私を過ぎる雲よ、降る雨よ

雲の足あとには夕陽が宿るので妙に好きだけれど
雨の訪れは、どこか好きになれない

共に雨に打たれた記憶がないからか
窓を流れる雨ならば、その髪を想い出しながら
一粒一粒を追ったことはあるのだけれど

二人を包む雨音は、いつでも遠いもので
それが、そのまま二人の距離になるのか
抱き寄せる何ものもなく世界は朽ちている

葉を打ちなさい、雨よ
その肩には触れるな、雨よ
夕陽に消えず降り続けよ、雨よ
今、こうして佇む私の時の中に
2013-07-31 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

旅路を棄てる

夕陽の、涙の壊れる速さを追いかけ
待つ人もいなくなった旅の終わりが
ようやく旅立ちの駅舎となる

ただ崩れるままに地に触れる雨や雪や、雷などや
それらを象徴としている私達の影
始まりを知らない旅路と終わりを知らない旅路と
暮れる空に重ねられる陳腐さを嗤いながらも
それでも見上げずにいられぬとは

星の輪郭をなぞった指で触れて下さい
そこになら私達は存在することが出来るかもしれない

何を讃えるのか、この響き止まぬ鐘の音は
海も山も応えることがないままに
私達を弾劾しては幾度も幾度も通り過ぎ
ついに屈して地を食むのだ

腐食してゆく一葉の葉に愚痴を伝え
一つの鐘の音は心安んで去っていった
海面に戻る波の一つに同化して
一つの鐘の音は自ら鐘の音を捨てた

浜を歩く男たちは貝を拾っては鐘の音を探し
それを渡す女を探し
一日は、涙の壊れる前に始まる
2013-07-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

奇数の夜、偶数の眠りに就く - ゼロ

七つに放射分布させられた殺意と五つに分離集約する嘘とで
交差点には一本の道路だけが導かれる
三つに分かたれた夜空には、それぞれに二つの星が
やはり光ることなく暗闇を示している

これ以上、割れることのないガラスの破片を
足裏は、いつも踏みながら見えない血をにじませている
赤く光る星はヒトデとして浅い海を漂い蠢き
蚊取り線香の光にすら縋り寄る虫たちのように
魂を吸い取る大樹に寄り縋る生命たちは
隣り合わせの死に顔に驚き慄いている

夏に向かう夜の気怠さの内、正確な間隔で明滅する遠方の灯台の灯り
岬とは見当違いにある丘は、少し前まで海の際にあったのだ
防人は更に遠くまで歩いて行っては虚しい哨戒を繰り返し
ついに往路では索敵は叶わず、復路で打ち滅ぼされたのだった
海底に沈む彼らの唄は誰に届くことも期待されてはいないけれど
誰にでも届いてしまう響きで夏の夜は更けてゆく

海が大陸と大陸、陸と陸、島と島との間にあるように
それぞれの海の中に、それぞれの底に沈ませた者達を巡り会わせよう
歴史書に刻まれた彼らの唄を、少しは復唱するのも良いだろう
星は疎らな夜が良かろう
月はない夜が良かろう
太陽を知らない夜が良かろう
空を失った日が良かろう
そんな日は、夜は永遠に来ないから、そうしよう

隣で亡霊の顔をしてキスを迫る女と男と
空調の壊れた旧家の裸電球を叩く虫の羽音と
彼らを待ち受けるヤモリの不動と
脚長の蜘蛛は、歩けば五分は掛かる海から這い上がってくる

君を切り裂いたメスの光ならここにある
私の夏の掌の喧騒の中
星と月とを手放さない掌の喧騒の中だ
私が眠るだろう、その時に、君はそれを奪うのだ
固く結ばれた掌を切り裂いて、君はそれを奪わなくはならない
そして誰もがそうするように
それを君の掌の中に収め、素知らぬ顔をして行かなくてはならない
奇数について触れたのは、きっとそのためだったのだから
私は偶数を想い出すまで静かに眠りたいのだ
2013-07-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

昏い遠くで浮かぶ、小さな月よ

断ち切られた肢体の美しさよ
断面に映る青空は見えるか
青空に浮かぶ雲は見えるか
無人の寺院に巣食う悪夢を見終えるか

 詩人の涙の記憶に騙されて
 波音は水平線の彼方を目指す
 異邦の風に晒されて砂漠の月となるまで

語り終える物語の始まりが記憶されないまま
居座る先を見出せない花の蜜は蒼く染まり
白い幼虫の口の奥に取り敢えずは巣食うから
異臭に気付く前の女王を殺す青銅の騎士は急ぐ
掲げた剣の先に神の滴をも宿らせず
駆る馬の荒れた吐息と赤い汗を草叢に打ち棄てて

ただ悲鳴する女王の口奥に含まれる毒として
都市の歴史は無色の溶液となり
怨みを捨てた人民達の歴史に決別を告げる
傍らで泣くだけの哲人たち、そして詩人たち
王の帰還を待ち続けるだけの愚昧な側近
恋に呆けて全てを忘れる偉大なる王

断頭台から転げ落ちながら嗤い続ける静けさ
古い街を支配する静けさの中に生まれる廃墟
早駆けの馬の足音は放物線状の地平線を黄道に沿い昇る
仕組まれた巧みな隠喩は解き明かされることなく
意味のない死を穏やかに迎えるだろうか

僕は一億年程前の記憶を辿りつつ
語られたアンモナイトだけを採り出だし想い出す
幼少の頃に見た図鑑は水浸しになり皺を喰らい
まだ文字を読むことすら知らない僕の前で通り過ぎる時間と
これから訪れる冷酷な足音を重ねようとして
腐敗する時を刻み始めていたはずだ

今、こうしていて目前に浮かぶのは川べりの
崩れ落ちそうで、しかし網目状の根に抱えられた濃茶の土塊
その並びを浅く洗い、流れ続ける小波は川水を変えながら
変わらない波形を私に手渡しつつ元に戻る

独りだけで迎えた夕暮の微かな熱を背に受けると
三、四メートルほどの高さの土手の上には小さな三日月が浮かび
急に訪れた闇の中、いつか忘れた恋の感触を想い出し
ギュッと握り締めた手の平から、残酷にも涙は滑り落ち
乾いた瞳の痛みは、より暗い闇を求め
星のない月夜と小さな、小さな三日月だけを描いている
2013-07-08 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

砂の幻、夢の午後

夢で会えない幻を埋めた夜には
空を渡る銀河の砂粒を手にして波の音を知る
決して終わらない命と、いつかの約束
涙の洗い流した愛を探すと砂丘に迷った
0時の鐘が鳴る頃に、夜は終わりの準備を始める

想い出される恋は歌に刻まれ忘れられるものかは
止まったままの時の中に老いてゆく少女
少女を追い掛けたまま途切れる足跡
足跡を消しながら散る小波
小波から遠ざかる波音
水平線が訪れる異国を住まう彼も老いたか

強い陽射しが雨を呼ぶ午後
物憂く揺れる葉のリズムに酔いながら飲まれるのは紅茶である
向かいに座る人の飲むのはティー・カップに注がれたコーヒーである
大判のガラス向こうには止まったような飛沫を散らす噴水があり
恋人の語らう時間を早めるために周る時計があり
時計台の鐘の音を鳴り広げるのに十分な広場がある

引き裂かれた親を想い出す子供は男か、女か
想い出されるのは父か、母か
見上げる空に輝くのは太陽か、月か
夢の中で想い出されるのは出遭いか、別れか
夏の海に凍り沈んでゆく時間を見送ろう
少しづつ歩み滑りゆく帆船の盲目を船員たちは知らない

砂丘に接岸したのは波に揺られる三日月であったのだ
風のない夜、波は一層に揺蕩い、岸を求めていた
消えるべき砂の、その合間、合間を愛しながら
静かに砂の間に波は死に絶えながら岸を求め続けるのだ
2013-07-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

吉本隆明初期詩集「(海の風に)」:備忘録

講談社の文芸文庫は好きな作品も多くあるのだが、如何せん高いです・・・orz
「吉本隆明初期詩集」は本文P240ほどなのに\1,400-もするだー!
文字単価、めっさ高そうですw

この中に「(海の風に)」という作品が所収されていて、P33程の長いというか短いというか・・・という詩がある。
断続と持続とについて考えさせられる作品で、その点について若干。

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2013-07-06 13:45 : 実験中&備忘録 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

Never Rain On Any Friday

別れのない嘘の中に夢を見て
端を失ったままの道を進みながら戻る

反対だったら良かったのだろうか
嘘のない別れの中の夢
重ならない記憶だけが落ち葉のように舞い
積み重なるはずの未来を奪ってゆく

切り裂かれた雨の音の中に立ち尽くしながら
そこだけが明るい自動販売機のボタンを押し
飲み慣れないコーヒーの味を吐き出す

終わりを知らない残酷さには
死さえ遠過ぎる無限の延長と単純なループを

涙に引き裂かれた肌から訪れる雨の音
シャツに沁み込んだ眠りを払いのけては
独りだけでだけ眺められた夕暮を探し
二人だけでしか眺められなかった夜空に晒される

嫌いだったはずの歌が口ずさまれ
顔のない無数の人形の中の一体の顔が想い出され
鏨の響きに覆う耳は研ぎ澄まされてゆく
聴くはずだった全ては聴き終えていて
耳孔を無限としてどこまでも冒してゆく

石の重みだけを感じながら投げた先では
繋がらない過去と未来の離別の音がする

離別の音だけで繋がる過去と未来
永遠に訪れない別れに似た嘘と
永遠に分からない嘘に似た別れと
壊すことも壊れることも出来ない全てと
昨日、枯れたバラの香りの死と
自分の死体を見続ける私と金曜の降らない雨と
2013-07-06 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

一生徒として

後部座席が統べる場所を見渡すために
平行移動により中央に、非平行移動により中央外に
中核に迫る意思による中核からの離脱により
中核から最も離れた位置が中核であることに気付く

   誰もそこにはいなかった
   そこにいないから見ることが出来た
   見ることが出来る場所では
   見えないものは知ることすら出来ない

時刻が訪れる理由は時間の誕生から遠ざかる
死が訪れる理由が誕生から遠ざかるように
誕生が訪れる理由が死から遠ざかるように
詩人が謳うべき何ものも知らないように
詩集に謳われるべき言葉が知られないように

話の始まりは中央の席への移動だった
動く間、席が移りゆく間
深い谷間の奥にある小波の微かな音
それが空に跳ね返るのに似た音が踊り続けている

中央の席に座ると教師の声が遠くなった
講義を聞いていない誰の聞くよりも遠くで聞ける快感
友達を失う中央席は正しく位置付けられ
恋人を失う時刻を正しく読み取ることが出来
愛を忘れる季節を正しく迎えることが出来
誰にも譲りたくない意志が居座っていたのだった
2013-07-02 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

想い出すことなぞ、と

愛を知らぬ者によってのみ始めて、愛は語られる契機を得るのである
愛を知るものは、それを愛とは知らない
彼らはその時、愛そのものとして存在し得るだけなのだ
それは自らを慰めるようにしかセックスが訪れないのと同じなのである
自らわが身を切り裂き、自らの外に出で、他者として自らと交わるのだ
   私は貴方の私でないことを哀しむだろう、そして絶望する
月は、やはり月であることを知らないだろう
知っては、ならぬのだ

この夕暮は、陽が沈む、その寸刻の間すら
私を待っていてはくれぬのか
月だと知らない月は、夜空と呼ばれる空に
もう少ししたら昇るのだろう
愛したはずの全てを月明かりに託すことは悪いことじゃない
薄い影が夜道に張り付き、私の輪郭を薄らげてゆく
望んでいたように音のない世界と景色のない世界が融け
私は愛を知らぬことを望みながら面影を追い
少し重い水音に混じって朝の来ない海面を滑り
泣かないまま涙を流す方法を探しては
砂を目に入れ世界と私を霞ませていた
想い出は、忘れられる直前にだけ想い出せれば十分過ぎる
想い出せない全てに、届かない愛を贈ろう
2013-07-01 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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