アンチ・オイディプス(第三章チョイまで):備忘録2

「アンチ・オイディプス-資本主義と分裂症-」(G・ドゥルーズ&F・ガタリ、宇野邦一訳、河出文庫)

ということで備忘とするつもりが第二章がすっぽ抜けており・・・orz
もう眠い・・・というか寝なくてはなわけですが、少し読む間隔が空きそうなので、がむばってテキトーにでも書いとこ・・^^;

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2013-05-31 01:58 : 実験中&備忘録 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

アンチ・オイディプス(第三章チョイまで):備忘録

「アンチ・オイディプス-資本主義と分裂症-」(G・ドゥルーズ&F・ガタリ、宇野邦一訳、河出文庫)

精神分析や資本論なんかの多少の知識は必要かもしれないけど、基本、特に関係なく読み進められるし(マジ?w)、比較的、読み易い(≠理解してる)現代思想系の本。
第一章において中心概念が丁寧に書かれてるので、それさえ踏まえていれば第二章以降は理論の演繹的適用に近くなってくる模様。
もっともラカンの業績なんかも視野に入っているので、というか、むしろ対ラカンの図式が透けて見える辺りの方が厄介かも・・・^^;

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2013-05-30 19:04 : 実験中&備忘録 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

時計物語

路面を回転しながら進む時計の中で止まった時と平面化する力で隆起する大地
空に落ちゆく力で山がつくられないと誰が言えようか
全て立つものは空に落ちる力だ
時を止める力に逆らい、空に落ちる力だ
そこから全てが立ち上がる、力場としての仮象

哀しみを放ったまま泣き続ける女の傍らに横たわる男の遺体は
今でも目を見開いたまま空の奥の奥を見つめている
愛撫する女体を放ったまま彷徨う男の傍らに横たわる女の遺体は
もう決して開くことなく、その全てを固く閉じ続けて哀しむ

きっと嘘になるだけの旋律を閉じ込めた空間が部屋を漂い
その空間を注意深く避けることだけを糧に生きている
その時、やはり止まった時を抱えた時計は路面を転がるのだ
ただ大地は、平面化することを諦めて時計を弾く

呼鈴の機構だけが壊れた電話を買いましょう
疲れた女が提案する
壊れた呼鈴なら倉庫にあったはずです
快活な店員が店の奥にいそいそと引っ込む
死んだまま生き始める日曜日のショッピングだ

家では鳴り止むことのない電話が歩き始める
自分を忘れようとする人に縋るために
繋がることを放棄して街の人ごみに消えようとする人を手放さないように
いつのまにか時計は電話を抱いたまま泣き疲れ
隆起し終わった大地にともども抱かれ
光ったことのない星の一点に向かって飛び立ち始めたのだった
2013-05-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

光る大地を去る、春

春の去った後の散歩は川べりを往くか
綿毛に見捨てられたたんぽぽの側にしゃがもう
砂利に覆われた根元を見つめるために
陽中に生きたまま死ぬことを知るために
聴こえない距離でだけ叫ぶ、あの人のために

ゆがんだまま光を透過するガラスを撫でると私は透明になる
散逸する、その光の粒、波と一つになるのだ
そうして遡る光の起原を知ってはならない
そうして辿る光の全てを知ってはならない
透明になるとは、きっと知らないことだけになることだ

息切れを走ることと想い込んだまま走り続ける息遣いが停止する
停止した息遣いだけが走り続けている
愛さなかった記憶だけが過ぎ去った春の中に戻り始め
新しい季節を見送っている

改行することなく書かれる詩の終わりを問われると
吹く前の風にノートがめくられ、最後に閉じて答えとなる
いつか、ただの光-それは粒でも波でもなく、きっと光ることのない光-に包まれた私は想い出す
祈ることすら許されずに大地に戻る全てを
大地に戻るために祈らなかった全てを
2013-05-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

月明かりのホロコースト

斬首され血を滴らせたまま餌をついばむ鶏
見世物にされながら暗闇の中で空を飛び始める
明るい日中を軽いダンスを舞いながら、空を飛ぶ
男と女は淫靡な昨夜の営みの中から嗤う

公園を区切るはずの限度は曖昧なままで
その中に閉じ込められた鶏と男と女と
それら全てが私達だと囁き続ける無地のノート

砂利を踏みしめるようにステーキを噛み締める醜怪に肥えた男
その笑みの横で妖艶に微笑む美しい女
注がれた赤ワインは白いクロスに零れ伸びるためにグラスを割る
男と女を結び付けるために、男と女が同じであることを示すために

降り止んだ雨の中を吹き抜ける風の物語を問う
一時も葉の上に留まらなかった雨滴の行方を
次々と消えてゆく雨滴を常に湛える葉の重みを
葉の重みに耐え切れずにひしゃげてしまった茎の強さを

息絶えた茎を、それでも支え続ける根っこの次の物語
月明かりの届かない根っこのホロコースト
横にも縦にも広がり続ける、私達の物語
土の中で眠ったように殺し合う、微生物化した私達の物語
2013-05-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

海際を這い上がる土塊

月の昇らない夜を迎えると猫の鳴声で犬が吠える
遠吠えの消える間際だけを犬として吠える仕方で
男の頭上だけを月が大きなって通り過ぎる仕方で

ブロック塀に沿うと、どこまでも続いている気がする
私と犬とはブロック塀に寄りかかり、それを散歩の全てとする
散歩の横を猫が通り過ぎ、犬と入れ替わる
そのときに入替った犬が吠えているのだ

雨を遮らない傘の下で、濡れまいとする私達は濡れることがない
薄桃色の乳首をシャツに透かすあなたを抱き締め
留まらない雨滴を張りつけたままの首筋に唇を這わせられ
私達は抱き合い、濡れまいとするままに濡れることがない
雨音はいつ諦めるのだろうか、私達の無言を

夜の空を駆けるように海と空の間を駆ける星屑
その速さを計ろうとして沈没し続ける陸上の船
穴だらけの船にだけ乗ろうとする水夫
水夫を見送る時を待ち続ける私達の無言
無言を糧に降り止むことがない雨の季節
忘れるだけのことを忘れた途端に想い出すと
流れることのない涙が行先を失ったまま現れるのだ

接続しないまま放置されたホースが丸められたまま劣化し
その中で私達の全てを繋ごう
繋がれた全てをホースから放出しよう
猫の鳴声で犬が吠える仕方で
どこまでも続くブロック塀に寄りかかる仕方で
2013-05-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

約三つの場所で起きること(または起きないこと)

探さないまま置いておいたはずの夜
窓を閉め切ることは決して出来ないので、そっと彼は忍び込む
眠りを連れてきた方が良かっただろうかなどと戸惑いながら
安らかな眠り、死に至るかのような細い寝息
生きているざわめきを際立たせる静けさが寒々として夜は震える

水平線の上に並び浮かぶ森林地帯
ぼやけた常緑樹たちの猛々しさは海向こうの異国の歴史
こうして静かに歩いていると逃げ水のように近づきながら遠くに
そう、時間的な遠くに置いておこう
それは過去ではないし、ましてや未来でもない
ただ時間的にだけ遠いところ

男の頭には原始的な蔦を縒った鉢巻が巻かれ
大きく鮮やかな羽飾りが一本だけ雄々しく挿されている
握り締めた棒は大地を激しく叩きながら
四方から投げつけられる石で流れる血に塗れ
夕暮の中で咆哮し、屹立し続ける

白い石で出来たベンチには詩集を手にした女が一人
暗い空に気付いて立ち上がり、スカートをはらい微笑む
突き抜けるような真っ赤な夕暮れを向こうに
どこまでも連れて行ってくれるダークブルーの空は
夜を押し退ける力を少しづつ失いながら女性を抱き寄せる

女は今日も来なかった男のために夜を探し
ベンチの上に安らかに寝ついたことを確かめた後
想い付く限りの愛撫を託して街灯を追い掛け消えるのだった
2013-05-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

厳寒の夏

寒い夏がやってくる
背中を照らす強い陽射しの中
私は大きく股を開き
仁王立ちするしかない

何一つ変わらないままの部屋では
時計が反対回りすることもなく
詰まったままの息が止まることも許されず
ただ苦しみに変るのを待っている

路面に打ち棄てられた魚
徐々に剥げてゆく鱗は陽を受けて鈍く
鋭い嗅覚で蟻たちは群がり
その死を啄んでいる

遠くに追い遣った車のエンジン音が響き
行先のない私を更に遠くに追い遣っては
夏の寒さに震える私は、ただ遠ざかる
何ものも許さないと決心して、ただ遠ざかる
2013-05-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

一脚の丸椅子

ある時、忙しく大勢の人が通り過ぎる公園の芝生の上に
私は少し遠くからだったけれど一脚の丸椅子を見つけた
そして何故だか丸椅子を丁寧に、囲むように、ゆっくりと巡った

幾度目のことだったろうか、丸椅子を挟んで私と真反対側
私と丸椅子の距離と同じだけ真反対に貴方が現れた
あるいは、貴方の巡っていた丸椅子を巡っていた私が現れた

二人は丸椅子を挟んだ等距離の真反対を保ちながら
ゆっくりと集束する螺旋を落ちるように二人は歩き
時折は横目で互いを眺めたりもしていた

最後は、いつでもそうであるように少し怖がりながら
私達は背合わせに、その一脚の丸椅子に座ったのね
背中の体温は、もう同じくらいで
その温かさは貴方のものか、私のものかも分からないくらい
そして貴方の見るのは私の見るもので、私の見るのは貴方の見るもので
そんな不思議を二人で黙ってつついては微笑んで

だのに丸椅子は、いつまでもあるわけではないのね
貴方(私)は独り手を引かれ立ち上がり
私(貴方)を残して歩き出す
二人の重さを支えるには、丸椅子は脆すぎるの
座っていられるのは独りだけ

独りで座っているのは、少し寂しいね
私達は黙ったまま呟きながら
朝焼けとも夕暮れとも知らない空の下
変わらず忙しい大勢の人が通り過ぎる人並みの中に戻り
新しい丸椅子が佇むのを後にする
2013-05-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

星と争ってみた話

晴れ抜けているのに星が見えない夜空の下で
男は少し傾げた視線の先、薄曇をすり抜けた星ひとつに出遭った
侘しい昼夜にひび割れた指先に挟まれた文庫本は
安っぽく、少し知った人には笑われるような内容で
哲学だか思想だかを至極、簡単に解説したものと謳われている
深遠な、遠い過去からの哲人の言葉など
そこにあるはずがないとは男も知ってはいる
それじゃあ、あるべき言葉とは何ぞや
男は、もう片手にぶら下げた酒瓶の重さにひき比べて嗤うのだ
それじゃあ、あるべき思想とは何ぞや
男は、本を打ち棄てて街路樹の影に放尿しながら嗤うのだ
嗤いながら止まらない哀しみを仰ぐと空が訪れ
うっすらとした雲の輪郭を辛うじて逃れた星を一つ
視野の限界にとらまえた
どれ程の時間、耐えられるだろうかと睨みながら
俺の負けだよ
そう呟きながら、少し温かみを増した夜道を足裏で舐め
男はアルコールを抜き去られながら家という家
その全ての玄関を跨ぐように
夜の闇を濃くしながら温かな風呂を目指すのだった
2013-05-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

股の下はムズムズして

ある朝の僕が
地球を跨いでいた
くるくると回りながら
地球を股の間に挟んでいた

太陽がすぐそこにある
手を伸ばせば届くところ
りんごのように赤く
その光に照らされながら
ある朝の僕が地球を跨いでいた

20億光年ほど先の星の光を見ながら
どうやってここに届くのかを考えながら
くるくると回りながら
ある朝の僕が地球を跨いでいた

股の下はムズムズして
お金持ちがお札に埋もれてモクモクしてる
股の下はムズムズして
貧しい人が食べるものがなくてバタバタしてる
股の下はムズムズして
兵士が重い武器を振り回しながらアタフタしてる
股の下はムズムズして
平和人が穏やかな夜をグースカしてる
股の下はムズムズして

股の下はムズムズして
ある朝の僕が地球を跨いでいた
20億光年ほど先の星の光を見ながら
どうやってここに届くのかを考えていた
2013-05-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

それは、温かい手です

私を置き去りにした|悲しむ|を探して来て下さい
鼻の上を通り過ぎた気がする野バラの香りを探ろうと
少し空を見上げる形になった頬を強く叩かれました
微かにモノクロの空が見えた気がします

冷え切った鉄の小さな塊が心音の奥に沈んでいますが
気にするほどのことではありません
それより|悲しむ|を探して来て欲しいのです
余りに遠くに来過ぎてしまい、もう見つかりようがないのでしょうか
誰も見つけてくれる人もいないのでしょうか

宇宙を駆ける光が光でなくなるほどの長い時間を
ただ冷え切った小さな塊さえ抱くことすら出来ず
今日の私も過ぎ去ってゆきます
2013-05-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

五月十九日

もう届きようのない遠くに行ってしまった、その一節を階段を這いながら探しても見つかるはずもない
「いくらで売るの?」
もはや、どうでもいいことを熱心に聞いてくる老婆
渡せる限りで構いやしないので放っておいてくれまいか
体が、心がバラバラに放射し、私を消そうとする熱心な試みに抗い、それでも辛うじて人ではあろうとする虚しい争いが絶えないのだ
人であろうとする、そんな気力も、もはや失われているやもしれない
なんとか人と呼ばれ得るものでありたい・・・なんとか人と呼ばれ得るものであり続けてくれと誰かが祈ることを祈っているだけだろうか
頭蓋骨の直下辺りで切り離された四肢は、それぞれの勝手な運動を始め、近寄るもの全てに殴り、蹴りかかろうとしている
神になり損ねるはずの14時50分の時計に疲弊した嗤いを向けて、少しは自分に似通っているかもしれないと想いたい18時を待っている
眠れないままに過ぎているとしか想えない夜の間に間に
全ての哀しみが乾き切った波音だけでも聴こえてはこないだろうか
陽の光の下、昼に失ってしまう全ての陽炎を取り戻そうとは言うまい
ただ断続的にのみ訪れる安らぎ、それだけでいい
それすら望み過ぎだというのなら(確かに、それは望み過ぎなのだろう)、どうして生まれる?
2013-05-19 12:26 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

<蝶の海>

<蝶の海>を薄紫の雲が柔らかに波打ち
破戒を求めている
辿り着いた奇跡の意味を拓くために
水平線の上に、もう一つの水平線を引き
その先に暗闇に包まれた宇宙を隠しながら
想い出に像を結び続けている地球は斑色を迂回して
暖かさを覚え始めた岬の先端にぶら下がる春の中
深い海から湧き上がる春風の中の狂気を
<蝶の海>の雲が覆い隠している
一本のコンクリ電柱に重なり並んだ、
その後ろに居並ぶ腐った木製の電柱の居所は知らない
永くスライスされた過去のスライドは
延々と続く階段のように居並んでいる
そうして居並んだまま<蝶の海>にまた
戻ってゆくのだ
2013-05-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

歴史神

私達は歴史の哀しみや怒りや
楽しみも嬉しさもあったろうが
幾度も訪れた、それら全てを放棄しなくてはならない

今もまた、そこここで歴史は歴史を産み刻み
決して倦んで止むことがなく
あらゆるものを飲み込んで、また増殖し続ける

歴史は単体で、複数で生殖し
犯すものを選ぶことなく
産むものも選ぶことがない

歴史に名を刻むことは屈辱だと詩人は言う
それは歴史に産み落とされた必然だからだと
ある意味では、それは正し過ぎる
あらゆる神すらもが平伏す歴史という無人格

希望という名の未来は歴史に刻まれた
名もない多くの人々は歴史に刻まれた
万物創世の万能の神は歴史に刻まれた
無人格の歴史に全てが屈し、刻まれた

意味を問うことも問わぬことも嘲笑い
存在の根源を問うことも問わぬことも嘲笑い
ただ歴史は歴史としてだけ増殖を続け
時間軸すら捨てることを厭わない

私達、全ての一挙手一投足をも見逃すことなく
冷徹な歴史が予め定め、定めたように刻んでゆく
風吹く数すら、波の数すら刻み込んでゆく
そして全ては歴史に轢死させられる
絶望することも希望することもなく
ただ刻むだけの無人格の足元に平伏したまま
2013-05-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

季節たちの遺児

愛しい犬よ、今日は寒いか
そんなにストーブ近くに居座って
桜も散ろうかという、この今
なぜにこうも寒いのだろうかね
曇天の春は、そういうものだと知ってはいるが
春の曇天は、そういうものだと決まってはいるが
それでも、やはり寒過ぎるね

路面を滑る人影は凍る間もなく過ぎるのに
私達ときたらストーブ前を去る、その瞬間にすら凍ってしまいそうだ
これほどの寒さは外から来ることはないだろう
寒さを生むものは、外界には存在出来ないのだ
ただ私達の中に、どこか遠くに潜む冷たさが流れ出すとき
この世界はこんなにも冷たくて
何故、凍ってしまわないのかと不思議に思うほど寒いのだ

真夏の陽差しを想い出してご覧
少しでも避ければ涼しくなろうかという、あの陽射しを
あの下でも同じように私達は凍えていた
静かに潮増してゆく海の遺児として
耳中でうねる波音に揺られながら、さながら氷山のようだ
夏が暑い、熱いほど私達は凍ることを求めていた

春や秋は少しは安らげただろう
私は寒くもなく、暑くもないはずの二つの季節を覚えているはずだ
それらは夏に追われ、冬に締め出され呻いていたが
私達の周りに憩いの場を見出して舞っていた
季節が通り過ぎることを哀しんで舞っていた

しかし、その春も秋も私達を裏切ることなく見捨てた
冬や夏や、それらを待つ全てに押し出され
遠く水平線を北に南に越えるため
私達の周囲からもがれ、引き剥がされながら見捨てていった
いつだって私達は季節の遺児として、こうして凍えるばかりなのだ
2013-05-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

この希求を、探さないで

剥き出しの生身の世界に触れるとき
その世界の乱暴な優しさに包まれるとき
私は言葉をギュッと握り締める

雨が音を立てながら地面から降り始め
周囲の空気は私の体温に同化する
私の何かが溶け出して、ぬるりと空気を泳いでゆく

無限の厚みで死んだはずの全ての人々が重なり
それは散り散りに小さく引き裂かれたまま重なり、私を覆う
私も同じように極小で、ただ同時に極大で
私の直ぐ外では全ての人や動物や植物や物やが蠢いている
全き私の中でも全てが蠢いている

それら全ての祈りを聞き届けながら
その一つ一つを自分のものとして、もう一度、祈り
ささやかな私の祈りは私の下を離れてゆき
全てが私のために祈るのだ

世界に響く音という音
それらは、どんなに遠くても私に届き
私の、発する前の声という声
それらは、どんなに遠くまででも響き渡る

握り締めている言葉だけを頼りに
私は、もう一度、私に還る
私を満たす、言葉無き無限の私を身に感じ受けながら
その微細に過ぎる一つ一つが
世界に満ちる哀しみと、世界に満ちる優しさと
愛の狭間に生まれた二つに満ちるのを知り
雨が空から降りそそぐ、世界に戻る
2013-05-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

放たれた鳥を見ましたか

常に雨の中に鳥が放たれています
それは夜空かもしれなければ青空かもしれない
ただ雨は降っておらず、雨の中に放たれているだけです

雨を潜り抜ける翼の重さを花びらは知っていて
その重さにぶら下がりながら咲くのです
堕ちた翼だけで出来た重力にぶら下がって

遠くで降る雨は川を作ります
細く小さな川を、いくつも、いくつも作ります
その雨を、川を集めて少しづつ大きくしていきます
翼が流れ始める位に、花びらも流れ始める位に

目の前を通り過ぎる翼を見ましたか
それは鳥ではありません
通り過ぎる花びらは花と咲きますが
通り過ぎる翼は鳥とはならないのです

鳥を集めると翼になります
ただ何匹も集めると鳥のままです
一匹だけ鳥を集めると翼になるのです
そこが花と少し違います、花びらと違います

鳥は一匹では生きていません
常に二匹以上で生きています
あるいは放たれた鳥は数え切れないと感じるのですが
それは鳥が一匹では生きていないからです

もがれた羽を探しましょう
翼からもがれ、地に伏したまま腐乱する
瞬間だけ七色に輝く羽を探しましょう
花びらは花となっている時にだけ輝きます
ここにも違いのあることが分かります

稀に地に舞う花びらが輝いて見えることがあります
それは花でなくなったことを意味しますが
花びらでなくなったわけではありません
花びらは花びらのままで輝いて見えることがあるのです
花びらの中を、羽が通り過ぎる時です
2013-05-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

海を眺望した時間を知らない

夜の憂鬱さを吸い込んで窒息し
そのまま眠ってしまいたかった

バス停の時刻表を見る影を想い出し
それでも窒息し続けながら
もう少しだけ欲しかった想い出を想像した

なのにカラスが過ぎり
枯葉は落ちないままに舞っていて
その先にある青い空とが全てだった

そこで見掛けた涸れた小枝が折れる音で窒息が止まり
夜の終わりと始まりが同時に消え
寝転んだ先にビルの角だけが無数に圧し合っている

そして記憶の不確かさをノートに記し
歩き去る初老の男の後ろ姿と
その前に立ち塞がる安っぽいブロック塀

独りであることに気付いたのは
その後ろ姿が想い出になった後で
縦横に傷付いた掌の痛みだけを頼りに立ち上がり
少しの涙を拭いただけでベンチから離れ
繋留される船のない港に立ち
色のない空に波打つ海を眺め始めた
2013-05-14 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

空はヨイヨイ、海は怖い

右手に旋回する車を駆る無人によって
少しづつ死んでゆく道路は地図で包まれる
少しづつ生まれてゆく道路は拾われないままだ
そこで、壁に激突するゼロを一つあげよう

その音を聴いたなら空が歪むゼロの衝撃
それによって道路は生まれるのだから
あちこち掘りながら探してみよう

その上に雲が浮かぶ丘の向こうはどうだ?

破けた丘の穴から覗き込んでみると
そこには真白な雲が礼儀正しい半円を並べてモクモク
空はグラデーションを真似て
青から白へと縞模様を展開しています

突っ込んだ首がめくれたブリキに引っ掛かって
抜いたは良いけれど血だらけだ
それでも報告だけはしましたよ

その上に雲がない海の向こうはどうだ?

捲り上げた底を追い掛けてみると
そこには真っ暗なマグマが捨てた怒りを追い掛けてグラグラ
海は呆れた青を真似て
哀しいから可笑しいへと縞模様を展開しています

突っ込んだ首がめくれたアスファルトに挟まれて
抜けないのを良いことに戻りません
それなので報告は出来ません
少しだけゼロを見たような気はしましたが
2013-05-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

抱かれる前の化粧台

壊れたままの叫びを電線に掛けて
初夏の夕雲を切り裂いたまま
知る由もない場所に行くのかしら

カラスの啄むように街を歩き
足音だけに縋り付く新聞を拾っては
物憂げに煙草に火を点けて

時折なら電飾にも照らされるから
その横顔を見せることがないではないけれど
架線トンネルの向こう方では
その面影は、やはりぼやけ過ぎていて

車のエンジン音が嫌いと呟き
ワンピースを脱ぎ始めると
窓を一層、大きく開いて、そんな光景を写す

シャワーの音が乾いたまま響く中
振りをするだけで漂う紫煙と
ゆっくりと止まろうとする天井の扇風機

愛そうと決めたはずの時間だけが溶けて
下水道に消えてゆくみたい
2013-05-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

坂を下ると池端に出る

深い雨を潜った桜が満開に花開く中
弔電を手にした男は
どこかが欠けたままの眼鏡を掛け
治らない足を引き摺りながら立っている

猫の鳴声は耳にしたことがない
夜集しながら黙り込んで叫びながら
いつまでも互いを知らないままだ

遠くで波音までが欠けてゆくが
頭上を過ぎる飛行機雲は欠けることなく消え
ふわりと知られていない草原に舞い降りる

星を掲げながら歩く昼の街路には
いつでも、そんな物語の断片が両端に位置していて
そこを通り抜けて始めて人は人に出遭うのだが
ついに恋人たちは抜けることが出来ず
憩いの公園で池端に立ち投身し続けるのだった
2013-05-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雨なし風

昨日の孤独と今日の孤独を砕き
混ぜ合わせてみると誰のものでもない愛
つまり神が生まれる

薄い花弁で指先を切り裂き
滲む血の一滴を鼻の先に付け
子供達は遊びに出かけるけれど
その傷が癒えることはない
神の宿る傷として残るのだ

遊戯に戯れる幼児の横を
大勢の男に担ぎ上げられた棺桶が通り過ぎ
桶から立ち上がる瞳は地平を見詰め
視線の地平も砕け易いように凍り付く

見上げられる雲は、いつでも隠れ
陽の後ろに静かに消えてゆくが
追い縋る視線が遠くから迂回して追い付き
鋭い爪に引っ掛けられ、切り裂かれ
やがて静かに雨のない風が吹き始める
2013-05-10 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

メルロ=ポンティへの憧憬

すっかり忘れようともして数十年、メルロ=ポンティを読もうと想い立った。

私にとってのメルロ=ポンティは小阪修平によってもたらされたと言って良いと想う。彼の「思考のレクチュール」シリーズの、特に1・2巻で身体論に関わってくる所、その行き着くところがメルロ=ポンティなんだな、という印象を抱いていた。
もっとも当時、少し現代思想なんかにも興味はあるという程度の高校生だった私に理解なんぞ期待出来ようもなく、ただ「(言葉の)美しさ」というのに惹かれていたという記憶があるだけではある。それでも懐かしくて引っ張り出してきて読んだ小坂の文章には「誠実さ」といったものを感じる。

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2013-05-09 12:20 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

眩暈する窓枠

二分で暮れる空の下
待っていた雨は降らないままに
びしょ濡れの人々が通り過ぎ
夕陽は遠かった

浸蝕の警告を埋める雪と雪
屹立する頂きと頂きと
矩形に切り取られる空は
鈍色から明色に向かう力を蓄え続け

夜にだけ足音が響く街を
街路を低く擦る衣擦れの音が歩み
突き当りだけを示して消え

断続する窓枠の中に
もう一人を残したまま
鏡の破片だけが飛翔してゆく
2013-05-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夕暮で加速する歩みで

終焉に至るまで、せめて百年は掛かる交響曲を尋ねていた

過ぎてから聞いた一言
「そこの角を曲がる前に・・・」
煙草屋にいたはずの老婆の声が耳に残り
振り返れば煙草屋もなく
ただ埃まみれの道だけが夕暮れている

向き直ったとて角などない
振り向いたほどではないものの透いた道が
夕暮れ掛けながら伸びているだけだ

玄関を跨いだのは夕暮れを感じたからで
それから、どれほど歩いたろうか
朝と昼、夜だけを忘れているかのようだ

過ぎる街並みからは想い想いのメロディーが響き
身を包む産毛が、ある時は共調して
ある時はリズムに乗りかねて
いずれにしても風にそよぐように揺れている

終わりが見えない、ゆったりとしたカーブに差し掛かると
いつ始まるとも知れない艶めかしい曲線に下りながら乗り
歩みは少しづつ速度を増し、歩幅も広くなっていった

煙草屋を過ぎたのがいつだったのか
尋ねるべきものがなんだったのか

少しづつ増してゆくスピードが
それら全てを優しく運び去ってゆくのを感じていた
2013-05-08 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

失いたい時間の中

凍て付くが透き通る仕方で、透き通るは凍て付き
歩くように木立の間を抜けながら風が吹く
吹き溜まりを終着点としないための渦が、少しだけ巻く

理解という異物で遠ざかりはしなかったが
名前を失い透き通った痛みが視野の限り
更に視野の限りを越えて広がり続けるのを止めることが出来ず
縫い合わせられることなく放られた人形の掌に収まり
ただ静かに終わることを祈るばかりだった

丘の上で待つはずの墓標には辿り着けないので
砂と砂の間を縫って波音と出遭いながら
すり抜ける波の優しさに縋るように礫を投げ
その軌跡を追うことで辛うじてだけれど進もう
少女と少女が愛し合う、その仕方で

機械音だけが静かに街中を満たしてゆく時間には
届けられなかった新聞の束が一本の街路樹の根元を満たし
その重みで葉は枯れるというのに
落ちることが出来ない哀しみを抱え込む

茫洋と広がり佇む水平線を想い出すと
どの時間でも同じ色でしか広がらない空の下に立ち
それぞれに見ている空の色を引き合わせながら
一緒に石像になる場所を探すのだった
2013-05-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

詩という名の星達よ

やむなき群星だけは掠めるほうき星
あるいは大気に焼かれ、一時一際、煌めく流れ星

青や赤や、黄や白や、真白や
それぞれの色で点滅する星達の繰り返す改行
それでも句点を探し求め
読点では始めて息継ぎし

星食の先を探そうにも
遠く迂回しなくては辿り着けない
それは幻としよう、そう決めよう

いやいや、後ろを振り返れば
星食に隠れた星も見えてくる
一巡すれば見えてくるはずと
振り返る先は闇ばかりで

もう一度、想い出のベンチに腰を下ろし
眩しい程の星空を眺めよう
そうすれば、また見えてくる

やむなき群星だけは掠めるほうき星
あるいは大気に焼かれ、一時一際、煌めく流れ星
2013-05-06 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

星空の下、感傷

明滅する意識の残照として
薄明るさの残る夜空に星は光り
オリオン座と冬の大三角形
その間に置いた月を見上げながら
黒い犬の背は白く光る

天の川の端と端を結び
メビウスのように巡る一本の線で
全てが繋がるような気がした時代

それを掘り起こしながら流す
少しだけ塩辛く苦い汗
その味を想い出すだけで恥ずかしむ
それは良くないと老翁は言った

それだけを微笑みながら
しわくちゃの背中だけしか見せず
それでも居並んで星空を見上げ
懐かしむように紫煙を吐き出し

突然に想い出す本棚には
読んだことがない背表紙が並び
眩暈の先で眩く光っている

少しはまとまった思考をと想うけれど
意識の明滅は激しく、間隔を長くするので
忘れられてゆくものだけを増やしてしまい
背中を、そっと撫でられながら
ただ泣くしかない、星空の下だった
2013-05-05 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

一八時五分の空

私と貴方の間に横たわる、曇天の夕暮空の縞模様
濃く薄く、少し濃く、薄く濃く、少し薄く
白を出発点にしない黒に向かう色に彩られ
私達を置き去りにする単色模様は残酷だなと想う

想い出すときには空を見てと言ったけれど
あの雲のせいで逆に忘れさせられてしまう
色鮮やかなはずの想い出と重ならないからだろうか

ただ
「そんなことが聞きたいわけじゃない」
その呟きの響きだけが強くなり始める

いつでも、きっとそうだったのかもしれない
枠の萎れた写真を手に取ると
その横顔は、やはり、そう訴えてくる

いつでも別れに付きまとう雲は
どうして、そうも禍々しいのか
哀しむ、ほんの微かな暇さえ与えない
押し潰されそうな、その重さに怖れるばかりで
ただでさえ重い足取りの、その足音すらもが奪われてゆく

一八時五分の空は、本当は、いつもそうだったのか
私だけが気付かなかったのか
貴方も気付かなかったのか

街は知らぬ顔を決め込んで賑やかだから
いや、賑やかな気がしてたから

「知っていたとして、何かが変わっていた?」
振り向く貴方の悪戯めいた、その笑顔
その背景として広がる曇り空
それ位なら、きっと覚えようとしたと想う
2013-05-04 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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【 無意味という意味 】
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