白米

今の僕は、君のかすけき憐憫にさえ
すがってしまうだろう
涙する勇気の一つさえ持ち得ないまま
その面影にすら、すがってしまうだろう
だから、遠い、あまりに遠いままが良い
その遠さこそが頼りない救いとなっているから

いかに、ぼくの過去がないとても
愛に満ちていた幼少時代の一つもがあり
(遠い記憶としてだけであっても)
むしろ、そんな記憶すらが鬱陶しい
あまりにも遠過ぎて鬱陶しい

この夜の空きっ腹に
釜蓋を開ければ匂い立つ
白米の粒たちは、なんとも残酷だ
タクアンの一切れ、二切れ-
それもなければ一つまみの塩
それさえなければ、ただ白米の甘さだけ
それだけで良いのだから
不摂生を勧誘するから残酷なのではない
むしろ、それだけで足りてしまうことが
今の身には、あまりにも残酷なのだ

足りないものがあるとすれば憐憫だ
憐れ落ちぶれて、すがる憐憫の一かけら
それが君の憐憫だけなのかすら怪しいもので
その怪しさが、なおのこと私を哀しくさせる
涙する勇気さえないままに、私を哀しくさせるのだ
せめてもの救いが遠過ぎることだ、君の面影の
君の想いの欠片にも残らないだろうことだ

それでも、ぼくは生きてゆくのだろう
なんとも贅沢な白米を食みながら
それで、なんの不足があろうか、と想いながら
無駄な金を稼ぐこともあるのだろう
どんな聖のそれよりも空しい、この胸を抱え
ときには青い空を仰がせてくれと仰ぎ
白米に手を合わせて食むのだろう

だから、むしろ涙を下さい、と哀願するのだ
涙する勇気と、わずかな暇と
なんの憐憫も得られないままに-
可能ならば滂沱と流れる涙を下さい、と
せめて一粒、二粒で構わないから
手を合わせて食む白米の一粒、一粒のように白く
欲をいえば、もっと透き通った哀しみの涙を
涙すら奪われて、残酷さよ
いっそ死んで卑怯な奴と笑われるがよいか?

それでも、ぼくは白米を食む
負けまいと、屈しまいと、白米を食もう
おわりもしない、すべてを見つめ
時には泥や油、嘲笑にもまみれながら
そんなこのは大したことじゃぁないが-
むしろ食む白米に涙しながら
涙しながら白米を食む救い
それがないことの方がはるかに辛い

憐憫されれば、むしろ涙出来るのではないか、と
そう、いやらしく想っているのだ、きっと
散る桜の美しさに愧じながら
愧じながら酔うアルコールの不味さに辟易しつつ
流れぬ涙の、あまりの遠さに哀しみも遠く
あまりにも遠いので、ただ美味い
ああ、美味い、と白米を食むだろう
2014-08-25 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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