八十六段目の階段で

きっと今日も階段で
八十六段目の階段の立ち止まりのなかで
振り返り、枯葉散り敷きつめた街路を抜け
海を見つめてしまうのだろう

だれも待っていない白いだけの砂浜と
一瞬も形を留めない波打際と
茫洋と広がり水平線を持たない海とを

愛した人が、もう歩かないと知ったとき
そこが振り返ってしまう先となり
私はピン止めされた、あるいは蝶のように
乾いた視線を、それでも湿らせたように
雨音さえ待ちながら祈りの鐘に耳を澄まして
なにも聴こえないことを確かめてしまう

たいがいに慣れた都会の残酷ささえ
その断路を遠ざけることが出来ないのだ
紅い空に蒼い太陽を与えながら
もう終わることのない喪失を抱き
喪うことさえ出来ないのかと嘆くのは
きっと一つの波でしかないだろう

一瞬を、もっと短い一瞬に変えながら
そのなかでさえ美しさについて問うべきか
むしろ愛について問うべきなのか
悩ましげな選択をいくつか空疎に並べながら
もう上がらない足の重さを愛しんで
気づけば階段を登ることさえ
もう出来ずに、階段のない道に立ち尽くしている

それはきっと、夜の道ではないけれど
昼の道ではないけれど
確かに私の前にも後ろにも
ただ真っ直ぐに伸びる道なのだ
階段を忘れて、ただ伸びるだけ伸びる道なのだ
八十六段目の階段から伸びる道なのだ
2014-10-06 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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