月と頂の間から

その街角に君の気配が漂う頃には、ドアを開け放ったままの僕はいない。
窓を開けて目一杯に伸ばした左手の指先を狡猾な臭いを放つ月に掛け、中天に昇っているのだ。
そこから右手を目一杯に伸ばして君のいない世界を抱き寄せようとする。
それは青いといわれた土気色した地球に似た球体で、少しポウッとしている。

数千億光年先から届く叫びに身をさらし、海面に漂う魚の死体のように星を見つめているのだ。
壊されたまま置き去りにされている花壇の土を手に取り、静かに散ろうとする君を見つめているのだ
祈ることも嘆くことも許されずに幸いを祈り散る、一つの終わりを見つめているのだ。

僕は歌わないだろう、月の歌を。
君は歌わないだろう、月の歌を。
誰も歌わないだろう、月の歌を。

微かで誤ったままの予兆の元に平伏す多くの神官たちを従えた、その街角に僕たちは立つ。
信号機の色を青だ、黄色だ、赤だ、と笑いあいながら。
いくつもの方向に拡がる街角に、様々な人の様々な向かいように囲まれながら。

その想い出に浸れたら僕は指を滑らせる。
目指すべき山の頂に向かって真っすぐに。
あるいは波の頂に。
風の吹くことのない、誰も気付かない丘の頂に。
2014-05-31 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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