入り江に沈みゆく、あるいは苦笑い

たとえば夏と秋の境を曖昧にして沈みゆく入り江に溺れてゆく手紙を、
沈黙だけが読まずに溺れ沈んでゆく手紙を、ぼくは書いたのだ。
きっと君のことも想い出しながら歩く幾つかの不確かな季節を地図で確かめながら、
さらに曖昧で不確かな愛を点に変えて地図に記しながら、地図で燃やしながら

それは一つの海の、波打際の記憶にならない記憶の事象、つまり手紙だったのだが、
その手紙が沈んでゆく入り江だけが私とだれかの間にある真実だと信じ
私は渡るべき橋を探して川を遡る。
一群の魚たちが追い越し、あるいは滞留し、
いくつかの獰猛な動物たちが彼ら、遠来の使者たちのはらわたを食いちぎる様を見ながら

それが今の季節のすべてだとしても、私は信じただろう。
入り江に沈む手紙をも私は
私は手離したのだから、信じない理由などないのだった。
君が背を伸ばして物干し竿に掲げる洗濯物のように、
私の知る限りの人生はヒラヒラと舞うばかりで青空を待ち、
乾いた風を待ち、君の手を待っている。

もう入り江は過ぎたろうかと、川はどこから始まったのだろうかと、橋は
橋はどこにあるのだろうかと君に

季節の境には大きな闇が潜んでいる。
愛について考えながら死を待ち望む、それは至って自然のことだが、
きっと季節の境に関係があるのだろうと、
さて今が一体、どの季節とどの季節との境にあるのか

絶えない枯葉の渦中で私は、君を忘れながら想い出そうとしている。
繰り返すが入り江では
もう手紙の姿はなく、君に手渡すべき一言も絶えただろう(ああ、地図よ!)。

季節の記憶とは、きっと
そんなものに違いないと、木枯しを煙草の足しにしながら

延々と続く並木道に立って今度の私は、苦笑いを探している
2014-10-26 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補