その美しさ その哀しさ

-発話は、自然の存在に対する人間の実存の過剰である。*
これは本当のことのように想える。

私に訪れる美しさは哀しみを連れてくる。
連れられてくる哀しみに満ちて、私は語ろうとするのだけれど
その言葉は、どうにも遠過ぎて、ただ流れ出すばかりだ。

娘の学ぶ科学や数学の参考書、問題集。
私は科学や数学が好きではなかった。
特に物理や化学やの、ややこしげな顰め面が。

しかし、どうだろう。
今、娘の肩越しに見る、数学や物理や化学の字面の
その意味も分からぬままの美しさ。
全く理解出来ぬはずだのに、なぜにかくも美しく見えるのか。
そして、なぜにかくも哀しいのか。

少し、理解しようと努めてみる。
その美しさは
その哀しさは
少しは理解すれば分かるのかも知れないと。

しかし、どうにも、そうとも限らないようである。
しかし、どうにも、そうであったようでもある。
分かっても、分からなくても
やはり同じように美しく、哀しいようなのだ。

ただ一つ、もしかしたら、その営みそのもの
ただ、その営みそのものから
私に訪れる美しさは出来ているのかもしれない、と。

そして、その営みに囲まれていながら
ただ傍観するしかない私という存在を見つめる視線そのものから
どこからともなく訪れる哀しみが出来ているのかもしれない、と。

だから、どう発話すれば良いのかは分からないままで。

通り過ぎる美しさたちや哀しみたちを
じっと見つめる視線だけで私は存在しているのかもしれない。

きっと世界は黙ったまま
ただ美しく、哀しくあるままなのに違いないと-



*「メルロ=ポンティ・コレクション(ちくま学芸文庫・モーリス・メルロ=ポンティ著/中山元翻訳)」P50
2014-06-16 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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