静謐なる執行を、叫びは裂くか

緩やかな雲の死を過去の雨が遠くで見守り
緩やかな秋の死を高まり続ける虫の音が切り裂き
産まれたばかりの夏の記憶は褪せてゆく

それだけが墨を流したように白黒だけの叢雲
まだ濃く蒼い空を舐め流れる幾つかの雲たちを過ぎって
一番星の輝きは突き抜ける

永遠に途切れそうにない曲がり角を幾度も曲がりながら
彼らの直ぐ傍を歩きながら
こんなにも遠い距離を、遥かさを
それらを代償にして蘇った声を
もう一度、失ってゆく声を代償にして蘇る哀しみを
償い忘れた過去の全てを、失っていった
ドアを開けた時には既に責め苛まれることすら奪われていたのだ

安らぐことを命じるナース達のような声だけを頼りに
辛うじて生きている責めを想い出そうとしても
車椅子の音が許された全てとなって覆い尽くし
ついに叢雲に覆われ消えてしまった、あの星のように
私は責められるべきものを奪われてしまう
生きるために必要なはずの全てを奪われてしまうのだ

ついに愛されることのなかった子供のように
既になかったものだけが奪われ、手にすることが出来
奪うものとしての時の静謐だけが満ちていた
その世界の中で執行される断罪と贖罪の刑罰
生きる糧としての贖罪の刑罰は神によって穢され冒涜され
私は立ち止まることを止め、また少しだけ歩き始める

この永遠なる曲がり角は冤罪によって作られている
(幾度も繰り返される穏やかな雲の死と、穏やかな秋の死)
目指したはずの場所に永遠に向かい続ける曲がり角
無数の暑い夏の炎天下で敷かれた分厚いアスファルト
その上を立ち止まっては少し歩きを繰り返す人の影
(遠くで雨は見守り、高まる虫の音は切り裂き)

やがて、あるいは声を押し殺して泣き、あるいは押し殺すことなく泣く、打ち上げられた砂浜で乾いてゆくヒトデに辿り着く
海に背を向けた河口では水という水は全て汚され渦巻いているが、それが私達、全ての命を繋いでいるのだ
河川の水は海に注ぎこむことはなく、ただ止むことなく降る雨だけが海を満たしていて、それが私達、全ての命の繋がりを断っているのだ
ヒトデは、どちらを選ぶのか、その自由を嘆き、めいめいの仕方で泣いているのだった
強く、あるいは弱く息を吹き掛ければ飛んで行ってしまう軽さで、めいめいの仕方で泣いているのだった
私はヒトデに背を向け、海でも、海ではないものでもないものを目指し、雲が裂けるのを待ちながら、ただ叫び続けていた
2013-09-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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