背泳ぎしている影

重くもない門扉の向こうで
入りもせず押しもせず佇んでいるのは
誰のものでもなくなった影

微かな遠雷のような囁きだけで
喪った恋にしおれて消える前の
突然に落ちるブレーカーのようでもなく
細々と残り続けようとする
線香花火や焚火の炭のようでもなく
残る意志も奪われたように
永遠に消え続ける影

それでも瞬間、空を切り裂く雷には怯え
もう誰の囁きにすら
葉を踏む音にすら消えずに隠れる
傾いた陽が与えられるなら
命脈を保とうとしてしまう情けない、影

持主なんざあ、要るではないが-
遠くで草笛を吹きながら
陽気な歌を歌っている彼は、もう
影なんぞ喪った哀しみそのもので
人でもないやもしれぬものだもの

怪しを好む知られぬ川瀬で
人知られぬだけで河童の皿は赤く濡れ
闇空を抱こうと背泳ぎを繰り返している
もう門扉なんざ要らないさ、と
入口も出口もない川を好んで
そんな河童のように
背泳ぎしている影がある
2014-09-02 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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