夜と夢の狭間で

君のいない夜を嘆き疲れた歌が息絶えるように横たわる傍らで、川のせせらぎはさやかに清く、私の蒼い瞳を眠らせる。

だれか、きっと知らない人が祈りの鐘を向こうへ、向こうへと届けようとしている。
もはや廃墟となった想い出を引き連れながら、そこには星がいくつか光っているのだろうか、月裏で見た星雲の懊悩をぼうと描いている。

街のどこへも繋がろうとしない曲り角を二つの影がユックリと、静かなカーブを描きながら消えてゆく。ああ、もうそこは深い、深い孤独な夢の底で(そして君とは遭えないままで)、私の影は光を求め続けて忘れた歌を歌っているに違いない。

君の愛した猫ならば、曲がり角の鋭い紅さで染まった一つの塀上を占拠して灰色をうずくまったまま動かない。君が零した、いくつかの言葉の破片は砕けたままで、組み上げられることを拒否し続けているから…波音を重ねながら、君の間隙を縫うように海面を駆ける風の音は哀しみを届ける遠さで鳴り響き、壊れたままの言葉を見過ごしている。

もっと早く-たとえば、あどけなく雲を何かに譬えて笑う時代で愛したのなら、別れの前の出遭いだけでも訪れたのだろうか。遠い夢のなかを横切る雲は透明なほど白く冷たいまま、霞んだ山頂を撫でては山向こうに消えてゆく。

忘れられた街が少しだけ息を吹き返す一瞬の静寂に垣間見る幻影こそは確かな重みを持って、微かな足音を届けては消えして私は、街を棄てて知らない夢を、もう一度、見始めるだろう。
その前に熱く喉に当てられたナイフの刃が引く鮮烈の紅を、せめて君の、あの猫に届けなくてはと力ない手が、指が伸びるのを人ごとのように見つめながら、寝言にまで嘆く歌に寄りかかられて私は、いく度目かの、君のいない夢を見始めている。
2014-10-12 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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