色褪せたまま封を切り忘れていた手紙を見つけた日

そうして哀しみの真空帯を越えると風の激しさは増し
頬切る冷たさの刃は言葉を共に切り裂いて
伝えるべきと信じていた全てをも彼方へと追いやり
特に愛という偽りを微塵へと返してしまったのだった

 それが良いことだったのかは分からぬが
 救われようのない時には有難いものなのかもしれない

忘れるべきものを手放した気軽さと虚しさは格別で
もう二度と、そうでなかったことにはならないのだと
忘れる前にすら戻ることは出来ないのだと
ただ揺り椅子に身を預けたままに人は想い
そのリズムの中で生を刻むべき生活に戻ろうと足掻くが
如何せん不器用な人も多いのだと同情を禁じ得ない

-私の特技は忘れることです
そう言って明るく自らの席に座る少女
その隣から、ぶっきらぼうで不器用な挨拶しか出来ない少年
二人の間を何事もなく歩き抜ける教師
学校の教室は、いつでも三人で成り立っている
付け加えるならば三人の内の誰でもない誰かが添える花瓶

夏の日差しを避けながら秋は静かに訪れるものだろうか
急激に冷え始めた朝夕の風に吹かれながら
遮られた視界の先に見出そうとする夕景の影
いっそうのこと美しい雪に埋もれてしまえば良いのにと
プールの水面を撫でながら泳いだように
空っぽの時間は誰知らず過ぎてゆく
想う人を置き去りに、あるいは先んじて

その歌を懐かしんではならない
どこへも、誰にも聞かれずに遠くへ送った歌
今日の夜、どこかで歌われているかもしれない歌
それは、もう歌い終えたのだ
もう今は、ほんの少しだけかもしれないけれど
新しい歌を覚えながら眠るべきなのだ
2013-08-31 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

窓枠から沈黙を

雨の匂いに混じり、出遭いは別れを告げる
雨の気配に混じる終わりを知り
雨音に混じる始まりの不在に気付き
告げるべきものが別れだけだと知るからだ
雨の匂いに触れて街を歩いたからだ

あてどなく彷徨う人波に交差する
持主を失った哀しみを
乾いた骨の音だけが謳い続けている
森の記憶を掻き消され
ただ戻る所を求めているだけだというのに
叶わない夢に骨は

夕闇に紛れて花の香りに似せたシャンプーを
振り返る先に濡れ始めた終わりの壁を
時を忘れられない哀しみには虚しさを
川の流れに沿いながら数えた
そう、知らぬままで良い全てを数えた

降る雨を、地に触れる前の雨を止めて下さい
その中を少しだけ歩かせて下さい
雨粒の形を、止まった雨粒の形を頬に受け
涙に替えて流したフリをしてみたいのです

乾いた空を黙って見ていた少女は
窓越しに棚引く雲に祈る
遠ければ遠いほど叶うかのように遠くに祈る
その髪を吹く風を受けながら私達は
消えゆくことの優しさを願い
いつまでも尽きない話を探しながら
やはり一緒に黙っていた
2013-08-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

花の香りは海を知らない

切り取った波を花の香りに包んで置いた
椅子の表面の歪みは、仄優しい
触れ、辿る指先の行方には光を置く
誰も知らない、見たことのない光
光ることを忘れたままの光
決して見ることの出来ない光だ

やがて想う人がいるだろう
-留まったままの光は光なのだろうか
-届く先のない光は、それでも光であるのあろうか
応える人はいないだろう
問うてはならないと言う人ならいるかもしれない

包まれたのは、そういう光に替わる花の香りだ
留まることだけを自らに課した者達
進むことを拒否したままであろうとした者達
戻る先を捨て去った者達
留まる場所を失ってしまった者達だ

大通りに面した、座ったここから見えるだろうか
その先の角を曲がると広大な庭が広がる邸宅があり
アンティークな家具が窓際から覗き
人影は時折は揺れることもある過去の家

みすぼらしい老婆の指差し語り始める大邸宅の呪縛
常に花の香りに満ちたまま朽ちていった呪いの館
光を求め、それがために光を棄てた者達の集う部屋
暗闇の中でだけ輝いて見える不思議な闇
囚われの者達が知らずに開ける光る闇

もう一度、波を切り取りに海に向かう
変らぬ空だけが延々と続き、海を忘れる程に倦む
この終わりなき平野を満たす亡霊と
その足音の幻聴は途絶えることがない
花の枯れる時を忘れたまま、海を想い出すことを拒絶され
葬列の最後尾は常に慌ただしい
2013-08-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

綴られないままに明日は

蒼い夕暮れに、綴られない明日は
九十九折に打つ波に揺られ
佇む花の綻びを繕いながら追い立てられ
重なる背の負った重みだけを下ろし
破れたままの傘を煽る風と泣き、荒び

対岸を失った波音と渡りきることのない海を渡り
嵐に出遭っては、その一かけらとなり
哀しみを失った深海に降り注ぐ雪を想い
その歩む速度を失い、立ち止まる場所を失い
嘆くことを許されず、消えることを許されず

跳ねる水音の驚きを受け取る微笑みに
降り始めの雨は傘を打つことを諦め
留まった時の中でだけ優しい全てと残酷な全てと
やるせないまま過ごした夜の記憶と
放られることなく手中に残った小石にと身を寄せる

二つとて合わすことの出来ない二枚貝の貝殻を引きはがし
その中に閉じ籠められたままの永遠の優しさは
地上に届くことなく消える光に照らされる残酷さであって
その同一性を哀しみと名付けてはいたものの
それは深く失われ

そんな時には貴方の声を想う
柔らかな胸の膨らみの温かさを想う
慈愛というものを想い出させる瞳を想う
聞くだに眠らせてくれる心臓の響きを想う
それら全てを失ったことを想う
ここにいない私のことを想う
2013-08-28 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

残照の内に向かう時の過ぎる中


終わることを知らない夏の後ろ姿を見送りながら吐く星の溜息が
終わり朽ちてゆく忘却の中でだけ成就する愛とが重なる時
古い時代の小石を重しにされ飛べないままの、その一葉に緑は宿り始め
風の吹き忘れた丘の上に墜ちる星屑と共に光り始めよう
遠い大地を覆う光に宿る偽りの愛の営みに始まりと終わりを与えよう

いくつかの物語、その欠片は誰彼の掌の中で囁かれ続け
届くはずのない耳朶を甘噛みしながら時計の音に耳を澄ませているが
過ぎる車窓と車窓とを跨ぐ架空の夕陽の鋭さに切り裂かれては散り散りと消え
その儚さ故に、また拾うものも訪れるというものだ

ぼんやりとした光輪の中では、いくつかは知っている顔が
多くは知らない顔がひしめき、テラスを行き来し続ける足音は冷たく
直ぐに手の届く遥かな遠方に遠ざかりながら笑い声を連れ去るが
残された温もりは手すりの全てとなって
いくつもの影達が、ただ、その背を預け、哀しみを預け、預け
あの射抜くような野生の瞳に恥じらい俯いてはすすり泣いている

記憶の遠さが誘い連れ来る物語をページに書き記しては暖炉にくべ
幾度も忘れられた拒絶が引き裂かれる叫びと嘆きと
ただ白いままに燃やされてゆく無数のページとペン先の渇きと
輪郭だけを薔薇に託したイミテーションと贈り損われた一瞬と

残照の内を、ただ忘れられたままに満月は昇り始め
宿るべき瞳を探しては夜を彷徨い続けるのだろうけれど
森の静けさの中にだけ燃える、その瞳には暗闇だけが宿り
失われ続けた星の残骸も時折の気紛れには微かな救済を恋い焦がれながら
ただ過ぎる全ての中で捨て去られるのを待つだけでしかないのだ
2013-08-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

報われないと・・・

何故か「娘盛りを無駄にするなと♪」のフレーズが繰り返し想い浮かんでいた一日でした^^;


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2013-08-05 18:40 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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想一葉、兼訪問帳

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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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