君のコーヒーの香りには

そこで君は、窓-ただ一枚きり、もしくは数枚の-を開いたかもしれない。
窓枠のなかには私もいたであろうか、

私に分かっているのは、そこに居並んでいたのは死人たちの顔であろうということ、
もしくは雨に打たれ、もしくは晴れた空に乾く、
君は、どの顔にも見覚えがないまま、扉を閉じることもなく
その鋭い瞳を閉じることもなく、しかし優雅にコーヒーを一杯、飲んだであろうこと。

跳ねる椅子を抑えつけるようにして座り、
床のなさに居心地の悪さを少しは感じながら、しかし、
むしろコーヒーの味わいの方が勝っていたであろう、あるいは朝!

私が地平線まで見通し、そこに置いてきたかった朝だ。
向こうからだけ開かれる扉の前で待っていた朝である。
豊かな香りを湛え、しかし死人の顔に溢れ、腐臭すら微かに混じり、
しかし扉の向こうには朝がなくてはならない。

それは決して哀しい朝ではないし、孤独な朝でもなければ、旅立ちの朝でもない。
ただ、むしろ留まるためだけに開かれた扉向こうの朝である。
君の、ただ一杯のコーヒーのために開かれた朝である。

君は仕事に赴かねばならぬ。
今日も血に飢えた仕事を、それでも黙々と
そして山とこなさなくてはならぬ。

むしろ私は窓枠であったが、開け放ったまま背を向けられる窓で、
君の典雅な朝は、いつも通りであり、
いつも通り、この上なく一杯のコーヒーに光り輝いていたのだ。
2014-10-28 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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