彼女の場合(TあるいはC、もしくはS)

彼女が残したのは
雑踏に踏みにじられ霞む
美しい桃色、
それを更に淡くして
透明に近づこうとする血痕
消えてゆこうとし続ける血

刃先が錆びて
切るものを失った、
冷たいだけのカッター
鈍色に輝くシルバーのピアスは
引き千切られたまま
持主の耳朶の厚さを測り続けている
生きている証にしては
あまりにも安っぽいもの達よ

理想としての詩の終焉は
彼女の残し得た全てで
反響し続ける鏡の深奥に
一冊のファッション雑誌に
残された彼女の視線と
私たちの遠過ぎた距離

切り裂かれた肌は美しく
その裂け目から
彼女の叫びは響き続けていたが
それが真の叫びだったかさえ
ついぞ私たちは知らず
ただ、残されたのだ

身の半分も放らせてもらえずに
残滓としての身に宿した血は
流されずに終わることが出来ず
いたずらに街をさまよう
私たちの視線の届かぬ遠い場所を

鳥がさえずる昼下がり
彼女を封じた、すりガラスの向こうで
今も微かに振られ続ける彼女の手に降った
その雪の冷たさを、また
私たちは知らないままで佇む
2014-08-05 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補