森の息吹

聴こえない、あなたの声が愛しいのに、
想い出せずに色んな歌を流し聴いている。
訊ねる人もいないので、一緒に語る人もいないので、
あなたに問いたいことがあるけれど、

それは森の奥、一本の木の根元の洞に置いておこう。
もう想い出せない、その洞に、
決して辿り着けない、その洞に。

弱り始めた陽の光、
それでも反射を止めない一枚の葉がある。
色を変えることなく、最後の色を緑に留め、
陽の光が弱ければ弱いほどに鮮やかに、緑で、
私の不確かな輪郭を奪う強さで、

見通せない森は命に満ちている。
すべてを尽くして、なお足りないざわめき、
ひそやかで鋭い視線が幾本も交錯し、
しかし、あなたの声は、そこにもない。

森の奥、私は、なにを隠しに来たのだろうか。
もはや戻る道さえ忘れ去り、私は
森の息吹だけになってゆく。
消えるように、あなたの声を追いながら、
森の息吹が、ざわめきのなかをすり抜ける。
2014-11-05 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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