忘れたままの訪問者として蹂躙する

背景のない詩集を手に雨の中の風を歩いていると夕暮れ忘れた夜を想い出す。改行を捨てたセリフだけをしゃべり続ける女性とは背中合わせになったまま、いつまでも冷めないコーヒーの湯気だけを眺めて過ごす少し遅い午後の痕跡としてすら刻まれることのなかった夕暮ではなく。

「何でも良いという時に限って大抵」と言う言葉に継いで「古い世界地図をプリントしておいたよ」と告げて置き忘れそうになっていた風を追い掛けると急いで鞄に詰め込む音が追い掛けてくる。そんなに焦る必要はないよと言うべきなのか分からないままでいる内に雨が止んでしまう。きっと、このままグラウンドは使えないまま私たちを待ち呆けているのだろうと想ったが言わないままでいた。靴が立てる音はグラウンドに喰い込んで響いていたが誰も聞いてはおらず、雨の外の風が数メートル先まで運んでは降ろしを繰り返している。

いつだって本題というのは置き去りにされたままだが、今日は酷過ぎるのでベンチには座らないまま寄り掛って立っていたので足首までがグラウンドに沈んでしまっている。眼鏡の位置を直す間に独りきりになり、暗くなる前の空を映すグラウンドを横切って少し坂道を登っては降り、どこかで見掛けた堤防を諦めてビルを見返すと見事な背景に映えていたのだが、ビルも背景も忘れるのだろう。遠方から訪れたらしい一群の人々の汚れた靴を見やりながら挨拶の仕方を考えている内に見覚えのないカフェの前に着く。
あまり良い日にはならなかったようだ、というように。
2014-05-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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