それは、ぼくら新人類のカナシミに似て

腐敗する硝子の流れ込む運河を歩む船の影に
過積載の積荷の重みを掲げて
発揚する歌声は、いつまでも夜をまたぎ
遠くはいくつもの山向こうまで、
旅立って忘れられた、一人の男の元にまで

星を欠片に書き込んで、
踏まれる腐葉土の音に泣く
韻律の訪れに恐懼して留まる一言を、
夜が紡ぎなおせば糸車の、乾いた音が繰り返す哀しみに、
さらに重なる秋の落葉の冬への逃避行か

生物の気配を消して、地に這う私たちを消して

偉大なる神だけを残して、その人だけを残して

腐敗する硝子の割れる音が響くから
もう、あれら歌声を一本の枯木に託し
無人の船だけが、どこまでも運河を渡るから

ぼくら首より上のない新人類には
もはや歌う口がない、もはや歌聴く耳がない
旅立ったものを迎え入れれば知るはずの、瞳がない
ぼくら新人類には、ナミダを流す頬がない
ナミダを流す、理由がない
2014-11-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

砂楼(コア)

訪れる足音と遠ざかる足音と
その間で訪れる強い眠気のなかに
ほんの少しの君を閉ざし、瞳を預け
私という愛を形づくるように
砂浜には砂楼を築き続けていた

崩壊するうつくしさを見定めるために、しかし
それは見事なほどのお決まりのように波は訪れず、砂楼は
荘厳さを増しながら巨大化してゆくばかりだっただろう

かなしみの星で響いた音が砂浜で弾けている
まるで愛し合うことが今にも始まるように、それは冬にしようか
あるいは夏にしようか(春と秋とには除外される理由がある)
もう幾日も君の声を聴くことがなく
私の声も届くことがないので、私たちは二人、無言のままだろう

忘れた頃にたち返り、投函した手紙のことを君が想い出し
私が君の代わりに読むだろう、石のなかに吹く風に揺られながら、
波のない海のように静かなときを迎え入れ
君との間に拡がり続ける虚無、もう一方に対置される一つの核
そのコアの弾ける音こそが足音の正体だろうと仮定して

私は眠る、君のいない、長く短い夢のなか
枯木に奪われた瞳のなか、砂の粒と粒との間に埋もれた眠りのなか
仰向けになれば空と重なる砂楼(そして、そのコア)を

読み続けられる手紙の文言が延々と繰り返され
私と君と、二人ながらの感情が薄れてゆく、消えてゆく…

いつまでも呪文のように繰り返される宛名
仮定されたまま固定されゆく宛名
不在のまま愛された君の名前、ぼくの名前

私を私でなくしてしまうだろう、その宛名を君として
私の手紙が、いつまでも波のように読み継がれている

砂楼は既に、色を喪った空にさえ触れている
世界にさえ、もう得体も知れず、既に触れているのだ
2014-11-29 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

見つめている、そして眠っている

いつまでも壁を見つめている

無数の風の一つとなり、波となり
やがては戻る鏡の光、その一粒となり
<それ>は粒子の輝きを持つか、放つか
海岸線に平行に引かれる海岸線の涙、
君の背中を素通りしてゆく無数の、街の、かなしみに

振り返られない欲望を
深海の箱に譬え閉じ込めて夕暮れる海を
更なる大海に閉じ込めて、閉じ込めて

熟れるままに腐乱してゆく地平線と水平線が
垂直に交わるだろう一つの時間のなかに君を愛し
やさしさの響きだけを求め続ける、神の涙と
いくつかの色に彩られた贖罪の赦されざる運命を
神話に語られるだろう、いつかの秘密さえ
遠来の星の光に求めて彷徨うだけの微かな風

別れるべき君を、今こそ見出せるとしたのなら-

なぜ、いつまでも離れることが出来ないのか
一言にさえ拘束される、君の手足の細さよ、
触れるだけで折れる枯木より脆い
もはや宿るべきなにものさえ持たぬ心、いや、
むしろ魂とさえ呼び憚られるべき消失よ

家々のかなしき屋根にも降るだろう孤独なる時間
その孤独さえをも知ることの出来ない時間
その重力からも逃れられずに、すべてを諦めた時間

君は、そうして見つめる壁だけを想いうかべ、しかし、
無数の風の一つにすらなれない

決して戻らない鏡の奥にあって見つめる瞳の奥底で無限なる、
永遠の神話に遡行し続けて眠る、
あなたの夢にさえ眠ろう…そして、眠るだろう
2014-11-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

この、一点から拡がろうとも、拡がるとも

窓をすり抜ける雲の流れを追いかけながら
いくつかの鳥の影が冷たくならないままの路面を飛んで冬
その、いくつか前に訪れるはずだった冬と冬と

幾人もの透過した家族が居座る炬燵を通り抜けた果てで出遭う
荒れる波濤を、さらに荒れさせてゆくだけの海

それがかなしみなら一つの崖を与えて
身を投げるはずだった詩人だって、そこまで訪れては踵を返し
もう詩碑のなかに眠っているだろう

ジェット機の冷たい飛行機雲が雲に飲み込まれてゆく
曇天のしたで散ることも出来ない枯葉が風を伴わずに揺れ
地球の裏側を轟く地震を想い出す

-コチラ、地球の裏側です

滑稽な調子で応えてくれるかい?
笑いたくなくなるほど滑稽な調子でさ
もう、窓をすり抜ける雲なんてないことには気づいたから
君の喪おうとする窓、坂、すべての海、ぼくの与えようとする略奪
(もう、いい加減に面倒なんだ、この手の列挙には)

-私の周囲、1キロ円周のなかには
 きっと何もなくなっている-

そんなことを言いたくなっている私も、
しかし決して独りにはなれないようだった
季節の外側からさえ失った君の声が聴こえてくるし
終わった季節のなかからさえ君の笑顔が想い出されるし

乾いてゆく、乾いてゆく…多分、ただ、乾いてゆく

もう一度、ぼくときみとが出遭うまで
私は乾き続けて微かな風に揺られているのだ

透かし過ぎる家並を通り過ぎながら
地平線が沈んでゆく太陽が、今こそまさに、
どんよりと光ろうとしているのが見える

(ある種の一つの妄想としての太陽こそが)
地平線の沈みゆく太陽こそが、どんよりと光り始めれば、
今の私の、たった一つの真実とされるに違いない
(もし必要とされるのならば、だが)
2014-11-27 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ひとつのぼくたちとして

向き合う湖面と湖面
その間で幾重にも折り畳まれた雨
静かに通り過ぎるはずの微かな風

ぼくたちは寄り添うだろう
出航時間を永遠の先に設定した船に
乗船し続ける船の客の列に
遠過ぎて見えない夕焼の光景に
そこで愛し合う二人の影に

そして、ぼくたちは寄り添いから離れ
そっと荒波を沈めた海に瞳を預ける

預託された、あらゆる善意
実現から遠ざけられた、あらゆるやさしさ
ひとがひととしてなし得るだろう、
あらゆるうつくしさを
ぼくたちは一つの景観として
ある、一つのすぎゆく季節として
かなしみさえ携えて
そっと風に吹かれようとする
その情緒をあずける貝を探す、砂浜の
かわいた哀しみを知る

季節を渡る虹のように光を受けながら
季節のなかで夢見る少女、そして少年として
永続する到来のなかにかわいた哀しみを
そっと静かに遠い星の上に並べ
ぼくたちは見えない夜空にさえ向き合うだろう

一つの向き合う湖面と湖面
ぼくたちは、その間で風にさえなる
幾重にも折り畳まれた雨のように
かすかな風に預けられた歌のように

ぼくたちは見えない夜空にさえ
むきだしたっただろう

けっして想い出されることのない夜空にさえ、ぼくたちは
むきだしだったのだろうと今ならば
わかってよいはずだったのだ
2014-11-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

プール哀歌

そこに一つ、忘れられていったのは
夏の陽射のなかに煌めくプール

ある住宅街、その住民の知ることのない
遠い未来からさえ訪れる煌めきのなかに夏を待ち
私たちのなかでだけ泳がれる一つのプール

お前たちは知るまいと毒づく少年たちの
頬を染める少女たちの君臨する(そして君臨した)
惨めに破壊され尽くし、忘れられようとする
訪うことなきプールで泳ぐ君と
不気味さに光る夜のしじまを泳ぎ始める彼との秘密
そして、とうとう、忘れられた夏の日だった

君が水面の煌めきを永遠に変え
その濁った瞳の奥底に閉じ込めてしまった
それは私たちのなかでだけ泳がれる一つのプール
夏を知らないまま涸れていった、夏のプール

今日、見かけたのは
やさしげな面立ちの母親に手を引かれ
よたよたと夏を歩く幼児であった

その汗のなかに見つけたプールを私たちは
いくつかの私たちに立ち返り、振り返り
違うプールを探しに行ったものだった

そこに一つ、想い出されるものがあるのなら
夏の陽射、君の不透明な美しさ、淡かっただろう恋と
いつまでも響く嬌声が尚もまた反響し続ける夏の雲
二度と雲を映さない、そのプール
スコールのなかに一人で立ち尽くす、そのプール
2014-11-25 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

雨の坂を上る服従、永遠の

降り過ぎて、もはや止むことのない、
その雨の坂を、鏡のように永遠のなかに持ち込み
一つの季節、その終焉を書き込みながら
刻まれ続ける痛みにさえ耐える公園の嘆きを
一つの時間さえ引き受けることなく通り過ぎる彼らを
冷たい人だとはだれも指弾するようなことはしない

冷たさとは、この地上を照らす光であったし
この地上に触れることの出来ない闇であったから
降り過ぎて、もはや止むことのない、
その坂の雨を、静かに通り過ぎる溺死した男の表情を君は
覚えることも出来ないまま忘れてゆく

永遠の忘却のなかにすら想い出される痛みとして
君が一つの疼きを振り返ると、
その振り返りが一つの季節を形づくり
形相に沿った、ある季節が中身もなく訪れては
もう二度と降ることのない雨の坂を上るだろう

大きく回旋する船の舳先に立つ自由な像のように
君の振り返りが一つの国であり
無邪気な残酷さを振りかざす王国として君臨し
ただ忘れられないだけで降る雨の坂

一つの季節、無数の季節、
決して訪れを知らない季節や
過ぎ去ることを知らない季節や
君そのものである季節を降る雨の坂となり
ただ一人の臣民としてかしずいて私は

終わることのない服従に、
ある種の従いすら永遠に、
それが雨の坂なら続くだろう
2014-11-24 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

秋雨の降る音のうち、そこで立つ

ゆるやかな雨にさえ溶けぬのなら、
もう、どうして柔らかに包んでゆけるのだろう
早過ぎる朝の通り過ぎのなかに消えてゆく
どんな背中の小ささも、かすかさも
遅すぎる夜の通り過ぎのなかに消えてゆく
どんな面影の懐かしさも、愚かしさも

千の朝には千の夜さえ、
あまりに少な過ぎると聞いたはずの冷たい浜辺で
どんな波も打ち寄せることのない汀で
洗われたはずの足首は海の深さを測るばかりで
ただ穢れては海を弾き、波を捨て
それでも駆け寄ることを知らないままで
ゆるやかな朝のなか、その傾きのなか
すっと立ち尽くしたままに、
どうして私を迎えるというのだろう

もう木枯しの吹くままに折れてゆく枯枝のままに
いく本かの枝が折れるようで、幾千もの葉が刃のようで
私たちのあいだ、
私たちそのものである愛や
私たちの朝と夜、そして昼だって引き裂いてゆくだろう
私たちには、
どんなにゆるやかな雨さえ、もはや
許されてはいない
2014-11-23 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

妄言としての妄言、そして妄言と妄言

眠りのない眠りを
波の打ち寄せない汀に迎え
どこへも行かない、しかし留まらない
ある幻想としての幻想のなかで
永遠から遠く近く
無限から遠く近く
ゆらゆらとゆらめく水面の上に
ひとひらの、そしてまた、ひとひらの
無数の一枚、二枚、数枚として漂い
終わりがあり、そして終わりがない
メビウスの輪と、円環の輪と
浮遊する存在、不在、非在へと
漂うなら、もう一度、未来へと
一瞬から近く遠く
停止から近く遠く
対置される対置に対置されることなく
星の光を追うことなく追い、
そして追いながら追わず
語らずに語り、語って語らず
あらゆるすきまをぬって、
しかし留まるすきまを見出さず
覚めやらぬ目覚めを覚めず
眠りのなかの不眠を眠り
ああ、幻想のなかでだけ生まれる幻想を
極限からの遠さでだけ測られる
その不能の位置を与えたまえ
あらゆる視線を受けて
あらゆる視線を退ける
その少し未来を与えたまえ
祈られぬ祈りを与えたまえ
決して愛し得ぬ君を見つめたまえ
2014-11-22 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

あまりに明らかな、あまりにからさまな浅はかさ

なぜ、私の周縁にしか訪れないのか秋の終焉、君の祈り、
君を愛する一瞬を横切る光に似た
希望の反対や向こう側を突き抜ける光る氷の矢よ

絶望への距離を無限大に押し広げてのみ降る秋と夏の狭間
小さな犬のように猫の影を踏み
花と花との間でだけ不自由になるミツバチのぎこちない飛行

陽の昇りを見送る丘の上に海原を広げて
幾重にも折り重ねられた地図と地図、詩碑と詩碑
永遠に絶えず散る落葉のように、それを哀しみ
哀しむことのない空だけを迎え入れる君の柔らかな胸の丘陵
そっと押し広げる秘密の扉は君の快楽には繋がらない
(もちろん、君の秘所にも)

明らかな知恵を拒絶する一冊の本と
あらゆる本を拒絶する隠された知恵との間に幻想の地平を設け
もう一度、規定し直す私の周辺には
やはり秋の終焉、君の祈り、君の愛する一瞬を横切る-

君が似せた私と私の影とをなぞり
私は君になり代わることが出来るにしても
この、今の、何を、何を、何を…

冬が近い秋に似た、夏の冷たさを繰り返し想い返し
海に似ることのない海の沖へ、沖へ、そして沖へ-

(だから知られたすべてを
 だからこそ得られたすべてを)
2014-11-21 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

序章(夏)

まだ遠く、始まりにすら至らない序章、
その序章を巡る、いくつかの分断された波と波と
比喩にさえ至る君の滑らかな肢体、
その語る夏に、不在する、何か
(知っている、そして知っていた)

水平線を並べて眠る海岸線たち、と
彼らを抱く廃墟から訪れた漂流物の七月の愛
「もう一つ」を眠る、坂、そして
その向こう坂を越えてゆく、影のゆらめきに
一つの幻想が語り始める直前を、無数に分断し
ただ一機、航跡も残さずジェット機が渡る、大いなる海
海を渡り切る最後に息絶える、舟、そして船

終わりを告げる突然の狂音を静かに回り続ける、
画像のなかで笑う、夢を知らず、書く術を知らず、
詩人は唄う、泣きながら 笑うように唄いつづける

永遠の序章そして、永遠の終わりの前に至ることなき永遠の、
終焉にさえ対置された序章と序章との、息絶える序章-

繰り返される夏と夏との間だけを打つ波の哀しみと
もう一度…もう一度は繰り返されない、君の肢体の不在
繰り返し水平線に戻りくる、終焉としての序章を君が駆ける
詩人よりも詩人のような君が駆ける、駆け抜ける、序章
2014-11-20 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

夏の星座

向かい合うやさしさが一つきりの風となり
冷たい冬の風となり、夏の海を渡り切れず
追い越してゆく渡り鳥を溺死した海で見送り
向かい合ったやさしさを忘れて、過去を捨てて
改めて向かい合うやさしさとやさしさと
-それは満員電車の顔知らぬおしくら饅頭に似ているね
そう囁いた人を遠く坂向こうに消えてゆくのを見送り
-ああ、冬だね、うん、冬だよ
-気づいたかな、あの人は?
 夏のときの半袖のままで

青くはならないままの空が降る街のなかで
美しいメタリックブルーの車が疾走してはいるけれど
隣接する地下鉄が、負けじと街路樹を疾駆し
その狭間で向かい合うやさしさとやさしさと
冷たい風が吹いている、冬の風ではない冷たい風が

-死ぬことなんて簡単なんだよ
-当たり前のことを言うね

不透明さを増してゆく冬のオリオン座までの距離を
真空の光が滑走しながら雪は光るだろう
やさしさが向かい合う間を抜けることが当面の目標で
そこに愛はないから、透明さは罪だから

-夏の星座は要らないかい?

夏の星座は、要らないのかい?

冬の昼間にだけ見える、夏の星座は、

要らないのかい?
2014-11-19 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

スーパーマーケット/秋

フルーツが並んでいる脇を過ぎると
野菜、秋なら種々の芋類、
もう、きっとハウス栽培の葉物たちは季節を知らないだろう
自動ドアの脇になら、いくつもの名を知らぬ花、
植木鉢までもがあったけど、もっと進めば漬物があるね、魚も肉も

乾物、調味料、パン、お菓子、ジュース、お酒
忘れられた文房具、目に留まれば買うかもしれない雑貨
哀しい暖房の温風が音もなく私たちをいずこともなく運び
忙しげな店員の、それも無料ではない笑顔と会釈
それは無料で良いだろう、押し黙ったまま荷を解く店員の

いくつもの会話が、他愛もなく交錯して
私たちの買い物場は寂しいね、だれもいない

走り出す子供の手にはチョコレート
周囲を気にしながら叱る声を想い出し
チョコレートを食べたことのない子供の
カカオを摘み取る手を想い起こすのは確かに切ないが
あまりに考え過ぎかもしれないね

キャスターはスムースに、スマートな床を滑り
私たちは不器用な足取りを進めてゆこう
レジを通り過ぎるときの、そう
まるで出獄するときの微かな快感をいくつか買い
無料サービスの水を、再犯するだれかの代わりに頂こう

循環を想い出すね、休憩が必要だよ
次の店に行く前には車に荷物を積んでおこうね

駐車場の空は明るくて良いよ
ほら、あそこに花が並んでいるんだ
どうしてだれも聞いてくれないのかな
ほら、そこに花が並んでいるんだよ

一人きりの男性が
花を見つめながら、さっきから泣いているんだよ
自動ドアをくぐることすらないままに
一人きりの男が花を見つめてずっと、
この秋を一人、泣いているんだよ
2014-11-18 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

十二時の鐘

君を喪う十二時まで、もう少しの間がある陽射に
既にして君を喪い、後退するバス、遡る月、
拡がる廃墟、拡がる都市、あらゆる歩行、あらゆる
途絶え、途絶、それは挫折ではない、
それは拒絶ではない
拒否では、ない

十二時の鐘を打て
- おおぅ、十二時なら、もう過ぎた
十二時の鐘を打て
- おおぅ、十二時なら、虹の向こうだ
十二時の鐘を打て
- おおぅ、十二時なら、君が打ちたまえ

汀に打ち上げられて十二時は錆びている
鈍色のなか、はるか遠くに錆びている

後退するバスの警戒音が駐車場を巡り
鏡のなかで月が光り始め、廃墟が見渡され
ホルマリン漬けの都市が生き返り
あらゆる歩みが試みられる
あらゆるものが途絶えることなく挫折し
拒絶され、拒否され

- おおぅ、十二時なら、まだ先だ

十二時の鐘を打て、君を喪うには遅すぎた
陽射のなかに溶ける君を、十二時の鐘に与えよう
既にして喪った君を十二時の鐘に捧げよう
だから、十二時の鐘を打て

- おおぅ、君が打て、十二時を
2014-11-17 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

一輪の枯れた花の、あるいは一輪挿しの

許されない寂しさを、あるいは花に譬え託して
一つの影のなか、そこに拡がる世界に人は、
光を求めて人は彷徨っているのだろう、と

公園をゆっくりと通り過ぎる小舟には
一人の船頭が決して顔を見せずに乗っている
たわむ竿のしなやかさに隠された逞しさ
それ程の激流を、穏やかな公園が抱き
明るい親子の呼び合う声が抱き

君は河口を目指して花を投げ捨てる
それは一輪ではない

河口を目指すには一輪では足りないと君は言う
許されない寂しさを、譬え託すのなら
その影の裡、そこに拡がる世界、人、
光を求めて彷徨う人は、血は
河口に辿り着くには一輪では足りないのだ、と

小舟は、むしろ忘れられた一つの清水、
川蟹が住まい、甘い桃を陽のなかで食す清水
岩肌は常に濡れそぼり、空は碧さ以外を知らず
散る葉と拡がる葉が一つに溶け

君は許されざる寂しさを
どこに置いてきたのか
その寂しさを、求めて君は
誰を彷徨うのか、船頭は黙り込み
公園を、通り過ぎる
顔も見せずに



ざわめきの小舟を駆れ、寂しさなら
一輪の、枯れた花にだけ

求めよ
2014-11-16 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

砂浜にて

開かれた空間を、もう一度、そっと閉じて
季節という季節が通り過ぎるように君の灯が消え
もう一つ、余った季節を私の季節としようか

砂浜のなかに造られた砂場で戯れ、
そのまま波に消えてゆく子供のように
夕暮時に迎える声のない、哀しみのように

誰も知らない、その前を通り過ぎて私たちの秘密は
明かされたまま、どの瞳をも素通りしてゆくが、
世界の果てまでをも素通りしてゆくが、
決してどこにも留まるところがないが

君が耳を傾ける汽車の音は空想でしかなく
私がおどけて真似をした音を、君は憎むだろう

それで良いのだと胸の痛みを抑えながら
歩き出すことすら出来ない道の、
その路面の冷たさに、更に足を失い
閉じてゆく空間の向こうにだけ君を追い

もう、知らないだけの季節しか迎えられない
遠く消えてゆく君の背中を知る季節は、もう愛せない
2014-11-15 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

知らない

知らない知らない、
知らない死が遠くでいくつも生起し
それを告げるのは黒鳥の乾いた鳴き声で
少しは想い出されるだろう
古い墓碑が、詩碑が、巡られぬそれらが

湖岸を永遠に巡る小舟のように
いくつもの溺死体が川となり、流れる川となり

決して光ることのない空の光さえ頼って
一つの足音のなかに隠された所有者のない哀しみは
想い出を持たぬ、記憶を持たぬ、思考を持たぬ

知らない知らない、
知らない命が誕生するとき
空は決して光らない

無為の涙が大河となり、あるいは無数の
溺死体たちが渦中に隠されるだけで
空は光を拒絶する

あらゆる誕生を祝福して、
空は光を拒絶する
2014-11-14 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

私たち

君の愛の光が導く緩慢な死のなかで
息絶えることを許されない花が揺れると
途絶える風の声が巡る島を出て、
一つの航路が水平線から描かれようとする。
知らない地図を舞う木の葉のように
街路樹を通り過ぎる人波を泳ぐ影が地図を探す。
君の影を忘れるように君の光を忘れ、讃歌が響くのを
丘を挟んで聴きながら曲がる交差点には
点滅だけを繰り返す黄色信号があって、
立ち止まる人だけが辿り着く。
眩しい無数のガラスを割りながら
飛び去ろうとする鳥の影、
夕暮を知らない街に消えてゆく私たち、
永遠の赦しのなかであえぎ苦しむのは、私たち。
2014-11-13 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

少女の駅

寂れた駅には人影だけが残される
人波を失った人々の声が幻聴として響き、
一人の少女は抱えきれない愛を抱き、
更に与えられる愛に包まれながら
一人で静かに、ベンチに座る

夕暮れは決して訪れることはなく、
朝焼けを見ることも決してなく、
夜も昼も喪われた光のなかに、少女は座る

少しだけ生意気そうな視線を斜め上に投げかけ
それでも与えられる愛には悪態をつき
少女は、それでも愛らしさを失うことが出来ないのだが、
その身もだえを抱いて駅には
永遠に電車は訪れず、
一人の少女だけが、静かに座り続けている
2014-11-12 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :

雪だけが降る、雨から遠く

雪のなかに降る雨を探して巡る
冷たさを、
身に帯びながら散る落葉を

時が流れるだけ流れ、だれもいない
だれも現れない
夜に紛れた湖面が揺れて月を抱き
夜に隠れて黙っているだけだ

引き裂かれる沈黙が死に伏しただけで
喧騒だけの世界が哀しむ場所を奪い尽くすし
語りかけによって語り合いが絶え
もう一度、探されるはずの雨、
雪のなかに降る雨が忘れられ
穢され尽くした雪だけが積もり続ける
2014-11-11 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

公園の風景

別れさえ出遭いとなる公園の、
一つの季節とさえならずに影のなかの
匿名の光として出遭う、ある厳冬の
死を招くばかりの光となり影となり、

幾度も逢瀬を重ねて、なおも記憶が拒否する
その影と、その光源の、その接点で、
無限の拒絶が探されて、求められて、
距離を追求される地図の哀しみだけが舞う風が吹き、

無限に直線に迫ってゆく曲線と、回帰し、
なおも回帰しない同一の
双子のような速さで逃れゆく季節となり、季節となり、氷柱の
冷たさのなかに消えてゆく公園で死児を抱く、
いつまでも泣き止まない死児を、抱く
2014-11-10 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

その、月曜の朝に

白く光る空が小さくて、ベランダは
遠ざかろうとして、すぐに消える煙を追っている。
沈黙する屋根が、いくつもくすみながら並び
午後に向かうジェット機の轟音が掠めてゆく。

名を奪われて立つ、白く枯れた数本の樹に
気ままな名前すら与えようとすれば力尽きるだろう、
忙しい車が何台も同じ顔で走り抜けながら
排気ガスだけを置いてゆく

だれもいないし、だれもいなくて良い
拒絶の抽象性は残酷で、きっと無意味だ
接続詞の意味を問いながら、
なににも接続しない接続詞が、無数に繰り返されている

それで良いのだと、君は言うだろうか?

近づいてくる山々に沸き立つドライブを想い出す、
小さな手を、明るい声を、愛した横顔を
どこにも行かないまま、そして行けないまま
一つが無数だった別れだけが訪れる

すべてを終わらせる別れなら
あまりに優しくスクリーンを彩るというのなら、
苦手な映画館の椅子に座るのも良いかもしれない

空は、もう
白い光を投げうち始めている
鳥さえ飛ばない午後の、空になる
2014-11-09 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

花物語

朝陽の畔、疲れた一輪挿しの花が散ろうと悩み、光は霞む。
湖面の静けさには散らない涙を、小石が拾う。
樹影が歩き出すと、放物線をなぞった坂が遠くまで放られる。

鈍色の軋みが線路を撫で、始発電車が行方を持たずに出発すると、
じっと街を見守るカラスの瞳は、瑠璃色に輝く海のようで
峻険な岸壁が海を見失って彷徨う先を探し始める。

湖も海も、過去形を捨てて彷徨っている。
ただ一輪の花の疲れを巡り、小石のなかで冷たくなってゆく瀬の
微かに想い出すような古い流れ、深い森の木立、小鳥の鳴き声、
そして森を抜けた草原の地を翔る馬のたてがみ。

地平線の向こうから一輪の花の力が蘇るのを待ち、
それが隠された廃墟の拒絶をかいくぐり、
石碑に刻まれた謎の文字なら解読し、
それでも彷徨が止むことはなく、確かな原初のエナジーだけは感じ、
空に接続されないままの波が立ち始め。

足早に霧がたちこめようとするが、追いつけない時間を抱いて
老犬が静かに海を渡る、湖を渡る。
足跡を波に変えながら、一つの歴史、一瞬の坂に変えながら。
そのとき開く朝の物語、もう一輪、摘まれた花の物語。
語られない、知られることがない、それは分からない。
しかし紡がれるのだ一輪、一輪摘まれた花の物語は。
2014-11-08 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

溶解する解法

冷たい風が通り過ぎたので、風を凍らせて、風を融かした。
解けない風だけを融かそうとしていた。

詩法のいくつかを問いながら探した時間を壁が引き裂いている。
風が冷たい理由を、君が知っている。
君を探さずに風を凍らせて、融かし続けている。

空を突き刺す視線を跳ね返され、想い出す窓ガラスは
数え切れない街を築く礎の一つ二つに過ぎないが、
そこにも風は吹いている。冷たさを知らず、温かさからは
きっと遠く、一つの虚無として詩語が、枯葉に混じり舞う。
(愛を、語ろうじゃないか)

ぼくの好きな詩集が解体され、崩落したビルの合間を埋めてゆく。
ビルの崩落と崩落の間を一つの詩となりながら(あるいは凋落)、
詩集を解体して、ぼくはぼくを泣き、詩集を忘れる。
街路を囲む青い街路樹、そこには君が立っている。風の、
冷たい理由を携えながら、だれに渡すか迷い、
謎めいた笑みを湛えて泣き崩れる。

鳥を、飛ばすだろうと想う。
決して飛ばない彫像の鳥を、灰色に染めて。
煤煙を擦りつけて君は、もっと笑うだろう、この頬を。
温かい季節の風が吹くのだ、温かい、温かい、

さあ、泣くのはおやめ

ぼくは俺として微かに呟く。
俺の近くで泣かないでくれ、と膝から崩れ、仮面を取り、
一つの解放を解法に与えて、しかし風を忘れて。

俺は風を拒絶する。
坂の上から見渡す荒涼たる荒地を君には見せまいとして、
あらゆる風を、しかし温かな風だけを赦し、俺は
風を拒絶する。
2014-11-07 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

笑いながら

波の上だけを秋が通り過ぎ、
冬を待つ海鳥の飛翔が凪を切り裂いていた。

岬を遠望する防波堤と、
砂浜から付いてくる無数の砂粒と、
置き忘れてきた文庫本と。
もう遠くに防風林を置いてきた、
ここには風が吹くことはない。
波の音が届くことは、ない。

山の見えるはずの街に戻れば喧騒は、
鋭い刃先だけを突きつけてくる。
血が出ないことをいいことに、
幾度も幾度も刺殺されるが、雨は降らない。
たとえ雨が降っても、
雨に濡れることはない。

古いビルの壁に手をついて、
あわただしく海のすべてを想い出しながら
置き忘れてきた本の記憶をたどっている。
ズボンに付いたままの砂を口に含んで、
海の微かな匂いだけでも知ろうとさえする。

なくなってゆく。
ただ、なくなってゆく。

それで良いのだと安堵して、
酒臭い汚物に塗れ、それでも
繰り返し殺され続けながらなら、あるいは
星の一つくらいなら見つけられるかもしれない。

それすら見つからないので、
私は笑っていた。
いつまでも、笑いながら殺されていた。
2014-11-06 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

森の息吹

聴こえない、あなたの声が愛しいのに、
想い出せずに色んな歌を流し聴いている。
訊ねる人もいないので、一緒に語る人もいないので、
あなたに問いたいことがあるけれど、

それは森の奥、一本の木の根元の洞に置いておこう。
もう想い出せない、その洞に、
決して辿り着けない、その洞に。

弱り始めた陽の光、
それでも反射を止めない一枚の葉がある。
色を変えることなく、最後の色を緑に留め、
陽の光が弱ければ弱いほどに鮮やかに、緑で、
私の不確かな輪郭を奪う強さで、

見通せない森は命に満ちている。
すべてを尽くして、なお足りないざわめき、
ひそやかで鋭い視線が幾本も交錯し、
しかし、あなたの声は、そこにもない。

森の奥、私は、なにを隠しに来たのだろうか。
もはや戻る道さえ忘れ去り、私は
森の息吹だけになってゆく。
消えるように、あなたの声を追いながら、
森の息吹が、ざわめきのなかをすり抜ける。
2014-11-05 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

それは男だったのか?

足がない影を辿ると地図に遭う。
とびとびに穴が開き、海は流れ出す。
白い花ががくごと消えてゆく。

影のことを想い出しながらテーブルを這う指が透明に光ると、
影の訪れた足音を聞いた人がいない。
薄橙に染まった壁だけが、沈黙したまま記憶を反芻し、
足元から立ち上がる夜に飲み込まれている。

ゆっくりと停止に向かう時計の音が部屋中を跳ねると、
バネの強さで時計が壊れ、
静かな影がひっそりと嗤う。

だれもいない部屋のすべてを悪意に満ちた嗤い声で満たし、
流れ出した海の渦のなか、白い花に囲まれて足のない影が一人、
いつまでも嗤い続けている。
2014-11-04 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

停止

山で伏し、ここに湧出する水はもう、
既に汚わいに満ち汚れて飲むことが出来ない
幾工程をも受け付けないので、そのままに飲むだけだ

充満する死のなかで、伏流水の毒が更に満ち
あの一匹の、痩せ衰えた影を落とし歩く
老犬の姿さえもが街を行くことはない

拡がりは海に、収束は山頂に(あるいは逆に)
高さが支配する生死の豊饒なる単調さ

毒水にのみ咲く、その美しい花を愛で
美しい人は老人の皺よりも残酷な皺に満ちた手で
きっと大地を撫でるだろう

風も吹くことがない
そよと吹く風があっても死に絶えてゆくものばかりで
風に吹かれることがない

私はもう、私ではない私だし
私である私ではないものだった
きっと最初から、そうであったように
どうせ最初みたいなものに
戻っただけであるように
2014-11-03 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

むしろ、小径の心持ちで

どこへ至るかも分からない小径は、
緑の葉か、枯葉かも分からない樹木で覆われていて、
一体そこを、だれが通っているのかも分からない。
ただ緩やかな上り調子の斜度があり、
しかし決して舗装を受け付けることはなく
ただ古くから踏まれては踏まれては小径をなしている、
そんなものなのだろうと想う。

歩む人は見上げることがないので、代わりに見上げれば、
そこには遠くまで青い空が広がっているけれど、
小径に覆いかかる葉、もう今は緑の葉が生い茂っていて昏い。
喘ぎまでにはならない汗ばんだ息づかいが、
辛うじて、あるいは希望に似せたと言ってよいのだろうか、
生き生きとした鼓動を感じさせるようで、
どの耳も静かに傾いて穏やかに集中している。

未来には通じていないのだろうけれど、
微かな喘ぎは決して暗いものではなく
夕暮さえ、夜の闇さえ恐れる風はなく
ただ小径の足取りを確かめながら、
直ぐに途絶えてしまう足跡を刻んでいる。
淡い足音に似た足跡だけれど、
耳を澄ます人には見えるだろう足跡が、きっと、
刻まれているように想われる。
2014-11-02 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

瞳の、冷たさ/想い出

通り過ぎるトラックの、ホイールのなかに映りこんだ瞳を
いくつかつなぎ合わせると台風の目を想い出す。

そこは、きっと空白、なにもないのではなく、空白があるという空白。
だれも見ることがないままに冷えてゆく私の体の芯のように、
なにもないわけではない空白。
ただ一杯の温かいコーヒーにすらすがってしまう、弱くて儚い私の空白。

懐かしい雨の音を想い出しながら、
コーヒーの湯気の待つなかに空想を泳がせる。

あなたが明るい公園を歩く、手ごろな椅子を見つけて座る、少し落ち着いて空を見上げる

ただの鳩でしかない、それでも鳥の影が、あなたの憂鬱を物語りながら飛び去る。
私は、その憂鬱からは外れているけれど

私が生まれるのは台風の目だから。

あの、トラックのホイールのなかに映りこんだ空ろな瞳のように
だれにも見返られず、ただ冷えるに任せられるだけの空白が残された空白
荒れることも忘れた空白だから

放っておいてくれれば、それでいい。
なにも生まれることがなかったし、
たとえ生まれたとしても、それも空白でしかないから、
放っておいてくれれば、それでいいの。

少し熱い頬も、冷たい身体の芯が冷やしてくれるから、私は想い出せない。
ただの空想だけが過ぎるだけで私は、もう何も想い出さない。
2014-11-01 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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