時間の鳥は空の畔でうたう

きみが見た夢のなかでは湖をわたる鳥がいて、それを受けとるひとがいて、わたしはそれを見ていたらしい。小鳥のように雛が鳴き鳴き、川を探す、そんな湖の畔だろう、わたしにはそう見えた。
シャープ・ペンシルをガラスにあてて、細い線を描きながら向こうの青空と話している、そんなきみが好きだった。いつも曇り空のしたにいて、木蔭を探しては戸惑い笑う、そんなきみが好きだった。
海をしらないわたしたちには湖が川のように見えたものだ、いまは川が海のようだ、
大きすぎるかなしみを浮かべては、川は海に変わるのよ-
なんとなく覚えている、きみのひとことを、そっと呟きながら波の音を聴く。
とぎれとぎれのレコードも、風にのりくるラジオの音も、みんなどこかで聴いたものばかりだ。
きみの声だけが聴こえないよ。空をまたいでゆく鳥を見あげて、きみと肩寄せあった日々を想うけれど-
さぁ、ぼくたちの眠りの時間がやってくる。
もう戻ることのない、ぼくたちの時間がやってくる。

(初出:2016/03/06 From note)
2016-02-29 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

凍った虹の端と端で

涙のように流れる川を、きみは見たというが、それは、ただの凍った虹だったにちがいないよと枯木になった鳥が歌う、そう告げてみよう、けっして鳴ることの許されない鐘のように、つまり舌も撞木も、叩くすべてを持たない鐘のように、だね

そういえば天使が舞い降りるのは、どんな天気の日が良かっただろうか、そういう話をしただろう、わたしは天気には興味がないのでどうでも良いといったに違いないが、きみは海の日に、と
海辺で逢うことのなかった私たちには海にしか天使が住まうことがないのよ、そういう意味だともいったに違いない

ああ、そういえば、ある詩人について語ったことがあるだろう、その詩人はいつも白紙のノートだけを持ち歩き、白紙の欠片だけを落としてゆくんだ、と
その白紙の欠片の積み重ねで世界を創りあげているんだ、と
わたしたちが歩く道、その舗装路のすべてが白紙の欠片のように舞いあがる風のなかで天使が歌うね、
涙のようにしか川は流れることがない
きみは、もう泣くことを忘れただろう、涙を知らない子どものように、もう泣くことすら忘れただろう

(初出:2016/02/17 From note)
2016-02-29 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

すべてのあなたを

冷たい夜明け前になら、あなたのための塔を建てる
昏い大地を盛りあげて、表土に隠れて美しく光る、あの
無数の霜柱のなか遥か、手があかぎれるまでにも探しながら
「おはようございます」
新聞配達員の元気な声は静寂を静まりおさめてしまうから
色づき始めた夜空にさえ、きっと虹もかかるだろうと
この瞳、その瞳にすらあならの虹ならかかるだろうと
きっと今日なら良い天気、無数のあなたが光り輝く良い天気
だから、この手をあかぎれさせて
もっと、もっと、
もっとのあなたを抱きとりましょう
すべての瞳に虹輝るように
すべてのあなたを抱きとりましょう

(初出:2016/01/29 From note)
2016-02-17 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

涙は耳にふり積もる

聴こえるだろうか、耳に降りそそぐ雪の音を、
耳中で苦痛にうめきながら融けゆく雪のさけびを、聴こえるだろうか
かなしみよりも遠い海のかなしみを教えてください
川すじに沿って歩む足音を歩ませてください
いつの日か見ただろう夕陽のように、
消えることしか知ることのできない夕陽のように、
降りそそぎ、融けることしか教えてもらえなかった雪のように
降りつもる場所を求めて涙は、耳にふり積もる
もう聴こえることを求めない叫びたちよ
耳に潜りこむ、永遠の凍土のように安息をもとめて
あまりに、それは儚い安らぎだとつぶやくあなたを忘れて
永遠のような凍土に、すべての叫びは眠りこむ

(初出:2016/01/29 From note)
2016-02-15 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

不透明な雨音にさえ抱かれよ

「ゆっくりと、だが、たちあがることがあるだろうか、その雨は」
そうひとりごちながら川沿いを歩く、影を見失いながら、見まわして影を探しながら、迷い子のように歩いているようにみえるのだ。
風が吹くときは、いつでもそんなふうで雨を探している、枯葉が落ちるときにはけっして吹くことがないのに。
けっしてだれが文句をいうはずもないというのにブツブツとしかめ面をした通行人たち、彼らしか抱擁できない透明な街、彼らしか抱擁してくれない不透明な街、そのとき街灯はきみを照らしたね、すこしだけだ。
「街灯は…あまりにも淫靡だわ」
そう言いながらも抱きよせられるままに太ももを露わにされ、厭うことはない。
「ああ、きっと雨ならふることはないさ、忘れられたからね、」
男の影が雨音に濡れながらボンヤリとささやく。
「聴こえないわよ、なにも聴こえない、でも聴こえるかしら…」
女の嬌声がくぐもり始めると厚みを増した雲のように霧が立ちこめる。
街頭の光に宿る霧のひとつぶをひろいながら浮浪者が野次をとばす。
「雨も降りやしねぇのはおめぇらのせいだ!」
もはや無数の無人が満ちている、海のような砂漠を愛する蜃気楼の街のように。
うんとゆっくりとだが、それは遡行する流れだったかもしれないが、その川が流れた気がした、川にも水がある気がした。
くりかえし、くりかえし伝えられるだろう、
「ゆっくりと、だが、たちあがることがあるだろうか、その雨は」

(初出:2016/01/28 From note)
2016-02-15 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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想一葉、兼訪問帳

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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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