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明るい陽が靄って見えるのは
零れない君の涙が視線を過ぎるから
見えない哀しさが
ただ沈み、潜り込む先だけを求めている
見えないだけで私は
いとも安っぽく哀しんでしまうのだ
流されなかった涙の筋が傷痕となり
それが永久に残って私の記憶となる
想い出せないけれど記憶となる
知らない街で強い雨に打たれる君に並び
架空の私は違う雨に打たれている
見つからないことばを宙に探り
手に取る以上のことばが虚しく流れ
いっそう君は激しい雨に打たれる
見えないままになにがあるのか
その足音すら聴けないまま
君の哀しみだけを追い続けている
2014-08-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

それは本当に白い雪

好きだとも気付けない時と場所に封じられ
繰り返される風のようなキス
告白は告解に似て別れの兆しか

待つ時間を持たずに待つ人の元へは
海波に似た川が流れ込んできて
感情/情緒のすべてを押し流していた

変わる風景を持たずに交わされるのは
ことば以前のことばでしかなく
会話の果て、不毛さの哀しみへの転化を、ただ
じっと耐えている空のない街を
否定する歩き方で角を曲がり続け
幾度も同じ場所に立ち尽くしている

ただ待っていたのは白い雪
黙ったままの二人を静かに覆うように
誰も知らなままに、ただ降り続けるだけの
白い・・・本当に白いだけの雪だった
2014-08-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

川の夕景

夕暮を拒否しようとする空が
哀しげに見える窓は閉じられたままで
じっさい、ガラスの屈折こそが
哀しみを作り出していたのだ
いくつもの川をまたいでも
川は流れるものであることを止めず
まるで死んだまま生きているようだ
放り込まれた石は川底で別の石になるが
投身すれば別の身として蘇るのか-
浅さだけで夕陽を受ける幅広の川は
跳ねる魚の光で忙しく
学校帰りの子供たちの嬌声を招いている
川沿いを行けば繁った葉に埋もれた木があり
そこには赤い屋根の小さな家がある
きっと誰もいない家だけれど
夕陽に美しく照っている家がある
2014-08-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

鼓動の意味

空しさの中だけを生きるために
忙しさは必要とされ
むしろ作り出されたのだろうけれど
立ち止まりを許されない人波のなか
一人二人は立ち止まってしまう人がいる
せめて忙しげな足音に耳を澄まし
聞こえてくる涙の音、遺棄された叫び-
空しさを埋める、それらを少しは拾おうか
さらに季節の巡りも分からなくなれば
もはや愛/別れでだけ生きているのだろうし
それも良いんじゃないか、と想えてくる
橋の両端には、いつも、そんな二人が
通り過ぎる人並みに分けられて立っている
聞こえてこようとする音楽には耳を塞ぎ
足裏で人波の足音を聞いている
そこに混じる微かな<君の鼓動>があれば
二人にとって、それで十分じゃないかと想う
2014-08-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

いっそ狂気のキスをして

それでも血が流れることなく
裂けたままの傷を愛した

決して傷痕に還元されることなく
触れる者を裂かずにはいられぬ傷には
どんなに透き通った光より
存在の希薄な狂気のキスをして
永遠に流れ続ける血を与え
決して再誕しない
滅びの哀しみに変えるのだ

希望よりも絶望に近い暁を
星が幾度も流れ駆けるように私たちは
孤独になれない早さで別れ続け
増え続ける傷に埋もれゆくのだ
2014-08-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

木陰のアゲハ蝶

(あの羽ばたきは血液、体液かな?
 を冷ますものだったっけかな・・)
庭の木陰のアゲハ蝶が
飛ばない羽ばたきを繰り返すのを見ながら
どうにも想い出しあぐねていた(意味を-)
エアコンを止めて風を待っていたが
大きく開かれた窓からは
さやとさえ風の入る気配はなく
寂しさは小さな木陰の重なりから来るようだった
(そういえば、ここ数年来、
 クロアゲハを見ていないな・・・)
アゲハ蝶とクロアゲハは生息域が違うのか
それとも縄張りの重なりをしないのか
どちらにしても、あの人と私のようなものか
(縄張りを主張なんてしないけれど)
哀しみは<異種/異物>からもたらされた
遺棄されるものとして私は愛するけれど
それ自体は哀しみではない
もっと違う-
たとえば波に置いてゆかれる風が吹き止んだ時
限りなく薄い記憶域にも見つからない面影の置き場
時/場に置き換えてみれば、そんなものだろうか
時計に気づいて後、見返すと
もうアゲハ蝶はおらず、木陰だけが残され
ただ暑いだけの夏が窓の外には広がっている
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ある詩人の肖像

数え零れた季節のなかを通り
いくつかの言葉も懐に入れはし
過ぎる風景の様式にも少しは慣れすると
詩人の足跡は彼が持つ言葉ではなく
一つの方法だった
夕暮から訪れる波の喪われた記憶
遠さの涯にある光を灯す哀しみ
強く抱くほどに訪れる孤独
それらも、また対象ですらなく
一つの方法のなかに溶けこんでゆく-
ただ置かれただけの絵画が風景の一つとなり
やがて、そのうちに消えてしまうように
消えてゆくだけのための一つの方法/様式-
冷たさ(温かさも)は、だからことばにではなく
方法/様式において規定された
消えてゆくことに関する諸々は
それらの背後に本体とはかけ離れた影として
あるいは水平線上の蜃気楼としての
複雑な屈折の過程でしかなく
それが詩人を<別の孤独>に追いやるのだ
泣き、叫ばれることもなく過ぎた季節
青さのなかに、記憶の範囲外に
逸れつづけてゆく季節のなかでだけ
詩人は語ろうとし、激しく慟哭していた
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

積雪底

密度ではなく硬度で語られ
昨日は既に記憶の底に沈んでいる
何万年もの積雪底のように硬度が遠さだった
柔らかな陽に当たるのは瞬間だけで
過ぎればガラスのように脆く
(しかしガラスは液体なのだ)
より硬い記憶に刺され
次々と死に絶えてゆく今、今日(という雪)
昨日だけが永遠に降り積もる雪のなかへと
確かに約束されなかった愛のように
深い積雪底は、それでも海を目指す
北海との接点で氷河は再誕し
再び三度、何度でも永遠を私たちに贈る
寄せる波が、その永遠の記憶だし
記憶は忘れられたままで<在る>ものだった
湾岸沿いに駅舎だけが並べられ
しかしレールはとぎれとぎれで-
土地の所有権が横切ったままなのだ
それに似て記憶は繋がらないし、そのように
なににも繋がらない君だけを愛し
君の沈んでゆく積雪を愛した
そして硬化した君に刺され
死にゆく私/永遠の今日
繰り返されることのない夜の終わりを告げて
君は優しさのなかで去り続けているが・・・
割れた花瓶に挿し直された花が咲き
その柔らかさは破片の硬さを愛し
切り裂かれる痛みさえも愛に変えていた
しかし、もう、雪は降らないだろう
どれだけ寒くとも、厚い雲に覆われようとも
硬度の限界を越えて、なおも
流れゆこうとしない積雪底たち
雪原には、もう、雪は必要ないのだ
ただ硬度の限界をゆく記憶だけが残され
静かに私を刺し殺し続けるだけだから
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夕立の喫茶店

夕立が来ると狂犬病のように犬が吠える
生まれてきておぼれた彼にとって
愛は乾いた日にしか与えられない
激しい雨が遠雷をさらに遠ざけていたが
近場での落雷もなくはなかった
空を稲光が走ると、もう夕暮は終わっていた
雨に流されて喪われたことばは忘れられたままで
妙に饒舌な会話がホームを満たす
だれもが疲れた顔をして
抱えるには少し多過ぎる愛を
隣り合う人、隣り合う人に手渡していた
近いということは、そういうことなのかもしれない
雨除けに立ち寄る喫茶店には、もう窓がない
激しい雨は窓を奪ってゆくのだ
愛の遠ざかり方に似ていて前触れのない奪われ方だった
コーヒーの横には数百年前に殻だけになった巻貝
煙草の煙が少しかかると魔法にかかったように
薄明りのなかで蠢くようだった
ただ疲れだけを集めて帰るだけの日々と
ただ哀しみだけを集めて帰るだけの日々に
どういう違いがあるのだろう
愛することと日常には違いなどなく
ただ過ぎることのない倦怠感だけが残され
二度と見たくない夜明けを幾度でも送り込んでくる
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

君のいる季節

目が覚め、眠気が薄らいでいくと、もう
そこには君はいないで、ただ独りの時間が待っていたし
独りきりの時間のなかでは誰とでも話したし
誰とでも笑いあったし-(独りきりの時間のなかで
君と会えるとしたら眠っている時間?
それでも夢の波間にすら君が現れることはなく
(ああ、幻だったんだ)
と知ることしか残されずにいる
愛の不毛以前には哀しみの不毛が語られるように
越えるべき障害の前には越えるべき時間すらがなかった
乾いた笑いのように落葉が舞う舗道では
枯れることを忘れたままの落葉が
虚しさから遠い空虚の歴史を作り続けている
幾度も踏めば哀しみの一つも微かには蘇るだろうか
愛した無名の川を遡上して波打際に出たのなら
砂間に消えてゆく波に伝えて欲しいことがあったが
どの伝言もそうであるように忘れて/消えてしまった
君が誰であるかを忘れたのは、その前の季節-
昨日が、いつでも一つ前の季節であるように
今日も今日の季節としてだけ哀しみもなく終わるのだろう
明るい陽射しの下、空腹で美味い朝食をとりたくても
空腹がやってくるのは誰もいない闇の夜でしかなく
虚しさを流し込むように夜食を摂っては
なにかが足りないということすら忘れてゆくようだった
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

高度/深度

登る坂も、下る坂も喪われていた
私たちが出遭い、別れゆくだろう街には
どこの街にあってもそうであるように、
高度は友情や愛情さえをも語るに必要なものだ
しかし街には坂がないし、高さもない
あらゆる高度/深度が喪われたという以上に
追いつきようがない早さで喪われ続けている
花屋が好きだった少女が歩くには良いし
本を読みながら歩くのにも良いかもしれない
彼らは街に住まない人たちだから
しかし街から坂を喪わせているのは
もっと別の人/ナニカなのであって
つまり海も山も、あらゆる高さがないのでなく
浅い眠りも深い眠りもなく
深い愛も浅い愛もなかった
あらゆる仮定・虚構が許され認められ
あらゆる思考・感情が許されず廃棄された
あらゆる高度/深度の喪われてゆくなか
冷たさ-心の冷えゆく冷気だけを胸にかき抱き
街の隅という隅、街でない街を求める
身冷えする冷たささえ奪われないように
(それすら高度/深度だった)
2014-08-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

青い/空っぽ

なんなのかな、この空っぽは
干乾びていても中身の一つでもあれば
カランと一音でも響こうもの
むしろ叩く殻があろうもの
ただの空っぽには殻もないのか
どこからどこやらも分からぬままだ
ほんとうに空っぽなのかも怪しいもんだ
ただ空っぽらしいと想うだけの空っぽ、か
星もない中天には、ひたすらに青い三日月
ひたすらに青いだけの光が降る
風に舞う淡雪よりもゆっくりと
ひたすらに青いだけの光が降る
四方まるごとに一本の木も
果てもない雪原のまん真ん中で
白いだけのはずの雪原のまん真ん中で
空より青い雪が積もってゆく
降る間にも青く染まる雪が積もってく
人型をした樹氷も青く埋もれてく
空っぽのことは分からないまま
ひたすらに青い三日月と
ひたすらに青い雪だけ
そんなのも良いんじゃない?と-
2014-08-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

古~い、お話

それは禁断によって開かれてしまう可能性だ
その残酷さが切り裂く大地/大空だ
別離によって愛が始まるように
禁断は可能性を開いてしまう
(あるいは禁忌、禁止、拒絶など)
悲劇は大真面目に演じられれば演じられるほど
滑稽さを増してしまうのだ(それこそが悲劇性だ)
可能性は、その不可能性に宿るし
川と海との関係とにも似ている
愛してはならない人を愛することに似ている
古来からの<定型>に過ぎないのだ、それは
だから、すべての川を涸渇させよ
孤独をあいするのならば
海に、仮の海としての湖沼に注ぎ込む前に
川は涸渇し途絶しなくてはならぬ
救い/希望の前に絶望が与えられるように
むしろ私たちは希望ではなく絶望を生きる者だ
だから哀しみは決して手放されず
ただ川面を流れてゆくだけの葉の一枚にも哀しくなり
その哀しみに生きてしまうような者なのだ
だから、いかに古くからの<定型>とはいえ
もう、いい加減によいではないか-
打ち寄せる波に乗り寄せる哀しみは哀しみで
ただ哀しみとして哀しむがよい
空を独りゆく雲の寂しさは寂しさで
ただ寂しさとして寂しむがよい
<その契機>に狂おしめられるのは、もう沢山だ
「いざや、サラバ」と告げる一人もなくて
ただ独り、ひっそりと心の裡で呟くだけで良いのだ
抱えよ・・・抱えよ!!
出遭いの禁断に誘惑されることなく
すべての別離を、それでも哀しむのなら、ただ独り
そっと「サヨウナラ」と胸の裡で呟くがよい
2014-08-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

遠きにありて、なお-

推し量れない重さを
どうして量れというのか、君は
波に砕ける光より軽く
一瞬だけしか生きない私に
重さを与えようとも言わず

寄りくる君よりも去りゆく君に慣れ親しみ
むしろ、その背だけを愛し始めたというのに
もはや存在は重さではなく軽さなのだ
色濃さではなく透明さなのだ
この身を切り刻まれる哀しみに
もう耐えられぬではない

片手で数えるに足る未来は
数多、あり得た過去にすら劣る
静かな詩集を開き、あるいは眠りに就くこと-
それが君の与えた残酷さだが
私も受け入れた残酷さなのだが

湖畔に立てば霧が訪れ
光度の低い星が徐々に消えてゆく・・・
しかし、それは見えないというだけの
今、裏側にある太陽さえ見えぬような
単なる物理現象に過ぎない(すべてと同じく)
だのに君は陽を見よと言うに等しく言う
「知らぬ、知らぬ!」
と、幼子のように叫べたら
とも、温かな胸のなかを想えば呟きも出来ない

枯木に水やりする残酷さだ、それは
しかし同時に、それが君の優しさだ
ゲームで不意に訪れるチャンス・タイム
ほとんど誰もが使うことの出来ない
チャンス・タイムに似て-

ああ、軽すぎて、なお丁度よいのに・・・
不在のものの如く、むしろ非在の如くに
死せる中也の情けなさを嗤うことも出来ぬ、か
-降り来たる蛍の重さも敵うまじ
 想い残され うらめしき哉

むしろ軽く、非在に近く軽く-
あまりにも遠い、この距離は・・・
そのまま軽さではないのか?
2014-08-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

訪れすらない

今日も訪れることのない人を待った
浅いまどろみを棄てれば陽は高く
忙しげな人々の波が街を闊歩しているだろう
(私のいない波のなかでなら訪れるだろうか-)
街は時間帯で出来ていて
走る車、曳かれる自転車、押される手車-
人々や犬、猫までもが時間帯に沿って波となる
凍結したままの波が時間帯に沿い、押し寄せるのだ
あるいは、それは凍結した時間帯
街路樹の揺れる時間帯、街路樹の落葉する時間帯
訪れることのない人が訪れる時間帯は、ついにない
そうして過ぎてゆく一日を
熱し過ぎた公園の池から飛び出す魚が路面で見上げる
吸うことの出来ない空気に囲まれて、それも
水のなかよりは幾分も良い終わり方だ
走り寄る数匹の猫たちの、片目が潰れた一匹
その奥に光を喪ったままの永遠の闇を放り込み
誰も振り向かない午後が過ぎ
直ぐに誰もいない夕暮が迫ってくる
訪れることのない人は待たれるままだ(誰?)
視線を落とした書類から顔を上げる人がいれば
一日は、もう、それだけで終わりに向かう夜
また、いずれ浅いまどろみだけが延々と続く時間帯
訪れることのない人を待ち続ける時間帯が延長され
哀しみを喪った涙の一つでも零れてみようか・・・
読み終えていない本を手に取り
それだけで読み終えて元に戻すだろう
積まれた数冊の本のなかでは知らない時間帯が綴じられ
そこにまでは誰も訪れることはないように
今日も訪れることのない人を待った
2014-08-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

川面の煌めきのなかにすら

どれだけの分割が続くと言えるのか
奪われることは与えられることだと聞いた
<分割=奪われ>としての私
を波頭に置き去りにした私と-
声を喪った文字が、文字を響き
一つの雲が切り裂かれて別れゆく
「詮無い詮無い、哀しい哀しい・・・」
幼子のように私の心が訴えるけれど
それさえ分かれ別れてゆくのだ
私のなかにだけ流れる川面の
一つの瞬間、その煌めきの間にすら
もし、裂けるだけのために喉があり
私の叫びが喉を裂くのなら、と
想うときがないではないが-
完全なる忘却を許さない怪しい記憶
さざ波に揺れる光のなかに見えない面影
それらも分割/奪われしものたちだ
 知らない私が、知らない君を愛し
 知らない日々を過ごし
 知らないままに別れたそうだよ
まだ足りないのだ分割/奪われ、が
ナイフをあてて引けば切れる薄皮を
少しづつはぎ取ってゆくように
<私>は永遠の分割/奪われのなかにいる
いくつもの、さらに増える、いくつもの永遠の-
与えたい/与えられる<私>など
「結局は、どこにもないじゃないか・・・」
呟いて吐きだす煙は粒子に分かれて消える
2014-08-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

瞬間/海峡

海が二つあれば海峡は静かだ
鏡となって静かだ
二つともども海が荒れても
海峡は静かに、二つの海に面している
どんな憂いも迷いもなく
海が三つに、あるいはなっても
海峡は静かに陸を目指しているだろう
雨粒が地に、葉に、あるいは傘に
人の肩に、花に、様々なものに触れ
いくつかになる
その瞬間こそが海峡だ
存在しない無音である瞬間が、海峡だ
遥かな海原も夢見ない
黙って陸を目指している
それは荒野か、沃野か
そんなことすら、どうでも良いのだ
二つ海に挟まれて、ただ海峡は
静かに陸を目指している
届かない陸を、届こうともせず
ただ海峡であり続けるまま
静かに、うんと静かに陸を目指している
2014-08-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

帆船の出航

遠近法を正確に反対になぞりながら
なにも知らない君について
ぼくは君の恋人以上に知るだろう
磯の小さな洞穴に潜み消える波|音
断裂された哀しみに消える海|辺
海から始まり海で最期を迎えられない
すべてのことについて
意味しないことばを集めて語る夕暮
ぼくは遠くない海に出る
頼りない陸風が吹き始めると帆船が
哀しく水平線を目指す“かのように”出航する
(しかし水平線を目指してはいないのだ)
ガラスを透過した光のように
微かな濁りを帯びて海面を反射する夕陽
割れて始めて一つになる一つの太陽が
夕暮を急いで傾きを垂直に変える水平線を
帆船を越えて横切ってゆく紙飛行機
「あれは私が折った/追ったのよ」
聞いてはいない振りにだけ呟かれる
やがて訪れる朝を中断して無意味な夜が過ぎ
ぼくは少しの涙を見つめることすら出来ず
ほんの少し、知られていない君を知るだろう
2014-08-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

廃棄

結局は自分とだけ出遭う記憶を抱え
「自分となんて会えるわけはないじゃないの」
と、角を曲がってきた君が笑うのを待っていた
幾度、送っても空の焼け方が同じでしかない夕暮のなか
それでも別れることで愛するのだとしか想いつかず
まず、ぼくは、ぼくの記憶を辿りながら君/ぼくを探す
出遭ってもいない君/ぼくを探すのだ-
そして溺れゆくのは記憶の汀線のなかでだけ、
陽に照らされる君の声を追う、もう一人の君/ぼくだ
遠ざかる別れが、別れの困難さを物語りながら
笑い声が木霊するような波打際には空のビン-
うちにこだまするのは、ぼくの拙い愛/哀歌か
♪薄紙一枚の隔てだけで追えぬ面影を
 それでも追い続けるというのか♪
(違うだろ・・・更に隔てすることを探している)
「ほんとうに、そうなのかしら?」
曖昧な記憶のなかで溶け、一つになってゆく君/ぼくが
なんとも意地の悪い問いを投げ掛けてくる
「そうでなくてもオダブツするまでの暫しのことだよ」
精一杯に気取って、ぼくは君/ぼくに答えたのさ
2014-08-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

不同一性/愛

「世界なんて終わりにしてくれるなら
 なんと喜ばしいことかいなぁ」
呟き続ける古老が風に見捨てられたままの丘の上
君の不在する足跡だけを踏み歩いて
その自由さのなかでだけ息をした/出来た
空と山との区分けであることを止めた稜線が
所詮は限りある遠さを嘆く時間は
それでも飲み込もうとする歴史への逆行か
過ごされれなかった時間のなかでだけ
出会い、語り合う二人は幻想の一人で
波の終わる時間については沈黙している
すべての不同一性/愛の象徴としての繰り返しの波と
私と君との間を繰り返す距離、時間-
その不毛を生きることが老いを招いた
忘却以前の記憶に依る歴史を埋設して固め
その上に敷設された線路だけが棄却されて走る汽車はなく
始発駅/最終駅だけが待つ蛍の舞いで消える季節
確かさのなかにはない愛を抱く雪のように吐息が漏れ
立ち止まる空に、風はない
2014-08-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

非記憶

断裂した水平線が、折り重なりだろうか
地層を形成しながら消えようとしている
縮むことのない距離-それは・・・
もはや距離ではないのではないか?
遠く君へと流れ着くだろう波に乗る
数多の漂着物の一つにすら私は含まれず
不在のままに波を見送る(ことすら許されず)
記憶の底に沈んでゆく非記憶たちと
そこに潜んでゆくのだろう君の面影と-
近づきも遠ざかりも許されないのが
きっと厳格な定めであり、規定された私なのだ
ならば規定された位置/距離に甘んじて留まろう
そこには哀しみしかないだろうから、きっと
私は哀しみそのものとして存在出来るだろう
記憶の層に移行することも出来るだろう
私は私の記憶の一つに成り変わるのだ
引き裂かれた空の向こうには吸い込まれる
世界に裂目を作るとしたら、むしろ
それは私たち自身であるのだ
記憶であり裂目であり、規定された位置/距離
ああ、断裂した水平線、厚みのない地層たち
私は笑うしかないほどに、希薄だった
2014-08-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

尾のない狼

もはや/そして断片としてのみ訪れる夜と夜は
一番いの死として生まれる狼の足音である
どちらも架空である月と月
一方が三日月であるのなら一方は満月でしかない
そういった<月の群れ>のなかからか
もう風の起原だけでしかない雪原は
最期に彼を手向けて白さと透明さとの奥深くへと
(それは闇より闇に近い)
問うことを禁忌にされた起原が伴われ
微かな光が吹くだけで川が結晶となって
狼の渡河を許してゆく川の平行線だけを狼は歩む
(海へと?それは違うだろう)
もしくは森/灌木のなかへと消えてゆく平行線だ
意味ありげに風の吹く足跡から足跡を辿り
しかし、どこでも意味は喪われたまま-
不定形の輪郭を保つのは意志ではなく哀しみである
語られようとする一つの哀しみこそが
-不定形の輪郭を生きること-
彼をして歩ませ、息ませる
降らない雪の何万年分もの記憶のなかで
さやかな月明かりだけで数億年分の記憶が消えてゆく
彼をして歩ませ、息ませる
いくつもの断片化された夜が同時に訪れるように
彼をして歩ませ、息ませる
2014-08-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

交点で涙する

死に絶えた風ならば消えた丘の頂点に
(そんな場所はないが)
刻印された墓標としての
街/街でないもの/更に街-
歩みを棄てた午後だけが訪れる木陰から
輪郭だけの山を通り抜けた視界には海
波の立たない海面を反映するだけの光である海
漂着物の示す海岸線は陸遠くに後退/退廃し
だれもが通る幾筋もに引かれた湾岸線が
真っ直ぐに伸びて歪曲を訪れると海である
廃棄され尽くしたはずの時計すらが時を刻む海である
もう誰も見ることのない-
訪れても、なお見ることのない、海である
「ああ海風だなぁ-
 こんなそよ風にも混じっているねぇ・・・」
(お前の鼻の記憶は消しておいてやろう・・・
 海風など二度と吹くもんか!)
別れようとする恋人たち/別れ損ねた恋人たち
二つの種類の恋人たちだけが午後を過ごし
手渡される/手向けられるのは、ああ木陰
私は別の陰を探して公園にでも行こう
都会のただ中で忘れられた一坪もない公園
(それは、ただの更地/空き地らしい)
その公園の頂点になら丘が潜んでいるから
私は死に絶えた風に涙することが出来るだろう
無風を生きる、高度のない丘の上に立ち
2014-08-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

名前のない星

涙になれる一粒はうらやましいやねぇ
もしやしたら彼女の頬を伝ってさ
哀しみの少しだけでも抱いて去れるもの
雨になれる一粒はうらやましいやねぇ
もしやしたら彼女の上に降ってさ
傘を差すのを促してさ
孤独の少しでも癒してあげられるもの
そうしてさ、自分の哀しみも孤独だって
彼女のと同じように少しは減らすのさ
そう考えると、うらやましくもないかもな
哀しみも孤独もなくなっちまったらさ
きっと一緒だった気持ちもなくなっちまう
大袈裟に愛してるとは言わなくてもな
好きという気持ちなんて、そんなもんだろう
哀しいし孤独に感じたりしてさ
それでも手に入らないから良いんだけどね
そんなのは、きっと独占欲だろうよ
単純で安っぽいヒーリングみたいなもんだ
それなら、いっそ、あの星みたいにさ
哀しいとも孤独だとも寂しいだとも
言わず、問われもせず
消えそうな光度でキラッと消えた方が
いくぶんでもマシってもんだ
名前も忘れちまった星みたいに、さ
2014-08-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

<それ>としてでもなく、立っている

二つ分れして波は涯/喪われた基点に
<私>を立たしめるのは壊れた<孤独>と
透き通ってゆく<優しさ>-
すべての血が涸れても、なおも購われることなく
肉ならば干し、筋ならば切り刻み、骨ならば砕きする残酷さ
ならば極北中の北を目指して数百年前には枯れ始め
この夏も枯れ続ける木に沿って歩いているだろうに
一つの星にもなれやしないと、時には情けない風となりして-
寝掛けのあなたの手からは一冊の本が零れる
開かれたページは白紙のページ-私は読むのだ
行間のない白紙と、書き込まれるだろうあなたの歴史を
(私の歴史は、もはや遠い、うんと遠い、うんと遠くてさ-)
それは、あなたから離れてゆく歴史学だ
二つ分れする波の<喪われた基点>の物語だ
なおも止もうとする吹き止んだ風の求める始点/終点
二つ、三つ・・・と同時に書かれ
書き重ねられてゆくばかりの、すべての詩(たち)の
散逸した始めての<ひとこと>のような-もの
光りてなおも光を求める星のようには美しくなれず
あるいは棄てられるほどにも汚れきってもいないし
むしろ愛着すらないままに書庫深くによれているだけの文庫本
ああ、なおも私は立っているのか?
なおも!なおも、なおも!!
2014-08-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

環礁の巡り

陽炎の距離で愛を告げて
紅く染まった汀を地図に描き
ぼくは旅に出よう
まだ君の見知らぬ街、未開の地
そしてコンパスのない海を巡り
新たな岩礁に座礁し
環礁の巡りのなかに閉じこもろう
哀しむよりは悲惨な冒険
哀しむ以上に哀しく悲惨な冒険だ
そして、ぼくは知悉する
環礁の巡りの、あらゆることを
ぼくは知悉することで棄てる
放棄するのだ、哀しみも諦めも
虚無すら追いつかない速さで
ぼくは知悉した環礁さえ棄てるだろう
美しさを語り合う人とてないことに
気づく前、ぼくは環礁の巡りを棄てる
海没する環礁に、ついに夕陽は照らない
新たな冒険だけが用意され
やがて、ぼくも息絶える
環礁に訪れる最初の夕暮のなか
ぼくも息絶えるのだ
海没してゆく巡る環礁のなかで
少しは君のくちびるを想い出しながら
横顔を書いたボロボロの地図を片手に
どこかで微笑んでいる君-
2014-08-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夏景色

近づくほどに遠くなる
海の味、波の色、雲の景色、風のにおい
名も知らぬお前に知らぬとも言わぬ
知る人を知っているとも言わぬ
近づくほどに遠くなる
夏に萎びた冬、冬を送った秋
秋の昔は知らないけれど
雨が降っていた
一羽の白い鳥が飛ぶ空に
靄のように雨が降っていた
私たちは談笑し
木洩れ日を愛しく想っただろう
遠くなる、遠くなる-
近づくのは夕暮だとは言わないが
それを夜だとも言わないが
遠くなる、遠くなる-
昨日、溺れ、死んだ子は
今日には、もう見つかったろうか
読み残された漫画本は
誰にも省みられることなく
とっくに捨てられていたそうだ
遠い、遠いところに
近づけば遠くなる
海の、波の、雲、風・・・君の足音
2014-08-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

樹木

重ねた本の数だけ薄くなる昼に
愛に満ちた交尾を重ねる一匹の犬
詩人はゲームのかたわらにだけ
詩集にはならない詩を置いている
円環を重ねようとする小説には、しかし
重ねられる前に重なっている円環があり
反復される円環は決して同じではない
それは閉じられた一つの孤島なのだ
孤島のなかで誰もが犬のように愛され
犬のようにも愛されることがなかったし
名づけられた犬は愛することがなかった
<消えるように浪費される一日があるだけだ>
そう書いた詩人は誰だったか
名前は想い出せなくとも知っている
知らなくても想い出せるように
浪費された一日の重なりが落葉に重なる
それらを食んで砕き
微生物の分解により出来る有機物/無機物
そして更に高く伸びてゆく樹木
私たちの一日は
そうして樹木の高さになってゆく
愛に満ちた交尾を繰り返す犬が止まる
ただ一匹で繰り返す交尾を振り返り
彼の静かな喧騒に満ちた一日は終わる
2014-08-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

秋の空に似ている

みんな誰もが川を流れてゆくよ
川沿いをゾロゾロと流れ
誰かの部屋に入ってゆく-
入ってゆくのは、きっと友達か
知合いの部屋なんだろう
ぼくの部屋にはだれも訪れない
鍵を締めているからね
その鍵は、きっと見えないけれど
川波を映す透明さに似て
見たことにすら気づかないだけなんだ
夏の今日、空は秋の空に似ていて
庭の小池には雲が広がっている
庭なんてないけれど広がっている
どこからかな、味噌汁の香りが漂ってきて
はじめて昼飯どきなんだと知る
まだ腹なんか減っていないんだけど
無理やりに詰め込む
まるで、ぼくは養鶏場の鶏だね
なんのために養われているのかしら
それにしても満腹は恐ろしい
怠惰な昼寝が待っている
ぼくは眠るよ、少しを(夕方まで)
ああ、今でも川沿いをゆく人の
足音たちが聞こえてくる
まるで幻聴のように聞こえてくるんだ
2014-08-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

無計画な都市と

与えられるかもしれない再生
むしろ再誕へのいい知れぬ恐怖を
嗤いながら震え過ごす夜に
救われないままの魂の行方を問うている
無計画に都市道路が伸び、繋がりがあり
そのうちに行き止まりがあり
頓挫したままの計画・・・
行先のない道があるじゃないか、と
愚にもつかぬと嗤われることを知りながら
それでも行方を問うている
それはむしろ、この夜の行方に
似ているのかもしれないし
記憶のなかの遠い島の行方に、むしろ
もっと近しく似ているのかもしれないが
それが分からないので問い続けている
私は、もう十分なのだ、あらゆることに
ありもしない甲斐を与えられて
その甲斐に生きることに今は
こうして過ごしている間は耐えるとしても
それだけでは不足なのだろうか?
今日、叩かれ、潰された小虫の魂も、また
再誕のなかに投じられ、循環し
永劫を生きなくてはならないのか、と
永劫のなかですら会えない人を待ち
永劫のなかですら愛し合えない人を愛し
永劫の循環のなかでだけ、ただ透明に
ひたすら透明に近づいてゆくのか
この命も、その永劫に捉えられたものなのか
かくも、いみじき命さえ、も
2014-08-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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