世界の死だけが許される

遠い海底に、静かに死ぬことを許される時
独り佇むはずの岬の先には先客がいる
増大する無意味さに並行する膨張として
波音の聞こえない距離で波は凪いでいる

   月と語りたくない夜には星を
   星を語りたくない夜には月を
   それぞれ夜空から消し去った
   夜空には月も星もなくなった

三つ数えたら振り向く
一つ数えたら立ち去る
二つ数えたら忘れることが出来る
なんとも都合の良いことよ
死すべき裏切りに依って生き長らえる

快楽する欲望が語り始める
愛は苦悶の死を受胎し始める
世界は世界で在ることを諦め始める

愛の喪失は救済の一つである。
私達は愛の喪失以降を知り得ない。愛の喪失は世界の喪失であり、再生なのだ。それゆえ、本質的に対象化し得ない存在としての神に持てる愛の全てを捧げることは、それ自体、(たとえそれが疑似的であるとしても)救済となり得るのである。

真-理に従うことも救済の一つである。
真-理は独自の世界を構築する。世界を引き寄せ、その姿を現すのだ。それゆえ、本質的に対象化し得ない存在としての真-理に持てる愛の全てを捧げることは、それ自体、(たとえそれが疑似的であるとしても)救済となり得るのである。

世界は死ぬのか
朝の訪れを想い描きながら静かな夜の海に世界は死ぬのか
遠い海底に死ぬことを、ようやく
少しは、許されるのか
2013-06-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

消えることを許されぬ神を殺せ

視線を逸らした先に浮かぶ醜悪な面々が嗤う
いつのことだ?
苦笑いが力を失って問う
もう十年か、直ぐに二十年か?
良いことも悪いことも、正しいことも不正も
何も構わず全てを否定され逃げ道はなく
ただ縛られて徐々に身動き出来なくなってゆく
終わった・・・終えたはずの自分が消えない
解放されていないのだろうか
悪夢の中で縛られたまま身動きを失い続ける
「シシュポスの神話」というのがあった
努め励む全てが水泡に帰す永遠の繰り返し
ただ、ただ耐えるだけ?
報われる何ものも望みはしないだろう
ただ屈したくない、屈することが出来ないだけ
理不尽、不条理、身勝手な神・・・?
苦痛の耐え難さを癒すのは神の不在だ
罪の不在だ
神になり、自らを解放することだ
逃れ難い苦痛が神を創り続ける
逃れ難い苦痛を創り続ける連中により
いつでも、どこでも、神は不在により存在し続ける
2013-06-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

仮託するものも持てず
立ち戻るものも持てず
語られるべきものだろうか
苛み続ける彼は

静かに降り始める雨
激しく降り始める雨
知らない間に降り始めていた雨
知らない間に降り終っている雨
全ての雨と雨との間に乾くか

 涙の記憶と記憶の涙
 二つがない交ぜになったまま
 途切れるだけの記憶達は廻る

理由を問うな、過酷に過ぎる
解釈を問うな、残酷に過ぎる
全て雨は、降るだけでしか降らない

雨の始まりを聞く岸壁
崖から知られることのない霧が立ち上がる
干乾びた名を持たぬ動物の死骸
トッ、トッ
彼を打つ雨粒は、ついに二粒のみだった

 葉が揺れる
 風は、ない

私になれず雨は川となる
池となる、湖となる、海となる
霧となる、雲となる、雨となる
2013-06-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

時間も、季節も、時代も・・・ね

貴方の時間にはなれないし、まして季節になんてなれやしません。
固く結んだ唇は、昨日、死んだ砂浜で拾い、空洞だけで出来た一つの海の石に寄せて空に舞う。伸びる足の指はずれてゆく水平線を指している。
水平線、それは立ち上る入道雲であり、空であり、海面(波?)であり、宇宙であり、海であり、私であり、貴方であり、-それら諸々を含む-全てである。
 季節を持たない風だけが吹いている
 いない私達から吹き始める風だ
訪れたコテージには向かい合わずに寄りかかれる柵があり、新鮮な廃墟の臭いは周辺を包み込んでいる。
疎林を抜け出して、いつも通り過ぎるのは狐で、狼ではなかった。その足取り、(狼以外の時には大抵、そうなのだが)それが好きになれない。慣れる人にはなれない(誰でもが本当は同じなのだと想っている)。
 一つだけ同じものが持てたとしたならば
 私達は散り散りに別れるしかありません
 二つ以上同じものが持てたとしたならば
 私達は偶然にすら遭うことが出来ません
漏れ聞く前、赤い星の光跡だけが空を満たす。灰になるのを待つ時間は長いか(温度が足りない)。
「ニクノヤカレルニオイガスキ」
お腹が空いた二人、それでも駄目なのだろう。時間は、季節は、時代は-常に違う終焉だけに向かっている。
私達の背中の遠くから指差す貴方達は、更に遠ざかる。
愛したのは・・・愛することが出来る全ては、隔てだけだ。
2013-06-27 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

私達を保てない理由としての月

もう何カ月も昇ろうとも沈もうともしない月
それは満月か半月か?半月なら上弦か、下弦か?
月明かりは想い出せないほどに淡く波打ち
貴方の残した水平線に沿って涙となって打ち寄せる
そして冷たい岸に着き、また海へと戻ってゆく
 無限と呼ばれ、あるいは永遠と呼ばれる、あらゆる不存在
 彼らに救われた潰れたカエルは路面に撒いた内臓と共に戻ってゆく(どこへ?)
数日後に台風が訪れる晴れた街の空を舞う(一抹の不安)
忙しげな鳥たちと増えてゆく足早な雲、醜悪さを増す人いきれ
 遥か遠い時代の一つだった季節を想い出す
 名残となったソレを包んだままの手は千切れそうに痛む
遠近法に逆らう線路の引き起こす眩暈を駅員に預ける
手慣れた預り様に苛立ちと腹立ちを増す不条理
更に増してゆく苛立ちと腹立ちの加速度
真っ直ぐに増してゆくだけの加速度に引き起こされる眩暈
(私達の眩暈は外部からは訪れないのだ)
運行状況を確かめると不通を嘆きながら安堵し
翻す身の軽さが呪われたツバメの巣を心配する(フリをする)
誰も彼もが月よりも台風のことで心が一杯だと言わんばかりだ
彼らは(そして私も)月が昇ろうと沈もうと無関係で
ただ目に映るまま、覚える能力だけが薄れていて
特に月を憎んでいるわけでも台風の方を愛しているわけでもなくて
たまには気になることもある、-ただそれだけ-なのだ
やはり、もう何カ月も月は昇りも沈みもしていない
太陽はどうであったか・・・?
無関心な問いは、やはり世界を少しづつ壊してゆく
世界は常に少しづつ中心から壊れゆき、離れゆき
私達は世界をはみ出しながら私達ではなくなっている
2013-06-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

嘆く夢さえ見ることを許されず

賑々しい夢中に閉じ込めた時間を歩き
幽閉されたままだった突端を巡りながら貝の開くのを待った
壊れる直前の波を止めたまま響く波音を愛してはいけない
 幾度も波について語ったが、同じ波は決して訪れない
 私を洗う荒波よ、いつ私を癒し続け始めるのか
風を舞い戻す波を渡りながら鳥は溺れて魚となり
知らないままでいられない深海を目指す魚となる
水圧の高まりに心音は押し潰されてゆき
彼の叫びは深海の雪となって海底を舞おうと足掻く
陸を行く象の歩みで鳥を打っていた雨音は死に絶えて赤と黒とに分かたれ
いくつかの生物の身体を巡る-穢れた生物も避けることが出来ずに
 潰れ、足掻き、巡り、最後には血として穢れるのだ
 一体、穢れなき血を見たことが果たしてあるだろうか?
忘れられたのは鏡に映った横顔だった
横顔は覚えるものを見ることがない
愛すべきものを持たないまま愛されることは木の葉の音に託そう
 森ほど深くはなく、林ほど疎らでもない木々の季節
 愛されることのない旋律だけがピアノを統べる
夜に至る全ての幹線で駆られる車に風は訪れない
彼は風の亡霊を創り、ただ一つの風とするだけなのだ
風切る音は亡霊たちの嘆きであり、悲嘆である
 彼は亡霊を創り、亡霊の嘆きをも創り、耳を傾けさえするのだ
 なんとも屈強なる精神ではないか!(私達は怯えることしか知らない)
つまり私達の歩みとは、そのようなものだ
降りもしない雨に打たれ、泥濘に顔を突っ込みながら窒息し
慌てついでに愛しいものを自ら手放してしまい
愛すべきでないものを愛しては壁を叩き、汚れた血に塗れる
それが愛しいのだから神がいたとて呆れようものだ
要するに、要するに・・・要するに、ということなのだ
2013-06-25 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

グラデーション 16時~おおよそ夜

壊れた空を愛でながら新月が空を跨ぐ16時
山並は朱に染められるのを躊躇いながら警笛を響かせ
波打際は古代の砂を飲み込もうとしている
とうに浸蝕の始まりの過ぎた貪欲な時間
 めくらましされた歩みが街に満ちる
 時計の刻む音をアテにしてはならない
夕暮を間近に大きくなるグラウンドの声は若く
校舎に響くトランペットは勇壮さを増してゆく
懐かしい写真の幾葉かも撮影されたはずだ
 忘れるべき記憶を想い出させる残酷な機械
 機械的に忘れてゆく非情なる記憶のシステム
さほど遠くはない公園から歩いてきた男の影が重なる
逢瀬の時間が人気のない土手で始まるだろう

歩くなら雨の日をと涙を流して訴える
岩肌に傷付いた血を塗り渡しながら忘れられるけれど
想い出される残酷さだけが恋を語り続け
愛までをも求め続けている
 開け放たれた窓から忍び込む忘れたい恋人
 恋人を惹き付けるために閉じられたままのドア
不毛さを薄暗い部屋の中で飼い迎える夕暮は曇天で
私達には知らされない夕暮で
漂う哀しみは偽りだけを養っている

雨を透過し続ける屋根の上で猫は泣く
帰る先を持ったことを嘆きながら屋根に泣くのだ
夜を告げる泣声を、私達は知っている
 ブラインドを落とせば世界は消える
 ブラインドを落とせば私も消える
暗い部屋からだけ見える夜空がある
飼い猫の泣声が響き月が割れる夜空
折れた骨の軋みがメロディアスに楽しまれる夜空
マチェーテを振りかざす女の踊る時間
男は重なった影を離すに離せない
死の訪れる夜は、決まってカーニバルが始まる夜である
2013-06-24 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

初夏のプール

想い出せない終わりの中で響いた水の音
その記憶を頼りに見上げた夜空に星は光らない
恋をしたのと言う貴方の夕景の中に私はいない
ただ暮れる空の下で私は星のない夜空を想い出す

山の稜線を波に重ねて静かに雨は降り始める
遠い記憶は雨粒で向こうが見えないガラスに額を付け
ぼんやりと白い雨を想い出している

 泣くことさえ許されぬ幼い初恋
 嘆くことさえ許されぬ老いらくの恋

広い河川を横切る汽車は歩く速さを保ち
そこから見渡せる限りのものを拾い集めている
冷たい雨に打たれるままに、冷たい視線を走らせながら

風の音は想い出したくないので覚えようとしない
それでも想い出してしまう貴方と吹かれた風の音
吹き渡る空に虹を探す鳥の群れ
その色を想い出せない私と私以外の全ての人

どれだけの遠くで光っているのだろう
西空の雲の切れ間から落ちる一条の星の嘆き
プールに飛び込んだ私は、その冷たさだけを頼りに泳ぎ続ける
2013-06-23 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

愛する中に愛は存在しえない

見慣れぬ数列に白い雲が降る
“知らないことは幸せの条件だ
 知らないことが多いことを知らないことは更なる幸せの条件だ”
「[ ]は違う」と言わずには済ますが
実の所、言わずにいるのは気が重いものだ
 私と永遠の間には静謐が満ちる
 永遠と永遠の間には私が満ちる
無知を重ねるだけのために書かれた日記を携え
鳥は海を泳ぎながら地平線の彼方に向かう
その時、水平線には月が半分だけ顔を出すのだった
貴方を想い出す135(138?)度は別離の時を告げた
(三角屋根の端って三角形ではないよね)
昼食にと買ったサンドウィッチは晩に食べるもの
萎れたレタス、乾いたハム、ジットリとしたパン
陽気な話が街を歩き私達を包むようにすり抜ける
疲れ切った足にまとわり付く希望を蹴りながら急ぐ先に家を建てよう
 墜落する埋設管を流れる汚水に溺れた
 屹立する波音の戦慄には身を震わせた
対立する雨と雨、対峙する風と風、対置する向こう岸と向こう側
退行する愛を語る人には伝えるべきことがあるだろう
常に雨が降っても不思議ではないように
(私は愛したことがないから分かるのだろうか?)
想い出すのは瓶に似た缶の空だろう
私達は空を飲み干してから味を想い出す
泣きたいときに流れない涙はどこに在るのだろう
拾いに行きたいのに想い出せないし知らないものだ
 泣くことを忘れたと君は言う
 泣くことを忘れさせられたのと君は言う
二度と手透きされることのない髪を紡ぎながら
女は開くことのない扉とカーテンを揺れる
鍵穴からだけ入り込む風が新しい恋人となる
忘れたはずの秘密の恋がドラマとして放映され、誰もが知るものとなる
 涙は汀を静かに駆け、憩いの時を待つ
日記は閉じられたまま開かれた記憶を失い
風化した愛だけを綴りながら雨に焼かれ失せた
見慣れぬ数列には、やはり白い雲が降り注ぎ続けている
2013-06-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

不能

哀しみに変えた椅子に座る初老の男と少女の間で詩は吹く
邪まで淫らな詩が、吹き抜ける
すり抜けた手を見つめる男は持てる道具などないのだ
少女の手には燦々と輝くノートが一冊あれば十分だというのに
彼らが語るものといえば恋に関わることなら何でもよい
(なんなら愛でも良いのだ)
男は嘘しか吐かぬ、吐けぬのだ
一頻り語り終えたなら、直ぐにでも小屋を飛び出して雪に塗れ
死について一人ごちたいのが本音なのだが、彼の矜持が許さぬだけだ
 雪は激しい音と共に降る
その不能を死として語るしか彼は想い付かぬ
瑞々しさに涸れ果てさせられた一絞り、それが彼の声か
 鮮やかな波音は若い彼を抱いて、ついに離さすことがなかった
-死を恐れているのなら、どんなにか良かろう-
彼は想う、死に押し付けようとする全てを
少女の未熟な妖艶さに籠められた全てを
 独りでは死ねないとは残酷なことだろうか?
私は彼らを放っておいて星を見上げよう
月も良い、雲も良い、太陽でも、鳥でも、飛行機でも(つまり何でも良い)
私の不能は私だけのものだ
誰に預ける必要もなければ渡す必要もない
 誰しもが本来、その不能を我が物とすることが出来る
ふむ・・・そうだな、そうだ
私は、この不能を愛する
何もなしえなかった今まで同様、愛しいのだ
-不能の中に愛を見出す邪まさは赦し難い罪だ-
ただ不能であることだけが全てであったことに気付き
死の不能に晒され続けていることに気付き
全ての不能を誰に預けることなく独り椅子を寄せよう
冷たいまま燃える暖炉の前で
愛しさは暖かさを増し、私の全てを蕩けさせてしまうではないか!
2013-06-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

風の眠り

風が吹くように憎んだ記憶、憎まれた記憶
-歯車にさえなれやしない-
悪態を吐きながら積み重ねられるブロック
表面を彩るデスマスクにはキスが重ねられよう
 水の流した涙は覚えられる
痕跡は永遠に連なるので嫌われる
 (不意に想い出す三角定規を重ねる?)
緑に少しだけ血を分け与えて草原を走る少年
彼の割礼を待つ儀式の狼煙は砂嵐に似た雨に打たれた
祝福された面影すら残さずに駆る馬に似た・・・
-それも記憶か-
帰る所を失いながら巡る、その眼鏡をどうしてくれようか
 (その反射光を私に向けるな)
怒りを鎮めるために波音は鳴り響く
踏破された山頂の怒り、濁らされた深海の怒り
高さで、深さで計られた、彼らの嘆き
 消えないのだ、全て生まれたからには
一度だけで十分に過ぎる禁忌の凌辱を幾度繰り返す?
詩人たちだけを埋葬した墓地に降る雨は煩過ぎる
静けさを与えるものは、やはり誕生の瞬間だけだった
-時間軸を捻りさえすれば良いのだ、蛇口のようにね-
木立の中に死んだままの人形を置いておこう
 少年は、まだ戻らない
それを全ての替りにするくらいしか想い付かぬ
あまりに疲弊し過ぎたのだ、誰も彼も
陽の音が想い出せぬ、葉を照らし、反射し、透き通る
その音が想い出せぬのだ
 新聞は、やはり好かない
ようやく響く時計の音に夜は終わろうとする
ほんの少しの切っ掛け、一眠りを待って夜は始まる
-憎しみは忘れよう、忘れさせてあげよう-
冷たい顔をしながら頬を寄せて夜は囁く
私達には眠りが必要なのだ
血を分け合った眠り、忘れられた眠りが
2013-06-20 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

波打際に、にわか雨が降る日

届かないことを忘れてしまう遠さの先にある波打際
ようやくでも波音が響けば歩き出すであろうか
 線路は、やはり赤く照っている
鈍色の雲が広がる空の下で灼熱を保つ千年の古木
その葉の色は誰かのものであったことがあるだろうか
 千キロを歩き通した速さで風が吹く
 千光年を貫き通した速さで星が砕ける
接地面を持たないタイヤが軋み、その音で目覚めるか
知らない顔だけを覚えている街は、いつも雨が通り過ぎる(その雨も知らない雨だった)
問う人は留まるな、歩き続けよ
消えるはずの痕跡を追う人は歩くな、留まれ
ここに街を創るのだ、痕跡の残り続ける街を(罪深い)
 微かに波音が聴こえるが気のせいである
ページをめくると、そこで一冊の本は終わり、死ぬ
最初のページ・・・最初の一文字だけが永遠の最期を謳歌するのだ(一文字?)
見えるのは男も女も分かりやしない脳天ばかりだ
ようやく子供か大人かが分かるかもしれぬばかりだ
ああ、そこ行く禿頭の光は恵みの光かも知れぬ(笑ってはいけない)
 曇り空が海を渡ってゆく
 また置いて行かれるのだ、貴方も、私も
聖の残したという書物を持っているかと尋ねられたら
誰もがそうするように隣の人に訊く(永遠の円環は創られない)
私は隣の人を持たぬようにしよう(実際、おらぬのだ)
白紙を手に、それらしく振舞って渡せば良い
それよりも波打際である
誰も彼もが忘れてしまった波打際
 波音がしない波打際なんて、あって良いものか?
遠くから、近くから風は吹き始め
雨の降り始めは誰にも知られることがない
泣くような声で愛を謳う女を愛する男はいない
 阿呆な男は泣くような声で愛を謳い
 利口な男は笑うような声で愛をこき下ろすものだ
夜の海の静けさの中で波打際に雨が降り始める
月も星もない夜の海、その波打ち際でだけ降り始める
通り雨は過去と過去との間をすり抜けながら
賑やかな小雨となって私達の肩を叩いて去って行く
にわか雨の季節が到来したのだ
2013-06-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

初夏の私と貴方

古木に寄り添い耳をそばだてると流れ込んでくる時間や記憶が好き
見えない雨の雨音を聴いているようで、この上もなく静か
時間と記憶とは、時折、混在してしまうけれど
その度に鮮やかさを増して心地良い目眩を連れてきてくれる
 私の時間は消えてしまったの、記憶の中に
 私の記憶は消えてしまったの、時間の中に
それが偽りのない私の時間と記憶だけれど誰にも言えない
二つとも私だけのものにしておきたいから
そんな時に、あの古木の側に立って少し、恥じらう
その後に、本当にそっと静かに寄り添って耳をそばだてる
神話を創ったこと・・・天高く掲げた手、地を轟かす足踏み
最後には妖精たちの舞を見ながら召されました
そうこうしているとパチン!と音がする
気付かないように近づいてきて蚊を叩く音が
手を開いて吸ったばかりの血を見せる貴方は嫌いです
その血を拭かないでと想ってしまう
私の中になくてもいいじゃないのと想ってしまう
貴方は私を古木に見立てて寄り添い耳をそばだてる
私の中には時間も記憶もない
貴方の中には何も流れ込んでゆかない
遠い花火の音が消える前にキスをして私は誤魔化す
私の身体を与えましょう
それが私の貴方に対する愛です
私は貴方の時間と記憶の二つをもらうの
貴方からなくなるようにではなく、貴方には貴方にと残したまま
だから、その胸に抱きしめて下さい
古木のように静かに立って!何もしないように、立って!
2013-06-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

リズムと周縁、その他いくつか

哀しみの周縁では音のない雨に濡れて傘が揺れる
リズムを失ったまま揺蕩う小波のように途惑い揺れる
そこからここに辿り着く時間を計るための計算式を教えて欲しい
   遠くを横切る汽車の影を一枚の絵に収めたまま
   幼い記憶は光に包まれて消えてしまうものだ
温かさだけを残したカップを包んで波が遠ざかる
激しい夏の日照りは近いのだろうか
渇ききってゆく土の音が雨の音とぶつかっている
コスモスに似た花をいくつも知っているが
どの花の名前も知ることのないままに雨の中を眺めている
時の過ぎるように哀しみが通り過ぎて周縁を目指している
   巡るのに時間は要らないだろう
   ぐるりと首を巡らせば十分だから
一枚の紙がノートから零れ落ちても雨音は聴こえないままで
音のない雨だけが降っては消えてゆく
陰翳のない日々の営みに満ちてゆく記憶を
モノトーンで構成された想い出に挟み込んでゆくのだ
やがて知り得なかった終わりも来るだろう
その時までに哀しみの周縁に触れるのだ
微かな雨の音の記憶を頼りにしながらよろよろと歩み
その手触りを確かめながら至福を想い
祝福する哀しみの記憶の結晶を取り出すのだ
2013-06-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

物語-外角を巡って

忘れるために時が開く場所、それが外角です
ただ一本の直線で描かれた外角です

ついに届くことのなかった歳月
それを、どの程度にしましょう
光速距離でなら言うに足りませんが
密度のことも考慮に入れる必要があるでしょうか
内角に入れることを望むでしょうか

集束点でのみ存在する、それは嘘です
本当のことは希薄化して、もう今では見えないでしょう
豊かさを満喫した時から相当の時間が過ぎているのです

哀しみは浮遊したまま落ち着くところがありません
それは、まるで子供時代のようなものなのです
子供時代は落ち着くところを失った時代です
居場所がない、それが子供時代です

描かれた夢を描いた気分になって胸を張りましょう
それでも語らなくてはならない時があります
独りきりの夜、誰も彼もが話しかけてくる朝、知らない昼
外角は、そんな時にも開かれます

物語は終わりだけを求めているのでしょうか
それとも終わらないことを?
始まらないことを?
語られないことを求めます
語られるに足る前に戻ることを求めます

始まらないまま終わること、それだけが物語です
外角は、物語が住まう、ただ一つの場所なのです
2013-06-15 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

それで全てですか?と問います

振り返る先を持たない場所でだけ振り返った
青ざめることを忘れた空だけを見上げていた
波打つ海面を捨てた海だけを見渡していた
居場所を失ったままでだけ立ち尽くしていた
私の本当を預けるためだけに世界を血で染めた

夜に染まり切らない中途半端な闇に骨は軋む
裂ける寸前の緊張度で腱は締め付ける
哀しみは遠過ぎるところでだけとはいえ感じないでもないが
それは記憶の中で幻影としてだけ繰り返される
喪失を、失ったのだ

手のひらの上に乗せた石の重みを感じると
少しだけ世界が開く-開いてくれる気がする
黒く小さな石で多孔質のザラザラした表面を想いうかべるのだ
風に吹かれるだけで転がり水に浮く軽さ
中身のない表面だけで出来た石
そこが私の住処となろう

優しく通り過ぎる人に声を掛け損なう
どんな一言でも良かったというのに
答えなどないままで良かったというのに

ああ、そこはきっと海に近いに違いない
険しく猛々しい崖が切り立っているのが見える
幾度も繰り返し寄せ来る波は砕けるだろうか
飽かず胸をときめかせながら波を追う
波の先に共に泣く水平線を見た

隣り合う人は黙っている
擦れ違う人は囁いている
立ち止まる人はナイフで見当違いの所を刺していた
会うことのない人は全てを知っていた
2013-06-14 00:57 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

退行

暗闇の中、透き通ったガラスの上に寝転びながら
私と、貴方の間に起きたこと、起きなかったことを数えよう

二つ、一つ、ぜろ・・・三つ
三つは何であったろうか
貴方は問われるまま山の稜線に沿う
降らなかった雨を知らないかと問い返しながら

紫陽花の色を想い出し始めた私は、また眠るけれど
暗闇の中の上下を、左右を感じるために、ガラスのことは忘れよう

流さなかった涙だけを覚えるように
いつも歩き出す直前で彼方を見つめ
私達は途方に暮れたまま夜と朝を迎える
激し過ぎる愛を遠くに
冷た過ぎる愛をここに

始めて覚えた言葉のことを考えながら
巡る思索は朱色の狂気に飲み込まれてゆくけれど
それはきっと、至極、静かなものだ

二つ、一つ、ぜろ・・・三つ
想い出せる限りを想い出せば、そうなる
不要な三つ
残酷な三つ

言葉を忘れ始めた年の頃
夕空に干乾びた茜をトカゲに与え
知るはずもない太古の恐怖に怯え始めた年の頃
愛らしい横顔に呆けて頬っぺたを突いてみた年の頃
2013-06-13 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

アンチ・オイディプス(3章まで):備忘録+グダグダw

頭の芯がガンガンしてしもた前回から三日空けて、少々は脳内整理も進んだ様子だったので読み始めたのですが、3章を読み終えた後、脳内がプスンプスン・・・とガス欠音を発しているというw
歳のせいじゃろか・・・( ̄▽ ̄;

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2013-06-12 23:01 : 実験中&備忘録 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

憐れみの小鳥達は飛翔する

一時の慰めをあたえてくれる、その手から飛び去り、一羽の小鳥は何を見るか

古代から連綿と伝わる呪詛を繰り返す老婆の曲がりくねった背中
愛の偽りを糾弾し、愛の真実を糾弾する詩人の口の中
朽ちた古木の洞の中に凍える沈み忘れた月の光
巣立つことを忘れたまま干乾びた自らの幼い姿

想い出すのは、いつもヌメヌメとした、その中で蠢いていたこと
見たもの、見るもの、あらゆるものがあった、その中
冷たく光る表面をくすぐる羽毛

涙することを許さない抒情を歩み
ただ祈られるだけの神像の破壊される様を飛翔し
至高の愉楽の中に舞い降りれば
やはり、そこは手であった

すり合わせる手と手との微かな響き
私は小鳥を飛び立ったのだ

雄々しく、その背に手を回し
激しく犯す雄の徴を振りかざしながら
懐かしい抒情を打ち砕き、雄叫びを嗚咽に替え
それでも捨て切れぬ-それを憐れみと呼ぼう-
憐れみを以て、あなたの胸に抱かれるのだ

その偽りを聴こえぬ小声で訴える力しか持たないまま
艶めかしい唇の紅色に照る光の先を見出すように
つながらないまま終わるだろう夜を刻む時計が逆回りするのを見ながら
飛び去る直前のように組しだかれ
終わらないだけで始まる夜の帳の中に引き込まれ

いつから繰り返されたとも知れぬ悦楽と懲罰と
ただ歩くだけで終わる命の儚さと
抱くだけで壊れる偽りと真実とで出来た愛と
どの二つにも、三つにも裂かれ得ぬ貴方の瞳と
転変だけで築かれる貴方の心と

終わらないまま移り変わる季節の折り重なる中
微かに記憶される泉のさやけき響き
その唇から漏れ出でる、愉悦の響き
その響きの中に閉じ込められようと激しさを増す私
もはや飛び立つことからは遠ざかり、もがれた羽を数えるように
その愉悦を奪おうとする、私
2013-06-12 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

問わないで

それは卑怯と言われる
問うこと、問い掛けること、問いを抱くこと
弾き続けられた讃美歌の終わりを聴く前に、私達は世界を終わらせよう

問うことで遠ざかる世界のココにいて
私も貴方も、全てもが遠ざかる
もう貴方の掌の温もりも想い出せない遠くに遠ざかり
風を消す森の中から私達は互いを伺う

それでも降り終ることのない雨を振り払って欲しくて
私は貴方の名前を想い出せないままに叫んでいる
私の手では私を振り払うことが出来ないので
私は貴方を、貴方の名前を叫ぶのだ

耳孔に墜ちた一滴で消える世界の中で
大きく開く貴方の唇を見つめたまま空転する世界の空を見た
栄光に満ちた光柱が、ゆるやかに降り来るのを遠くに感じながら
響くことなく大きく開く貴方の唇を、空転する世界の空を

そして今、問うことを忘れていた
問わぬことを想い出したのだ

響かないままに大きく開く貴方の唇を見つめること
たおやかな首筋の下でたわわに揺れる乳房を見つめること
その乳首に唇を寄せてまつ毛を合わせること
温かな貴方の中に堕ちること
2013-06-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

終わる運命としての愛

伝え終わらなかった愛だけが叶うように終わる
終わる全てを知らなかったかのように異国の祭りは響く

ここには縁日が、出店で一杯の縁日があるから
その浴衣の袖端を、袖端に、少しだけつかまって良いかな
人ごみは苦手だよとつぶやき、苦笑いされたまま
花火の打ち上げられる時間は過ぎてゆく

光りの輪郭で区切られた世界の内と外を同時に見つめながら
僕たちは哀しみを置いてきた、雨だまりを想い出す
まだ、当分は終わりそうにない雨降りの中で踏まれゆく雨だまり
僕たちを降り、僕たちの間を降り
それは勘違いか、想い違いだったかもしれない

歩かないで、その歩みを止めて
吐息を、吐き終った、その吐息を止めて
もう、僕は立ち止まっているし
もう、僕は息を止めているし

ただ強く響く君の足音と吐息とが混じり
僕の命を削ってゆくから
僕の愛が削られてゆくから
どうか少しだけ、足を止めて欲しい
吐息を止めて、一緒に死んでいて欲しい
2013-06-10 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

残酷に、探すあなたに

書かれた中に彼を探してはならないし、書かれる中に彼を探してはならない。
書いている中に、書かれるだろう中に、すべての<書く>の中に彼を探してはならない。
探しても良いが、誰もがそうであるように見つかりはしないし、見つけて欲しいなんて想えやしないのだ。一匹だけで生きる、その虫を探さないでくれということなのだ。
世界中のノートに記された彼の<書く>を、世界中が記しているだろう彼の<書く>を忘れよう。
遠くに忘れ、壊れる少し前の心の中に想い出そう。
あなたの<書く>がそうであるように、わたしも探すことはないのだ
探すことを捨てること、それだけを想い出しながら歌われなかった愛の一かけらだけが手に食い込んで離れることがない-それが全てというように。
その掌からの流れ、それが全てだというように、その血は赤いだろうか?
それとも直ぐに酸化して黒く、足元から広がる全てを染めてゆくだろうか?
2013-06-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

想い出の中に浮かぶ

世界中に伸びる一本の線の端と端(そんなものがあれば、だが)
そこで私達は永遠の別れを知ることが出来るだろうか
別れ続ける永遠の中に安住して眠り続けることが出来るだろうか

僕はこちらに、僕はあちらに、と互いに背を向けて線を引きながら歩き始める夕暮れる前の夕暮空の下で、そこだけが平和な雲が穏やかな雲に乗り、流れてゆく

引き裂かれた世界から軍靴が響く時、産まれたばかりの狂気は初めての息をするだろう
その憎しみを身に受けて人々は叫ぶ
俺の腕は?俺の脚は?

あるはずもない愛の真実を求めて僕の影は空に遠く凹んでゆく蒼い月を追うだろう
名も知らぬ星だけを引き連れて、蒼く遠ざかる月の中に追うのだ

北と南に向けて強く糸が張られたとしても、世界が二つに引き裂かれることはない
その絶望を引き摺ったまま僕を月に送り、僕たちを蒼い月に送り
私はこうして、辛うじて立つことを知り
始めて座ること、横たわること、眠ることを想い出す
2013-06-08 15:32 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

アンチ・オイディプス(下巻チョイ):備忘録

1冊読むのに1週間も掛かっているというw
もっとも集中して読むと疲れるし、しゃーないかな、と。
相変わらず戻り読み(?)しながらだしのぅ・・・( ̄▽ ̄;

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2013-06-08 00:11 : 実験中&備忘録 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

アンチ・オイディプス周辺の非連続的断章

「アンチ・オイディプス」を読んでいて引っ掛かる用語の一つに「強度(内包)量」というのがある。元はカントの用語らしいが、ドゥルーズは「反復と差異」「意味の論理学」でも論じているらしく、しかも何を意味しているのか論議が絶えないらしい・・・^^;
個人的には「密度」とイメージすると理解し易いので、取り敢えず今は密度として読み替えて読み進めてる。強度に関連付けられた領域(土地)みたいなのも出てくるが、これは高密度物質が土地を凹ます範囲のようなものとして考えれば通らんでもないし。斜面が生じることもスジが通るし、少なくとも便利ではあるw

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2013-06-01 14:43 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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星々の冷却(書肆侃侃房)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
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