2014年8月31日

八月最後の日は静かで
もう九月の雲がムクムク浮かんでいて
蝉は聴こえないかのように
きっと奏でるというには遠い鳴き声を立てている

少年少女たちの陰鬱がそこかしこから
声もなく訪れては、だらしない影となって寝そべっている
日付が一つ進もうとすることは
きっと、こういうことなのだろうと想い
だれの影も受け取ろうとしない歩道を眺めている

夏祭りで呑んだビールは決して旨いものではなく
温い泡が浮かんでいるだけの苦い健康飲料に似ていて
祭は始まるともなく始まり、知らない間に終わっていた
 大して汚れてもいない墓石を、あえて暑い日中
 熱心に洗う父母の背中は
 想像以上に色々なことに疲れてきたように見える
  クーラーの効きが悪い車のなかにいてさえ弱い夏は
  到来したのかさえも怪しくて、欅並木に落ちる
  少しは目にも眩しい陽だけを頼りに微かな夏道を辿った

忘れかけていた八月が改めて終わろうとしていた
幾度もカレンダーを確認しながら
来たかも忘れたままの八月を少しは想い出すと
大体は、こんなところだった

恋人の影は、この夏も遠いままで
もしかしたら感情というのが夏を遠ざけるのかもしれない
季節のなかに感情は、存在出来ないのかもしれないなと
すっかり遠ざかったような夏を振り返りながら考えていた

きらめく海面、遠ざかり、押し寄せてくる波打際
揺れる若い女の肢体、日焼けした青年の逞しい肉体
目に眩しい緑の山並、鮮やかさを流れる清流の涙
夏らしい夏さえ訪れないまま、八月最後の日が過ぎてゆく

もう一度、想い出そうとしている恋人の名前は
結局、想い出せないままで
次の夏の到来さえ怪しく想われてくる
もう二度と夏なんて来ないのではないかとさえ想えてくる

ああ八月最後の夕暮だけは
知らない間に過ぎてしまっていて欲しい
八月最後の夜には、寂しいけれど旨いビールを呑み
私たちが作るささやかな夏を過ぎてくれれば、それで良い
詩なんて忘れてビールが呑めさえすれば夏なんて
もう、それで十分過ぎるくらい夏だった
2014-10-02 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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