それは夏の距離

開け放たれたまま
閉鎖されているドア向こうには
到れば開かれる冷たい箱があり
吹き起ころうする風が留められている

ドアを抜けることもなく
なぜ想い出すのか夏の踏切-
陽炎のように立ち尽くす若い君を
錆びてズレたレールを
決して来ない汽車を

海沿いの街道に車の往来は激しく、しかし
踏切は忘れたままのようにだれも訪れることがない
俯瞰する視点は記憶の断片か
横顔しか見せないままの君が佇ち続ける

貼り付けられたような雲が空に浮いている
山の頂きに至る緑は物憂げな揺れを繰り返している
<反復>ということばを想い出しながら
不規則なフォーカスの繰り返される視点が
酔ったような目眩を残そうとしている

たとえば駅員のいる駅は
どこまで行ったら見出せるのか
来ない汽車を見つめながら
駅近くの踏切で立ち止まる君を見つめながら
乗車と降車を繰り返す私の影は
なにに乗り、なにから降りているのか

白い砂浜を這うヤドカリが臆病さを押し殺して、ようやく
君は振り返り、街道下のトンネルを抜けて砂浜に向かうと
膝を抱えて一人の私がなにもない海を見ている

私と君との間を早足のヤドカリが行き過ぎる線が
開け放たれたまま閉鎖されたドアとを描く
冷たい箱のまま、無風の見えない点となる私が
到ることのない君を背中に感じて消えようとしている
2014-09-08 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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