<ある日>の肖像Ⅲ(時計の傍らにて)

サヨナラと告げるためだけに降る雪の冷たさで愛は交わされ
捨てた窓の中でだけ生きる少女のように曇天を見上げている
刻銘されていない詩人の碑は嗤ったままで
定めの言葉通りに切り裂かれた世界を歩いている

その鐘は草原の、丘の向こうにあり
留まらない影の儚さに青い木立の蜃気楼は沈む
今日の終わりは雪に重ねられて、地平線に散る落葉は未来を語るが
鐘の音は過去を語り継ぎながら飽きることがない

階段の縁に引っ掛けてしまっていた時間を拾ってくれますか?

愛が始まる前にだけ愛する人々の無関心を包む街を愛し
ただ通り過ぎるだけの風になりたがる人々の空虚な好奇心を包む街を愛し
ただ壊れるためだけに造られた花のように、あなたは笑った

ああ、いつの間にか街に着いていたのですね、気付きませんでした

夜に紛れた夕暮の暗さの中で微かに光る噴水を想い出す
ひんやりとした空気を漂わせながら私とあなたの間を駆けぬける過去は持主を知らないままだった
時間があれば拾っていただろうけれど、私の前には階段がなかったのだ

滑らないようにだけ気を付けながら星を降ろう
雪の降るように光る星の数だけ窓を割りながら
曇天の夜、雲間に輝く星を見出すことは出来ず
その頬に光る蛍が飛び立つのを待って光を忘れよう

細い指先が伝う時の流れを滑らかに滑る時計の針よ
少女と少年の間を永遠にする時計の針よ
千年の孤独と呼ばれた、その時間を指し示し
喧騒の内に静かに止まる指先よ

画面を切り替えるだけで愛する人は切り替えらえたが
その指先だけは変わることがないまま、スイッチを切り始める
だから飽きもせず沈黙する波を待つ星のようにインクの染みを見つめ続ける
長過ぎた時間の痕は長過ぎる眠りが消そうとする
2014-04-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

Silent-Night(2013/12/25記)

粉雪に洗われながら蒼く点灯する抱擁が
最後の出遭いを待つ街の中
一片の花びらさえ舞わない微風にも抗えない愛に消え
その風を運命と名付けながら人々は通り過ぎる

スリ硝子越しの日輪を想い浮かべるだけで
伸びる道の行先が水平線に変る夜は訪れ
軋む枯葉の音は氷の融ける時間に迷い込もうとする

聞き覚えのない足音を連れた足跡だけが続き
波の訪れない海を影とする干乾びたテトラポットと
その間を縫うように浮かび上がってくる人波と
哀しみのように、まだ降り続こうとする粉雪と
輪郭だけが残される全ての想い出で
全ての始まりは祝福されながら静かに死に絶え
希望のないままの日常は微笑み見つめられている

逸る気持ちに応えようとする足音が、残酷に響く
遠ざかる眠りの中でだけ愛した人達の
忘れる遥か手前で愛してしまった人達の時刻に
もう一度だけ一片の粉雪として静けさは眠り
静けさの亀裂に投じられた記憶の一つとして炎は揺らぎ
過ぎることを許されないままに夜は壊れてゆく
2014-04-29 21:49 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
ホーム

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補