ただ一匹のヤドカリ

君の不在だけを時が過ぎるように
季節の不在だけを君が過ぎる
そんな気がした夏の終わり、秋の始まり
季節の間隙をぬってだけ打ち寄せる波

恋人たちが遠ざかる波打際には
その昔、川に流された小瓶が届く
どれだけ昔なのかは知らないけれど
微かな光が閉じ込められた小瓶を開けるのは
きっと一匹だけ取り残されたヤドカリだろう
深海に沈んだ貝が死に絶えるのを見送り
ただ一匹で砂浜を守るように這いまわるヤドカリであろう

小瓶が開くことはないけれど君は
そっと小瓶を取り上げてヤドカリを手に取る
忘れた愛情を真似た手つきで
もう捨ててしまった恋を知り尽くした微笑みで
過ぎることを忘れた時のなかで
季節のない砂浜には君とヤドカリとの
小さな物語が繰り広げられている
2014-10-12 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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