差し替え

喪ったから想い出となるのではなく
想い出として記録するために喪うという
聴き慣れた節理に従って恋人たちは別れゆく
偽装された哀しみとして想い出は美しく
儚さが恋を彩り、時が記録を書き変えてゆく
恋の真理が人の万物に通じてゆくのか
夜を一つグラスのなかに浮かべながら
人は無言でバーのスツールに腰かける
溶けてゆく氷に情熱の熱さを想い出しながら
それすら手放したことを苦笑いする
ひんやりとした空気がカウンターを巡り
誰もが押し黙ったまま
静かな音楽に耳を澄ましてしまう瞬間がある
誰も吸わない煙草の煙だけが立ち上がる瞬間がある
男と女の区別がなくなる瞬間がある
夜のバーでは昔の恋人が想い出されるだけでなく
想い出を作った後悔が誰からともなく漂う
そんな、すべての偽装の哀しみが漂うなかで酔いは
少しの慰みとして記録を差し替えている
2014-09-20 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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