残響

あなたを探し続けるだけの叫びが、あたかも私のものではないように砂丘の向こうで響き続けるのを聴きながら、足首だけを洗う波の冷たさを愛そうとする決意が見上げる海の彼方には、水平線からは遠い破れた迷彩の帆船が空に切り裂かれているだけで波が起きた。

優しい夜を過ぎる、あなたの面影に寄りそう私の横顔は青白い三日月のようで、私は想い出すたびに恥ずかしくなってしまう。しなやかに細く白く伸びる、その腕の内にある安らぎを赦さなかったのは、ありきたりの雑踏…残酷さにさえ届き得ない街の雑踏だったのだと想いたい。

幾度も同じ唄だけが繰り返されるなかで、いつも違う歌を口ずさみながら私を見ずに抱き寄せようとする、その仕方が好きでした。きっと、それはラブ・レターに記そうと想ったことなのだけれど、今、こうして話しています。一人だけになった部屋のなかで。
そこは、もう部屋でさえないのだとも気付きたくはないので私は、フローリングの床に横たわる。きっと最も従順な犬でさえ厭うような姿勢で。そして空のままの封筒が半開きになって視線の遠くを彷徨いながら幻になるのを祈って両の手を合わせる。

冷たさすら感じ得ない冷たさだけが支配する世界だったならば私は、あなたとの月日や時間を棄てることが出来ただろうに。むしろ、どこにもあたなも私も居ないままでいられたろうに-
そんな哀しみに似た想いを抱いて、それでも幾度も訪れるだろう朝は呪わずに、花のように迎えるのだ、きっと。

それなのに無言の叫びだけは砂丘の向こうで響き続けている。あたかも私のものなどではないような私の叫びが、探し求める人さえ喪ったまま、砂丘の向こうの永遠を告げる残響のように叫ばれ続けているのだ。
2014-10-12 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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