二つの景色

晩夏を抜けながら欠けてゆく帰り道では
光が錆びて海の憾みに涙を零し
置き忘れられた恋は独りで季節に遅れてゆく

廃線のレールは朽ちた枕木の眠りに沈み
廃駅のホームには忘れられた月夜が漂いながら
待つことを知らない恋人を待つ時を探している

遅れた花が咲いているが
名前を知っている人は、もういないのだろう
写真は夜霧に灯る誘蛾灯一色に染まりゆき
静かな明るさのなかに、その人を
奪ってゆきつつある

畦道には不定期な点滅しかしない街灯が並び
どれだけの距離があるのか分からない山裾まで
街灯と畦道とが居並んで伸びようとし、
いくつかの民家の傍を通り過ぎる

もう少しで君が想い出される場所に着きそうになると
決まって夏はするりと夜を抜け出してゆき
知らん顔をして通り過ぎる秋を横目に冬が居座り
すべてを白銀に染めてゆく

私(たち)が過ごしたのは、きっと
そんな季節の満ちた場所だったのだろう
春になっても目覚めることのない私と
春にだけ目覚める君と
二つの景色だけが、帰り道には訪れない
2014-09-19 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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