渇いてゆく貝たちの音

昼下がりを海岸沿いの道路わきに置き、砂丘に横たわり言う
-ここは砂漠になって永久の死を誓い合う場所になるね
通り抜ける波音を捨てて指先に眺めた貝が乾いてゆく音を聴くと
どこでもが人のいない都会に変った
いつでも愛する人のいない街は都会に変容してゆくが
貝が乾いてゆく音を聴くだけで、そこは都会に変るのだ

決して独りではないという、その孤独を愛することが出来ず
かといって憎むことにも飽き続け、憎み方も忘れてしまった
屋根を越えて見える空が、いつもくすんで見えるのと同じだ
急でもない自転車のブレーキ音と風鳴りは混じり、いくばくかの砂を飛ばす
人の入る気配を忘れたまま開閉を続ける自動扉のように
白い太股の奥は開閉を続けようと喘ぐ

水平線を語る視線は常に海岸線を離れることが出来ないままで
かつての旅を想い出すかのように知らない誰かの旅を語っている
太陽の軌跡を指で描きながら重力の強さに驚き
始めて地球上にあることを想い出したかのように苦笑いし
空気抵抗を感じるスピードで頬に手を伸ばし、頬をすり抜けて髪を梳くと
乾いたままで流れることの出来ない涙を流す

想い出される日記の1ページを破り、火にくべて暖をとろうとするが
どのページだったかを忘れたまま冷えてゆく身体の奥で貝が呼吸する
日記の替りにカレンダーを巡りながら、どれを破れば良いのか思案し
とうに過ぎている月を何度も見返しながら最後の月だけを破り暖に変えた
うつむいたままの少女は椅子を揺らすこともなく
じっとしたまま変わってゆく床の光に溶け込んでいる
少女の母は、ただ戻ってくることを忘れただけなのだ
その父のことは知らない

嘆くよりも祈ることだと、教会は荘厳さを増すために告げられた
告発する永久の死だけは教会の椅子が満ちても増してゆく
花嫁の投げるブーケを受け取ったのは空の椅子だったが
新郎の投げるブーケを受け取ったのは花嫁の母であった
その間、花嫁は貝の渇いてゆく音と交わり、子を産み、育てている

砂丘に戻ると海は波音だけを残して消えていて
水平線すらが夜でもないのに消えていて
貴方が指先で弄んでいた貝が乾いたまま転がり
覚えている限りの風の交錯を一身に受けながら鳴り響こうと転がり
そのことだけが砂丘の全てであったと想い出すのだ
2014-05-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補