出航の声

どこまでも繋がる点と点と、点と、
その延々を想うと飽いてしまうよりも、その遠さが哀しみにさえ想えてくる。
私たちは永遠の孤立のなかに立っているというのに点となるのか、と。
昼も夜もなく係累は、

-船は出航したか?

海が哭いている。それは面として空を受け止め続けているからだ。
もはや点の哀しみを越えた向こうにいるからだ。

「お前は出航せねばならぬ」
威厳を纏って声が囁く風に乗り、点たちを過ぎってゆく、その線こそが私たちの線、係累の営み。
君が外そうともがき続ける網の目、蜘蛛の巣。

-船は出航できないよね

おさな声が小さく自信ありげに告げている穏やかな朝もやの向こうでは、私たちが情けなく泣いている。
穏やかな海面を見つめて一人の男は反芻する。
「船は出航できない、決して出航できないのだ…」
不思議そうな碧い眼が彼を見つめている。

汽笛の音が夕靄に消えるように遠くで響き、彼と手を繋ぎ始めた子供が驚き、そして呟く。
「とうとう、船は出航してしまったね」
その声は男の声、いつの間にか現れた女の声、重層的ないくつもの声となって港を覆い、
そして子供は拾ったいくつかの石を積み、そこに砂をまぶせて一人きりの浜とした。

-船は出航したんだってさ…

いつまでも子供の声だけが、重なりを逃れながら呟き続けていた。
2014-10-23 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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