笑いながら
波の上だけを秋が通り過ぎ、
冬を待つ海鳥の飛翔が凪を切り裂いていた。
岬を遠望する防波堤と、
砂浜から付いてくる無数の砂粒と、
置き忘れてきた文庫本と。
もう遠くに防風林を置いてきた、
ここには風が吹くことはない。
波の音が届くことは、ない。
山の見えるはずの街に戻れば喧騒は、
鋭い刃先だけを突きつけてくる。
血が出ないことをいいことに、
幾度も幾度も刺殺されるが、雨は降らない。
たとえ雨が降っても、
雨に濡れることはない。
古いビルの壁に手をついて、
あわただしく海のすべてを想い出しながら
置き忘れてきた本の記憶をたどっている。
ズボンに付いたままの砂を口に含んで、
海の微かな匂いだけでも知ろうとさえする。
なくなってゆく。
ただ、なくなってゆく。
それで良いのだと安堵して、
酒臭い汚物に塗れ、それでも
繰り返し殺され続けながらなら、あるいは
星の一つくらいなら見つけられるかもしれない。
それすら見つからないので、
私は笑っていた。
いつまでも、笑いながら殺されていた。
冬を待つ海鳥の飛翔が凪を切り裂いていた。
岬を遠望する防波堤と、
砂浜から付いてくる無数の砂粒と、
置き忘れてきた文庫本と。
もう遠くに防風林を置いてきた、
ここには風が吹くことはない。
波の音が届くことは、ない。
山の見えるはずの街に戻れば喧騒は、
鋭い刃先だけを突きつけてくる。
血が出ないことをいいことに、
幾度も幾度も刺殺されるが、雨は降らない。
たとえ雨が降っても、
雨に濡れることはない。
古いビルの壁に手をついて、
あわただしく海のすべてを想い出しながら
置き忘れてきた本の記憶をたどっている。
ズボンに付いたままの砂を口に含んで、
海の微かな匂いだけでも知ろうとさえする。
なくなってゆく。
ただ、なくなってゆく。
それで良いのだと安堵して、
酒臭い汚物に塗れ、それでも
繰り返し殺され続けながらなら、あるいは
星の一つくらいなら見つけられるかもしれない。
それすら見つからないので、
私は笑っていた。
いつまでも、笑いながら殺されていた。
コメントの投稿