笑いながら

波の上だけを秋が通り過ぎ、
冬を待つ海鳥の飛翔が凪を切り裂いていた。

岬を遠望する防波堤と、
砂浜から付いてくる無数の砂粒と、
置き忘れてきた文庫本と。
もう遠くに防風林を置いてきた、
ここには風が吹くことはない。
波の音が届くことは、ない。

山の見えるはずの街に戻れば喧騒は、
鋭い刃先だけを突きつけてくる。
血が出ないことをいいことに、
幾度も幾度も刺殺されるが、雨は降らない。
たとえ雨が降っても、
雨に濡れることはない。

古いビルの壁に手をついて、
あわただしく海のすべてを想い出しながら
置き忘れてきた本の記憶をたどっている。
ズボンに付いたままの砂を口に含んで、
海の微かな匂いだけでも知ろうとさえする。

なくなってゆく。
ただ、なくなってゆく。

それで良いのだと安堵して、
酒臭い汚物に塗れ、それでも
繰り返し殺され続けながらなら、あるいは
星の一つくらいなら見つけられるかもしれない。

それすら見つからないので、
私は笑っていた。
いつまでも、笑いながら殺されていた。
2014-11-06 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補