奇数の夜、偶数の眠りに就く - ゼロ

七つに放射分布させられた殺意と五つに分離集約する嘘とで
交差点には一本の道路だけが導かれる
三つに分かたれた夜空には、それぞれに二つの星が
やはり光ることなく暗闇を示している

これ以上、割れることのないガラスの破片を
足裏は、いつも踏みながら見えない血をにじませている
赤く光る星はヒトデとして浅い海を漂い蠢き
蚊取り線香の光にすら縋り寄る虫たちのように
魂を吸い取る大樹に寄り縋る生命たちは
隣り合わせの死に顔に驚き慄いている

夏に向かう夜の気怠さの内、正確な間隔で明滅する遠方の灯台の灯り
岬とは見当違いにある丘は、少し前まで海の際にあったのだ
防人は更に遠くまで歩いて行っては虚しい哨戒を繰り返し
ついに往路では索敵は叶わず、復路で打ち滅ぼされたのだった
海底に沈む彼らの唄は誰に届くことも期待されてはいないけれど
誰にでも届いてしまう響きで夏の夜は更けてゆく

海が大陸と大陸、陸と陸、島と島との間にあるように
それぞれの海の中に、それぞれの底に沈ませた者達を巡り会わせよう
歴史書に刻まれた彼らの唄を、少しは復唱するのも良いだろう
星は疎らな夜が良かろう
月はない夜が良かろう
太陽を知らない夜が良かろう
空を失った日が良かろう
そんな日は、夜は永遠に来ないから、そうしよう

隣で亡霊の顔をしてキスを迫る女と男と
空調の壊れた旧家の裸電球を叩く虫の羽音と
彼らを待ち受けるヤモリの不動と
脚長の蜘蛛は、歩けば五分は掛かる海から這い上がってくる

君を切り裂いたメスの光ならここにある
私の夏の掌の喧騒の中
星と月とを手放さない掌の喧騒の中だ
私が眠るだろう、その時に、君はそれを奪うのだ
固く結ばれた掌を切り裂いて、君はそれを奪わなくはならない
そして誰もがそうするように
それを君の掌の中に収め、素知らぬ顔をして行かなくてはならない
奇数について触れたのは、きっとそのためだったのだから
私は偶数を想い出すまで静かに眠りたいのだ
2013-07-09 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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