<想い過ごし>

雪に埋もれ尽くすよりも熱い夜
肌を切り裂くように汗が吹き出し
刺すような痛みに気がつくと
グラスのなかには名も知らぬ
1ミリにも満たない蛾が浮いている
鱗粉に似た粉が表面を漂っているのは
少しは喘いだからだろうか

どれだけ歩いても辿り着けない哀しみを
そっとアテもなく出くわす川の畔に置いて
(それは単なる汚水路かもしれない)
昨日の夕暮だけを見つめている
数歩で途絶えてしまうリズムで鳥が浅瀬を行き
飽いたように空を見上げている

こういったことは、すべて妄想であり
妄想であるが故にほんとうのことなのだった
むしろ、それが私に哀しみをもたらしてくる
誰か「哀しいですか?」と尋ねて下さい
私は「いいえ、あなたは哀しそうに見えます」とだけ
なんとも切ないやりとりではないだろうか

もう開く人もいない詩集が、図書館に届けられ
司書は作者の名前を覚えようとはしない
(私も、あたなも覚えることが出来ない)
「これは当館ではお受け取りしかねます」
なんとも温かい声で司書は断るだろう
- そして、なんとなくも会いたい人は
  どこの季節の、どの場所からも去って行った -
ただ、そのことだけが書いてある詩集だった

痛みは生きていることを想い出させるし
哀しみは通り過ぎた人がいたことを想い出させる
妄想は(あるいは、ほんの少しの)狂気-
そして単なる想い過ごしでしかないであろうものなのだ
2014-09-01 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補