聴こえぬ愛の囁きに似て

"生"の軛をいくら絞っても雑巾と同じだった
捨てられるためにだけ汚れゆく
-黒い表紙に撒くのには黒いインキを用いよう
同類を同類化させる荒っぽさは優しさに似て
従うしかない者たちの言い知れぬ安堵を呼び起こす

ビル群のガラスに乱反射する陽の光は
もはや、それが太陽から降りそそぐものかすら知れず
焼けたアスファルトの上で喘ぐ犬と猫の交尾を乾かし
干乾びた嬰児の蠢く闇の中に潜り込んでゆく

噴水の向かい側で睦まじく寄り添いあう美しいカップルは
もう数世紀に亘って動くことを知らず
ただ通り過ぎる人たちの傍らに寄り添う二人となったか
彼らの愛に似た造形を鋳型として
語り合う、微笑み合う、憎しみ合う

車道を歩む月
それは人々の怠慢の言い訳になり
光を落とすことなく嘲笑を一身に浴び
水場を求めて街中を彷徨う私たちに似て
月の時間の中から出ることが出来ないでいるだけなのだ

鳴り止まない電話の呼び出し音が
ついに恋人からのものであったことはなく
切るだに鳴り始めて終わることなく恋人を忘れさせ
恋人であることを忘れさせ
一人だけで成立する恋の替りとなったか
愛人は電話越しに語り掛けてくる
夜にだけ響く、得体の知れぬ音のように
一人の時にだけ聴こえる、得体の知れぬ声のように

聖職者は海辺を歩くことなく海を渡り
荒海を見通して神の啓示を享ける
痩せ細った子供たちの元に舞い降りる天使
腹だけが大きく膨れ、他は骨と皮ばかり
あの遠い宇宙の天体のように
全てを終わらせるものとなるか
雑巾は、ついに凍らないまま、冬を越したと聞いた
2014-06-03 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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