つるんとした月の明かり

その人がいなくなると哀しみさえもが去ってしまいます
月の明かりの下の語らいも海辺での戯れも、笑い声も泣き声も
想い出せるはずの数々のことは想い出せない空虚さに
想い出せない数々のことは想い出せないままの空虚に戻りゆくのです
そして私は空虚ではない空器としてカランと風に吹かれるのです
出立の地をも想い出せない旅路の下で旋風を巻く風にもカランと吹かれます
夕暮時を何か知らない愁いに満ちて迎えることもなく、送ることもなく
たれもいない星空の下では爽やかな空気を一杯に吸いながら
哀しくないのに涙を零す気持ちを演じます
ここで私は呟くべきなのだと想いながらも空っぽの言葉が過ぎるので
その一つ一つを拾い上げながら私の記憶としようと努めます
想い出せない一つ一つを読み上げては、一つ一つを忘れてゆきます
蛍の光がぽうっ、ぽうっと、それぞれに違う点滅を繰り返し
星の光がちらん、ちらんと、それぞれに違う点滅を繰り返し
私の記憶はつるん、つるんと、それぞれに違う滑走を繰り返しているのです
そして夢の中でだけ私は眠り、その眠りの中でだけ夢を見ます
それは記憶されてはならない夢なのでした
深く深く、波音の繰り返しの果ての果てでだけ点滅する夢なのでした
2014-05-26 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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