架空反射

寒い冬がこないから、と
抱き合うことのない私たちは
愛のない冬を理由として
抱き合うことで冷たくなってゆく

波しぶきだけが凍ろうとする遠い浜辺では
番いの海鳥たちが卵のない巣を温めているし
凍った川では、遡上する魚群が
命の宿らないままの卵を散らして
最期を迎え続けている

最終電車がないという理由でなら
別れる恋人のいないホームでは
知らない恋人たちが
いつまでも抱擁を続けることが出来たし
互いの面影すら怪しいままでなら
知らない恋人と寝ることだって出来た

雨に濡れることのない路面には
人影も触れることがなく
その隙間を隠すような古い落葉が
敷きつめられたように厚く積もっているし
恋人たちは影を落とせずに
知らない夕暮のなかで別れてゆくだろう

降る雨は枯葉の死のなかにだけ降り
そこでとどまったまま還る先を棄てるだろうし
どの季節の、どんな気候さえもがそれを許した

祈りの声は天からしか響いてこないし
嘆きの声が地上から発せられることもない
架空のなかでは架空を語ることばすらも架空でしかない
当たり前の真理が哀しみを遠ざけ続けてるなかでは
架空の哀しみが
砕かれた鏡を真似て架空反射をし続けている
2014-09-11 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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