無垢への遠さのなかで

見出せるはずもない哀しみの川を流れ
ただ青い空を「ああ、青いね」とだけ見つめ
それでも壊れたままの視線を維持しながら
川の冷たさを渡河の厳しさとして冷えてゆく
きっと、もう疲れ果てただろう波の音は
静かに、静かにと視線を横切ろうとするが
欠け続ける島の円周を緻密に測ることに似て
きっと、それはすごく哀しい営みなのだ
安らぎの歌を、ただ求めているだけなのに
余計に遠ざかる安らぎ、そして憩い、慰安よと
凍てつく直前の海は、きっと優しい
波は、もう疲れ果てた優しさでしか
岸にたどり着くことが出来ないから
喪われた後にほんとうになる笑顔、笑い
ああ、なんとあどけなく、無垢なんだろう
ぼくは、もう、そんなものは忘れたけれど
開けば書物には、そう書いてあるはずだ、とだけ
記憶とともに消えてゆくとしたら哀しみは
なんと儚いものかと燭光の最期を見つめ
「だから、それはいいの」
という囁きだけを覚えている
激しく山を降り下ってゆく風を見た
吹き降ろしに耐える限界を、とうに超えた灌木も
そして夏の白樺の皮を静かにはぎ取った
清冽な渓流のうねりを想い出しながら、やはりぼくは
見いだせるはずもない哀しみの川にいる
決して冷たくはなく、しかし温かくもなく
数学の証明問題を解くような透明さで
流氷にまで届くだろう、哀しみの川に流れているのだ
2014-08-25 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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