雨と星の距離ならば白い鳥よ、見いだして

「雨がふっているときに雨について語るべきではないだろう」
雨音のまにまに舞いおりる雪のように、あなたはつぶやいた、冷たい季節を知らないまま別れた。小雨を嫌う小川の無数の小魚のように都会は人であふれている、けっして溢れることなくあふれている。
雨について語るときには雨はやんでしまう、そう、それだけのために雨にうたれる理由を求めよう、抱きしめたときにだけ震える、その肩を打つ季節を見つめるために。
「…のために」
けっして聴こえることのない点線が延々と線路を分断してゆく路線には、わたしたちが横たわり続けている。非常灯の時間のように横たわり、星をみうしなって空になった空を見あげている。
「この雨は、きみが笑っている聲のようだ」
けっして笑ったところを見たことのない、あなたに向かってつぶやいてみる。
「星たちなら、ほら、わたしの胸にあるわ」
露わにした、けっして豊満ではない胸を波音が洗っていた。
とおくを横ぎる白い鳥を幾羽か置いたまま、わたしたちは季節のない雨になった、星をみうしなった大地になった。

(初出:2016/03/23 From note)
2016-03-31 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ぷりーず・ぷろぽーず・もーにん

めざめると天井はみえない、ゆびさきに掛かるシーツをひき寄せようとするとカリカリと軽い音が夜に似た朝を呼び起こそうとする。
わたしたちの涙をわたしの涙にかえようと想いながらいくつかの風景を想いだそうとする。テーブルのうえには千円札がわたしの顔をしてヒラヒラと舞っていて、待っている(誰を?)。
わたしは海を想いだしたくて湖しか想いだせない、もっと想いだそうとすると川しか想いだせない、さらに想いだそうとすると雨しか想いだせない、わたしは雪国育ちではないから。
うん、うん、うん…-
もう数十年前のきみの延々と続くうなづきが木霊する、そこはどこ?
だれもいない部屋の室外機が緩慢に回っていて、波の寄せ返しを真似しているね。わたしたちの傍では室外機が回っていた、そのときも。
遠すぎる、迂遠すぎる、手を繋ぎながら、夕闇に消えた(ように見せかけた)。
お酒の味を覚え始めたかい、そろそろ?
気がつけば太陽が南にかかっている、それがお酒の味だ。もしかしたらばわたしたちは、けっして天井を見ることができないのかもしれない。
天井、そう、天井にむかって呟く、きっときみのことが好きだと、けっして聴こえないように、だれにも聴こえないようにだけ呟く。

(初出:2016/03/15 From note)
2016-03-23 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

行先を告げるように季節を呼ぶ

季節を呼ぼう、そういうだけで行先を告げるきみをぼくは知ることができない、知る必要もないだろう。そう、知りたいだけで知る必要はない、すべては、すべてが…
すべてを、が抜けているよね-
いつものように海辺でささやくきみの声が川面に揺れる。
小石を拾うような気持ちで季節を呼ぼうよ-
季節は行先を告げるだけさ、呼んでもきやしないよ-
ぼくたちが行先を告げるんじゃないの-
子どもたちが詮無い会話をくり返して帰路をみうしなっている。
遠くない校庭は無人のまま校庭でありつづけようと固く誓っている。青空には雲の一片が通りすぎるだけで、波音たちは校庭なんてないかのようにとびこえてゆく。
季節になりたい-
そう、つぶやいたきみの笑顔を描いても波がさらってゆく。
いくども、いくども永遠をしるために描かれつづける微笑を、わたしはどうして忘れたのだろう、水平線の行先は、ぼくたちをわたしたちにひきわたす。
そうして暮れる、海辺の十六時、ぼくはわたしには決してならない、そう誓いながら、ひとりのぼくが行先を告げわすれた季節を睨み続けていた。

(初出:2016/03/09 From note)
2016-03-15 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

季節という問いに応えながら

男がひとり、男物のシャツを握りしめて「男になりたい」と叫んでいる。通りすぎる女たちが「なれるわけないじゃない」「バッカみたい」と嘲りながら街灯に消えてゆく。
割れることなく立ったままの酒瓶の口に雨が降る、霧のように上も下も知らない雨が降る。もう、そうとうに永い月日を経たはずだ、ネズミに似た親子が囁きながらいぶかしんでいる。電線が招いた風を音が裂く、昨夜のことを覚えているかと喉笛を切り裂きながら、夜に似たまま夜になれない夜が訪れる。
海を想いだしてはいけないし、想いだすこともできない、もう、海は消えた。この街に海はない。この街からは海が見えない。
男物のシャツが一枚、男に絡みついてささやく、
「ねぇ、わたしを愛するよりも女を抱きなさいよ、味わいなさいよ」
霧笛のように海が覚えているのは、一枚のステンド・グラス、光だけしか持ち得ないステンド・グラス、もう、けっして記憶を許さない海が神の記憶のなかに眠り眠る。
リフレインに似たような雨のなか、きみに抱かれた男たちは乾いてゆく、死に人たちの腐敗に巻きこまれないように、静かな夜を迎えるために。

女の街が、朝焼けに染まり始める。

(初出:2016/03/04 From note)
2016-03-07 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

閉じられた音を与えよう

ノートを開くためにはノートを閉じなくてはならなかった-
海辺が開くのを待つように響くピアノの音を聴きながらきみがいう。
わたしたちのあいだからは永遠に失われてしまった<告げる>ということばを、その意味を、貝殻のひとつが抱きながら深い海に雪となってふるだろう。
風が吹いているわ、歴史よりも疾くすぎる季節のように-
ああ、わたしたちの知っている季節は歴史よりも遅いけれどね-

永遠の凍土を融かすように地中に眠る、その瞳を開くためには永遠を閉じなくてはならなかっただろうが、それを閉じる必要はないだろう。
空が碧いよりも碧く海が輝いてはならない、海が輝くよりも眩く陽が輝いてはならない、きみがきみであるよりもわたしがきみであってはならない。

さぁ、ノートを閉じなさい、ただ、ひたすらにノートを閉じつづけなさい、
けっして開かれることのないように、
もし、そこにノートがあるのなら、
わたしたちは永遠のノートを閉じつづけなければならない、さぁ、

-そうは、想わないだろうか?

(初出:2016/03/01 From note)
2016-03-03 09:06 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

ツ 過去メモ~20160201~ 分転記

適当&ランダムに(一部改変)

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2016-03-01 00:00 : メモ帳 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
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【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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