あるいは、その一匹の犬を巡って

酔夢を過ぎる蒼い秋ならば、決して枯れない夏を抱いて想い出に浸りながら波打際を行くだろう。夏の木洩れ日、あるいは星座の語らいを、恋人の熱い夜、独りきりで迎える夕暮れ、遠くから記憶に消えてゆく突然のスコールを-
傘は陽に揺れ、雨に揺れ、雲に揺れ、ブランコに揺れて詩人の元には涙が届けられようとしたが、不着届が宛先不明のままクズカゴの一角を占めている。舗道ならば蝉時雨を浴びるように徐々に陽炎を立ち上らせ、喧騒の夜を迎えるまでの永い昼を死んだように伸びている。街のいたるところから湧き上がるだろう歓喜の声は秋には届くことがないまま、潮騒に紛れて散るのだけれど。
哀しみをたとえるならば、きっと想い出してしまうから私たちは、想い出せない一日を過ごしながら最後のときを見計らっているけれど、あまりに季節の足が早くて幾度も追い抜かれてしまう。懐かしい日々を繰り返しながら一匹の犬を間において、彼の行方を占おうとしながら訪れる沈黙の夜と夜。
けぶった少し向こうから無言で叫び続ける一つの影が浮かぶとき、その影に気づいたとき、別れは唐突にやってきて一匹の犬がアテもなく街を彷徨い出し、私たちは完全なる他人に戻ることが出来たのだった。
2014-10-13 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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