海岸の歴史

森を切り裂いた斧は赤さびに浸食され
今は枯葉の内に区別を見出すことは出来ない
彼の骸、そのすぐ傍まであった海岸線は後退し
今では数十キロも離れた波打際で
新たな森が深々と人工的に繁らされ
鳥の謡や蝶の舞い、人々の恋の調べすら囲っている
斧は完全に侵食されるまでの長い時間を
ただ一人で過ごしているわけではない
いくらかの石器は、むしろ彼よりも長命で
その原始性の強弱が命の強弱を定めているかのようだ
確かに、それには一理あって
生きる強さが死なない強さとは限らないのだ
斧も石器も既に死んでいるのだから
生き延びているように見ることはむしろ背信だろう
彼らは既に死んだし、今も死んでいる
敢えていえば死に終える途上にあるやもしれぬが
それは無機物と有機物の間を区画するか
かつての石器も今は蹴られ、踏まれるだろう
われわれ皆が、考古学者というわけではないのだ
川べりに立って遠い時間をかけてなされる
自然の驚異を発掘する科学者でもないのだ
星のように鉱石の中に宇宙を見
経典の内に永遠を見出す詩人でもないのだ
ならば、そこに何の意味を見出すことも出来はしない
斧も石器も既に放置され死に絶えたし
過去は既に過ぎ去ったしで
ただ死に終えた中身を捨てた貝に耳を寄せ
少し哀しんで太古の海を聞くふりをするだけなのだ
2014-07-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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