花の香りは海を知らない

切り取った波を花の香りに包んで置いた
椅子の表面の歪みは、仄優しい
触れ、辿る指先の行方には光を置く
誰も知らない、見たことのない光
光ることを忘れたままの光
決して見ることの出来ない光だ

やがて想う人がいるだろう
-留まったままの光は光なのだろうか
-届く先のない光は、それでも光であるのあろうか
応える人はいないだろう
問うてはならないと言う人ならいるかもしれない

包まれたのは、そういう光に替わる花の香りだ
留まることだけを自らに課した者達
進むことを拒否したままであろうとした者達
戻る先を捨て去った者達
留まる場所を失ってしまった者達だ

大通りに面した、座ったここから見えるだろうか
その先の角を曲がると広大な庭が広がる邸宅があり
アンティークな家具が窓際から覗き
人影は時折は揺れることもある過去の家

みすぼらしい老婆の指差し語り始める大邸宅の呪縛
常に花の香りに満ちたまま朽ちていった呪いの館
光を求め、それがために光を棄てた者達の集う部屋
暗闇の中でだけ輝いて見える不思議な闇
囚われの者達が知らずに開ける光る闇

もう一度、波を切り取りに海に向かう
変らぬ空だけが延々と続き、海を忘れる程に倦む
この終わりなき平野を満たす亡霊と
その足音の幻聴は途絶えることがない
花の枯れる時を忘れたまま、海を想い出すことを拒絶され
葬列の最後尾は常に慌ただしい
2013-08-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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