夕立の喫茶店

夕立が来ると狂犬病のように犬が吠える
生まれてきておぼれた彼にとって
愛は乾いた日にしか与えられない
激しい雨が遠雷をさらに遠ざけていたが
近場での落雷もなくはなかった
空を稲光が走ると、もう夕暮は終わっていた
雨に流されて喪われたことばは忘れられたままで
妙に饒舌な会話がホームを満たす
だれもが疲れた顔をして
抱えるには少し多過ぎる愛を
隣り合う人、隣り合う人に手渡していた
近いということは、そういうことなのかもしれない
雨除けに立ち寄る喫茶店には、もう窓がない
激しい雨は窓を奪ってゆくのだ
愛の遠ざかり方に似ていて前触れのない奪われ方だった
コーヒーの横には数百年前に殻だけになった巻貝
煙草の煙が少しかかると魔法にかかったように
薄明りのなかで蠢くようだった
ただ疲れだけを集めて帰るだけの日々と
ただ哀しみだけを集めて帰るだけの日々に
どういう違いがあるのだろう
愛することと日常には違いなどなく
ただ過ぎることのない倦怠感だけが残され
二度と見たくない夜明けを幾度でも送り込んでくる
2014-08-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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