猫を巡る夜|の六連

ほとんど線のように
細くなった猫の瞳に夢を捨て
久しく見ることのない夢を捨て
問われる愛だけに恋をして
いくつもの円環を巡り
向こう岸には誰もいないというのに
あたかも愛する人がいるように
向こう岸だけを愛し続けている

涸れた枯枝が
それでも撓る不思議さにさえ
涙を零しながら、しかし哀しみからは遠く
孤独や生にまつわる寂しさからも遠く
夏祭りの後の虚脱感に似た疲れだけが残り
最後の打ち上げ花火を見終えた後の美しさに酔いながら
混みいった道で肩をぶつけながら歩いている

想い出の少なさこそが愛に変わる不思議を
やはり涙で迎えながら苦笑いし
見送る最終列車すら知ることがないままで
独りきりのホームに佇むように
どれだけの混雑のなかでも独りきりなのだったが
もし、寄り添うものがいるとすれば
肩に重さを喪って宿る鳥の影
光るさだめを奪われて塵にもなれない星の影

猫の瞳は盲いたように細さを超えて
乾いた瞼が静かに閉じはじめる
夜の静けさが開くように乾きながら
薄い瞼の向こうに閉じ込められてゆく
ほとんど喪った夢のように
厚みを捨てて、なお閉じる瞼の向こうに
捨てられた瞳のように閉鎖される

川べりを歩きながら迎える夜には
数歩で踏み出せる車道がある
満天の星に紛うテール・ランプは遠くのカーブを巡り
そこに岬を見たてた一つの海が浮かび上がってくる
陸の暗さを怪しい縁にして
ゆたりと細い月の光を浴びて
海月のように揺蕩う海が浮かび上がってくる

波の音よりも強い川のせせらぎを渡りながら夜を歩くと
数歩で途切れる川の流れがあり
問いかけには居眠りを決め込む猫すらいない
もはや愛のない夜すら訪れない
2014-09-30 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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