

陽の後に月が
月の後に星が
星の後には闇が

それぞれの時間軸で
ゆっくりと昇り、沈み
全てを置き去りにしようとするが
それすら無駄な悪足掻きでしかなく

掠りもしない夕暮れ空を
茜を取るかのように手を振りながら
誰とということもなく、ただ歩いていた
2013-01-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

日常はソコになく

戻らない日常を詰めた風船
それは幼い頃に見た黄色いストライプの気球だったかもしれないし
疲れ切って見上げたデパートの屋上に
独り気儘に浮かぶバルーンだったかもしれないけれど
とにかく丸く膨らんで空に浮いているのだが
今は風船と呼んでおこう

その風船を見上げる人など
だれ一人いないことに気付いて見上げる空は
唯、青いままに暗く
やはり風船は浮かんでおらず
切れ切れの小さな雲たちが流されては消え
現れては流されしているだけだった

辛うじて風船の見えるのだろうか
子供達が水切りに使っていた川原の小石を
気紛れに投げつけてみれば
きっと風船は簡単に破裂して
詰め込んだ日常をばら撒くのだろう

誰も、そんなことはせずに
黙って水を切る石の行方を見詰めることに夢中で
向こう岸に届くかどうか、それだけで十分のようだった
風船は常に川下から川上に向かって流されるのだが
その軌跡を、水切り石が過ぎ
だれ一人見ない風船は川の上流にある果てに静かに着水し
魚に突かれ破け、何事もない日常を送り出すのだった
2013-01-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

許すということ

終わったことを知らない終わりの中で
若葉の揺蕩う川面を、陽は眩く輝き
映る空は季節を置き忘れたまま過ぎ去り
遠くから聞こえる涙が、そっと代わりに置かれ
傍らで哀しみを忘れさせるはずの風が吹いている

優しさを忘れさせて欲しいと願う星が
流れ星となって今夜は見つからないように
いつも見つからない貴方を負いながら
ただ冷たいだけの背中は
夕暮れに沈んでゆくのだろうか

どんな約束も果たされたことのない世界
その果てで交わした約束だけが記憶となり
私達の全ては違背し続けるが
果たされた約束は路傍に捨て行かれるのだ

愛らしい少女がストレートの髪を靡かせる
見上げるもののない丘の上では
きっと忘却だけが待ち続けている

だから待ち続けることを止めて家路に就こう
温かくはない家の窓を見掛ければ気持ちは萎える
ただ冷たくなってゆくだけの路面だけを見詰め
永遠に終わらない家路に就くのだ
2013-01-10 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

眠りの波打ち際

眠りに打ち寄せる波の音が
夢の間に間に響いては
夜の闇に弾けて消えてゆく

月を殺した星のように眠りたくて
枯れた木々の立ち並ぶ森に入り
涸れた泉に耳を澄まし
語らない貴方の傍らに横たわり

それでも波の音は遠く
水平線は眩く輝いたままで
波の砕いた光の粒を拾いながら
止まることを忘れた波打際を
どこまでも、どこまでも

数えられない砂の一握を
風に任せ散らせながら歩き、止まり
空を駆ける鳥に任せた眠りを
配達員の来ないポストに投函すると
涙の欠片が郵便箱に届けられ
眠りの一つを、また攫ってゆくのだった
2013-01-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

街境で哀しみは

見えぬままの岬に向けられた瞳を
青い空が満たし、雲が横切り
陽は差すだに砕けたグラスのようで
静かに時計の音だけが響いている

堰堤を渡ると、時が垂直に流れ
置き去りにされた枝葉や石
諸々のゴミと私達の記憶が混じり
過去は失われたものとして泣き続けている

川面は変わらない波をうねらせたまま
素知らぬ顔で常に変わりゆくが
川端の花は咲いては萎れ、やがては枯れ
何もなかったように踏み付けられている

それでも街は賑やかな喧騒を止めず
夕暮を知らぬままに明けぬ夜を楽しむ声が
いくつも聴こえてくる

街境とは、きっとそういうものなのだろう
誰も知らない夕暮れだけが、いつも空を漂い
そっと見上げる、いくつかの瞳だけが
忘れたい哀しみを共有していた
2013-01-08 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

街角には星屑が降り注ぐ

月のない夜には特に
それぞれの拾い集めた寂しさを持ち寄り
遠近の星達が街角に集っている

その傍らを酒臭い男が冷やかしながら通り
強い香水をまとった女が冷たい視線を浴びせ通り
親に手を引かれた子供が不思議そうな目を向けて通り
全てが通り過ぎて、ようやく信号が変わるのだ

そうして星屑を落としながら
慌てて星達は向かいの歩道、街角にあるのだが
そこに向かって、文句を言いながらも小走りして
ようやく渡った頃には息切れして話すことも出来ず
ただ、ぜいぜいと息を荒げている

そうこうしている内に、また信号が変わってしまうので
星達は又、同じように別の街角に向かい
そうしてグルグルと同じようで違うような場所を
いつまでも周り続けている

月が昇る夜には
そんな馬鹿げたことは止めろ
そう言われるに違いないので
星達は黙って煩いネオンに負けじと
いつまでも街角を巡り続けているのだ
2013-01-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




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想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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